ナナシス2ndライブがなぜ“異様”に映ったのか? ステージ構成の不足と過剰

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“シンクロ率”がときめく2つのユニットに注目

しかしながら、定番は踏襲していないとはいえ、2.5次元アイドルコンテンツならではの魅力にあふれたシーンもあった。筆者は特に2つのユニットに心惹かれた。

まずは、中村桜さん(晴海サワラ役)、高井舞香さん(晴海カジカ役)、桑原由気さん(晴海シンジュ役)によるサンボンリボン。歳の離れた晴海三姉妹による“3人組ガーリー・ポップユニット”という設定だが、実際の身長差やかけあいの様子で、キャラクターとキャストの高いシンクロを感じさせた。言わば「キャラクターが(目の前に)居る」感覚だ。

サンボンリボン

シンクロ率が高まると、観客は3つの姿をステージ上に見ることができる。まずは現実に存在するキャスト本人。次に、キャストが演じているキャラクター像。そして、そのふたつが同一視される中で生まれる、キャラクターともキャストとも言えない境界の曖昧な「第三者的」なる存在の3つだ。

それぞれの物語を同時に体験し、観客は3つの姿を行き来しながら観賞を続ける。この行き来が激しくなる、あるいは「第三者的」なる存在が高まるほどに、2.5次元ライブならではの興奮が生まれていくと筆者は考えている。

「第三者的」なる存在の強さに加え、ライブパフォーマンスで圧倒した4Uも印象深い。1stライブはスケジュールの都合で参加できなかったメインボーカルの山下まみさん(九条ウメ役)が参戦し、長縄まりあさん(佐伯ヒナ役)、吉岡茉祐さん(鰐淵エモコ役)と真の4Uが揃った記念すべきステージに目頭を熱くしたファンも多いだろう。

4U

楽曲では『TREAT OR TREAT?』が観客の反応も含めて抜きん出ていたように思う。Bメロに移る前に山下まみさんから「次、エモコ、歌いなさーい!」とパスが渡され、吉岡茉祐さんが「仕方ないですね……」とクールな表情でボーカルを引き継いだ瞬間は心が沸いた。長縄まりあさんのキュートなボイスも時折挟まれ、ハードロックの曲調にほどよい抜け感をもたらしていた。

先行して発売された2ndアルバム『Are You Ready 7th-TYPES??』に、佐伯ヒナ、鰐淵エモコがメインボーカルを務めたバージョンも収録されており、3人の歌声をどのように配分するか気になっていただけに、この演出は喝采ものだった。おそらく映像化されると思うが、ぜひ注目してもらいたいパートだ。

動き出したナナシスの夏、迎える春に注目

セブンスシスターズ

ライブの幕開けとなったkzさん作曲の『SEVENTH HAVEN』。渕上舞さん(羽生田ミト役)からの「ギアを上げろ、お前ら」の言葉を皮切りに、キービジュアル同様の衣装をまとってステージに登場したセブンスシスターズの6名は、伝説のアイドルにふさわしい“ラスボス”感をまとわせた楽曲で、会場を瞬時に沸かせた。
熱気があふれだすような一閃の大火花、そして「Ah(Ah)」の大合唱。kzさんの力強いサウンドが後押し、その破壊力は鳥肌ものだった。

総監督・茂木伸太郎さんはこの曲の制作にあたって、kzさんにいくつかのキーワードを提示したという。

まずは“突破”ですね。ジャンルの突破、業界の常識の突破。物語的にセブンスは実際そういうことをやっているので。あとは“狂気”と“中毒性”。さらに“いきすぎたカッコよさ”っていうキーワードも書いたと思います。 「Tokyo 7th シスターズ」特集 茂木総監督 & kz(livetune)対談 (1/4) - 音楽ナタリー Power Push 茂木総監督 & kz(livetune)が“レジェンド”セブンスシスターズに託したナナシスの未来

ナナシスは『SEVENTH HAVEN』で「突破」を宣言し、たたみかける楽曲で会場に「狂気」を呼び込みながら、詰めかけた支配人たちの「中毒性」をさらに高め、冬の大阪、春の幕張メッセ2Daysライブを迎え撃つ。

