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ナナシス2ndライブがなぜ“異様”に映ったのか? ステージ構成の不足と過剰

777☆SISTERS

スマートフォン向けアイドル育成リズム&アドベンチャーアプリとしてスタートした『Tokyo 7th シスターズ』は、ゲーム本体はもちろん、CD音源化やキャラクターを演じる声優たちが実際にライブを行うなどの音楽的アプローチを通じ、着実にファンを増やしてきた。

去る2016年8月21日には、パシフィコ横浜国立大ホールにて2ndライブ「t7s 2nd Anniversary Live in PACIFICO Yokohama 16’→30’→34’ -INTO THE 2ND GEAR-」を昼夜2公演で開催。全国40の映画館でライブビューイングも行われ、熱狂のうちに幕を閉じた。

ただ、今回のライブ、筆者の目には「異様」に映った。

取材・文:松本塩梅 編集:新見直

『ナナシス』が持つ2つの武器

2ndLiveロゴ横長 略称の『ナナシス』で親しまれる『Tokyo 7th シスターズ』は、スマートフォン向けアイドル育成リズム&アドベンチャーアプリとして2014年にリリースされた。

ゲームの舞台は西暦2034年。伝説のアイドルグループ「セブンスシスターズ」が突如引退してから2年が経ち、アイドル文化は時代遅れとみなされるようになってしまった世界。プレイヤーは劇場型スタジオ『777(通称:ナナスタ)』の二代目支配人となり、新たな原石を発掘し、未来のアイドルをプロデュースしていく。ちなみに、この設定から『ナナシス』のファンは「支配人」と呼ばれている。

『ナナシス』の楽曲はkz(livetune)さんやヒゲドライバーさんといったネットカルチャー出身の気鋭アーティストを採用。EDMやアイドルポップといったライブ映えのしそうな要素を含み、同種のコンテンツとは一線を画すきらめきを放っていた(楽曲についてはKAI-YOUでもkz×ヒゲドライバー対談を掲載して掘り下げている)。

また、水瀬いのりさん、加隈亜衣さん、渕上舞さん、大西沙織さんなど、後にブレイクして人気を呼ぶキャスト(中の人)が現在も在籍しているが、「オーディション時には主に新人声優を起用した」と『ナナシス』総監督・総合音楽プロデューサーである茂木伸太郎さんはWebNewtypeのインタビュー(外部リンク)で答えている。

楽曲と声優、磨き上げてきた2つの武器を持つ中で開催された今回の『ナナシス』2ndライブは、冒頭でも書いたように「異様」だった。決してマイナスな意味ではない。いわゆる同じ土俵に挙げられるであろう「声優アーティスト」をはじめ、“2.5次元アイドル”の文脈として参照できる『ラブライブ!』や『Wake Up, Girls!』などの公演と比べても、ある部分が過剰で、ある部分は不足に思えるほどの構成だったからだ。

MCなし、休憩なし、アンコールなし、3時間30曲を駆け抜ける異様さ

_DSC1072_11☆ 筆者が鑑賞した昼公演、最大の「異様」は全体のステージ構成だ。途中、メドレー4曲を挟んだものの全30曲を約3時間かけて披露したのだが、MCにかなりの時間が割かれた1stライブと比べると明らかなように、曲間にMCらしいMCはほぼなく、またアンコールもなかった

「ほぼ」としたのは、MCが存在しなかったわけではないものの、自己紹介はとても短くまとめられ、いわゆる「曲と曲の合間に最近の出来事やライブの感想などを述べる」といった場繋ぎ的なものもなかったからだ。ユニット曲の場面転換時に衣装を見せる(その場でくるりと回る)ことはしたが、その尺も意図的に短く取られているように感じるほど駆け足だった。

具体的に見てみよう。下記は1stライブと2ndライブでの大西沙織さんの自己紹介あいさつを書き起こしたものだ。キャストは登場時に「キャラクター」としての自己紹介の後に本人としての意気込みを述べるのだが、両公演ともキャラクターの言葉に比重が置かれているのは変わらない。しかし、全体がとてもコンパクトになっていることに気づくはずだ。

はーい!ダーリン!元気ーーー?
まったく、ダーリンってば“So mach”……なんだっけ……英語わかんなくなっちゃったわ(笑)……えーと、思い出した!思い出した!ダーリンってば“Too Shy”なんだからぁ。もっと大きな声出るでしょう?はーい!ダーリン!元気ーーー?ありがと♡
今日は、今日はこのステージで、たくさんの女の子が歌ったり踊ったりするけど、ダーリンは、ダーリンは!スースだけを、見ててね!ダーリンだーいすきー!
というわけで、というわけで、アレサンドラ・スース役の大西沙織です。今日は全力で!楽しんでってくださーい!よろしくお願いしまーす!(ここまで約1分10秒) 【1stライブ】のスース/大西沙織さんのMC

ダーリンッ!もーうもうもうー! ロナばっかりずるいー!スースのことも見てぇー!今日は、ダーリンのために精一杯頑張るから、みんなスースだけを、見ててね♡
はーい!ということで、アレサンドラ・スース役の大西沙織です。今日は楽しんでいきましょーう!(ここまで約35秒) 【2stライブ】のスース/大西沙織さんのMC

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Ni+CORA

1人あたり30秒の違いでも、この日のキャストは25人いる。12分半あれば2曲は追加できる計算だ。また、これだけの長時間公演の場合、声優アーティストや2.5次元アイドルには定番の「VTR」や「ミニドラマ」を流しての休憩タイムもなかった