一方で、あくまで2ndライブである点を差し引いても、完成度を高める伸びしろはまだあったようにも思える。ナナシスが長期化するにつれて、個々人の経験値やパフォーマンスに差が生まれてくるのは今後の課題に挙げられそうだ。アイドルコンテンツ全般における見所でもある「キャストの成長」は、これから問われていくのだろう。

3時間を駆け抜けた最後の曲『僕らは青空になる』には、こんなフレーズがある。

運命だよ ココニイルコトは
流した涙 それが証になった
その勇気は奇跡じゃない
動き出した夏が
今キミを待っている 777☆SISTERS『僕らは青空になる』より

パフォーマンスの最後に、キャストはそろって空を指さした。動き出したナナシスの夏は、来年の空へ続いていく。そこに広がるのは青空か、暗雲か。春の幕張が、正念場になりそうだ。

※記事初出時、MCに誤表記がございましたのでお詫びして訂正いたします
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イベント情報

「t7s 2nd Anniversary Live in PACIFICO Yokohama 16’→30’→34’ -INTO THE 2ND GEAR-」(現在は終了)

開催
2016年8月21日 昼の部:開場12:00 開演 13:00 夜の部:開場17:30 開演 18:30
場所
パシフィコ横浜国立大ホール
主催・企画
株式会社Donuts 株式会社ビクターエンタテインメント
制作
株式会社バースデーソング 株式会社Love&Light

【セットリスト】
1.SEVENTH HAVEN / セブンスシスターズ
2.FALLING DOWN / セブンスシスターズ
3.KILL☆ER☆TUNE☆R / 777☆SISTERS
4.Cocoro Magical / 777☆SISTERS
5.-Zero / KARAKURI
6.B.A.A.B / KARAKURI
7.You Can’t Win / NI+CORA
8.ラバ×ラバ / WITCH NUMBER4
9.セカイのヒミツ / サンボンリボン
10.さよならレイニーレイディ / SiSH
11.YELLOW / Le☆S☆Ca
12.Behind Moon / Le☆S☆Ca
13.PRIZM♪RIZM / WITCH NUMBER4
14.オ・モ・イ アプローチ / NI+CORA
15.AOZORA TRAIN / SiSH
16.たいくつりぼん / サンボンリボン
17.Clover×Clover / サンボンリボン
18.お願い☆My Boy / SiSH
19.Girls Talk!! / NI+CORA
20.SAKURA / WITCH NUMBER4
21.ワタシ・愛・4U!! / 4U
22.TREAT OR TREAT? / 4U
23.Hello...my friend / 4U
24.ハネ☆る!! / はる☆ジカ(ちいさな)
25.Snow in “I Love you” / 777☆SISTERS
26.H-A-J-I-M-A-R-I-U-T-A-!! / 777☆SISTERS
27.Sparkle☆Time!! / セブンスシスターズ
28.Star☆Glitter / セブンスシスターズ
29.FUNBARE☆RUNNER / 777☆SISTERS
30.僕らは青空になる / All cast

【キャスト】
『セブンスシスターズ』
水瀬いのり(七咲ニコル役)
渕上舞(羽生田ミト役)
前田玲奈(御園尾マナ役)
黒瀬ゆうこ(寿クルト役)
川崎芽衣子(若王子ルイ役)
辻あゆみ(遊佐メモル役)

『777☆SISTERS』
篠田みなみ(春日部ハル役)
高田憂希(天堂寺ムスビ役)
加隈亜衣(角森ロナ役)
中島唯(野ノ原ヒメ役)
井澤詩織(芹沢モモカ役)
清水彩香(臼田スミレ役)
道井悠(神城スイ役)
今井麻夏(久遠寺シズカ役)
大西沙織(アレサンドラ・スース役)
中村桜(晴海サワラ役)
高井舞香(晴海カジカ役)
桑原由気(晴海シンジュ役)

『Le☆S☆Ca』
吉井彩実(上杉・ウエバス・キョーコ役)
藤田茜(荒木レナ役)
植田ひかる(西園ホノカ役)

『4U』
長縄まりあ(佐伯ヒナ役)
吉岡茉祐(鰐淵エモコ役)
山下まみ(九条ウメ役)

『KARAKURI』
秋奈(空栗ヒトハ/フタバ役)

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