時間短縮に着目してセットリストを振り返ると、7曲目から20曲目まで複数のユニット曲が続くパートの変則さが目に留まる。

通常、本体グループとユニットがあるライブでは、ユニット曲をまとめて披露していくスタイルが多い。ナナシスも1stライブのセットリストではNI+CORAが2曲、SiSHが2曲といったように、ユニットごとにまとめられていた。しかし今回は、この日に初ステージとなったLe☆S☆Caを除いて、前半の一部はメドレーではあったものの妙に入れ替わりが激しい。

7.You Can’t Win / NI+CORA
8.ラバ×ラバ / WITCH NUMBER4
9.セカイのヒミツ / サンボンリボン
10.さよならレイニーレイディ / SiSH
11.YELLOW / Le☆S☆Ca
12.Behind Moon / Le☆S☆Ca
13.PRIZM♪RIZM / WITCH NUMBER4
14.オ・モ・イ アプローチ / NI+CORA
15.AOZORA TRAIN / SiSH
16.たいくつりぼん / サンボンリボン
17.Clover×Clover / サンボンリボン
18.お願い☆My Boy / SiSH
19.Girls Talk!! / NI+CORA
20.SAKURA / WITCH NUMBER4 「t7s 2nd Anniversary Live in PACIFICO Yokohama 16’→30’→34’ -INTO THE 2ND GEAR-」より

Le☆S☆Caは直前に簡単な呼び込みがあったものの、歌い終えると暗転し、次のユニットが登場するパターンを繰り返した。1組を除いて衣装替えもしておらず、単純に「出たり入ったり」という状態だ。
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SiSH

さらに(曲順の都合もあるとは思うが)、1stライブで『KILL☆ER☆TUNE☆R』は「どうやって どうやって どうやって 叶えよう」とシンガロングしたパートも今回はなし。他の曲でも「みんなで一緒に!」と呼びかけて合唱するようなシーンもなかったように記憶している。

おそらくは「ユニット曲複数+MC」という定型的な表現を避けつつ、観客に展開を読ませないような工夫ではないかと考える。さらに、MCを省くことで時間を詰め、曲を盛り込んでいくことにも成功したのだ。

ナナシス2ndライブの「不足」と「過剰」

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KARAKURI

なぜ、このような構成を取っているのだろうか。考察のヒントは総監督・茂木伸太郎さんが音楽ナタリーのインタビューに答えた下記の部分にありそうだ。

今回はね、 “音楽ライブ”というものを真剣に考えてやりたいなと。あまりわかりやすく表に出るようなテーマではないんですけど、(中略)ある意味大きなトライです。どこまでやれるかはわかんないですけど、そのテーマをどうクリアしていくかっていうのが、こういったタイプのコンテンツのライブでの長期的であり絶対的な課題だと思うんで。(中略)ここで地力をつけないと続いていかないですからね。Tokyo 7th シスターズ「Are You Ready 7th-TYPES??」特集 (1/3) - 音楽ナタリー Power Push 拡大するナナシスの世界 茂木総監督が語るその構想

総監督・茂木さんは別のインタビュー(外部リンク)でも、「『二次元アイドルってこういうもんでしょ』っていう世間のイメージを音楽面でまずは壊したいっていう思いもありますしね」と話しているだけに、楽曲への思い入れは強い。

だからこそ、MCやシンガロング、アンコールといったコミュニケーションが不足するとしても、昼夜2公演にもかかわらず3時間30曲ライブで『ナナシス』の音楽を過剰に響きわたらせた。

ありがちなステージ演出を排除し、音楽とパフォーマンスのみに引き絞った構成とすることで、「キャスト/キャラクターの魅力に頼り過ぎない」ステージをつくりあげていったのだろう。現在地点のナナシスを出し惜しみなく披露することに、意欲を注いだのではないかと推察する。

それを印象づける装置としては、公演冒頭にあったキャラクターとキャストを紹介する映像の最後に「and You the Second Manager」と「二代目支配人」というクレジットが入っていたことが挙げられる。

観客はライブの登場人物であると同時に、ゲームと同じく「キャラクター/中の人」のプロデューサーとして、会場を見守ってほしいという想いともとれる。ひとたびステージがはじまれば、支配人にできることは「成功を祈る」だけである。そこに、観客とのコミュニケーションを最小限に抑えた理由があるのではないだろうか。
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WITCH NUMBER 4

そのスタンスは4つの特報を発表した際にも現れているように思う。特報の内容は先んじて記事でもお届けしたが、新ユニットのデビューシングル発売、2017年1月15日(日)に大阪・なんばHatchでのライブ、2017年4月22日(土)、23日(日)には幕張メッセにて3rdライブ、初となるアニメーションMVの制作と魅力あふれるものばかりだった。

しかし、発表はセブンスシスターズによる「ナナシスの未来を!」の言葉に続き、後方ビジョンに映像と文字で表示されるのみで、その発表に対してキャストからの具体的なコメントはないままに『Star☆Glitter』へ入っていき、終演したのである(あるとすれば、ラストナンバー前に告げた「みなさん、ナナシスの未来、見てくれましたか?」くらいだった)。

次回ライブやアニメーションMVへの期待感を直接的に観客と共有することなく、最後まで楽曲とパフォーマンスの力で駆け抜けてみせたのも、筆者からすれば「異様」な光景でありながら、野心的なチャレンジだったと思う。

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