連載 | #13 コミックマーケット90

【コミケ90】共同代表 市川孝一インタビュー 2020年とコミケの行方

【コミケ90】共同代表 市川孝一インタビュー 2020年とコミケの行方
【コミケ90】共同代表 市川孝一インタビュー 2020年とコミケの行方

コミックマーケット準備会共同代表・市川孝一さん

8月12日(金)から14日(日)にかけて、世界最大規模の同人誌即売会「コミックマーケット」(通称:コミケ)が東京ビッグサイトにて開催された。

2015年に40周年、そして今回で90回目という節目を迎えた一方、2020年東京オリンピックに向けての開催体制の変化について、参加者からは懸念の声が上がっている。

実際、今回の「コミックマーケット90」では、東京ビッグサイトの拡張棟工事の影響で、企業ブースの会期の短縮、コスプレエリアの移転といった体制変更が行われた。今後も、東京ビッグサイトの会場の一部、または全部が使用できなくなる可能性もゼロではない。

しかし、東京オリンピック開催に向けて、コミックマーケットは日本のポップカルチャーを発信する拠点として重要なファクターとなることは間違いないだろう。

そんな中、コミックマーケットの今後の行方について、運営陣はどのように考えているのか? コミックマーケット準備会共同代表のひとり・市川孝一さんにお話をうかがった。

取材/写真:かまたあつし

「コミックマーケット」今後の開催体制はどうなるか?

「コミックマーケット90」西1・2ホールに移転した企業ブース

──今回の「コミックマーケット90」で開催体制がいくつかの点で変わりましたが、その経緯について教えていただけますか?

市川孝一(以下、市川) 今回の夏コミでは、4階の混雑用スペースに使っていた西棟の屋外展示場が使えないということで、代わりのスペースを確保するために、これまではサークル参加者が利用していた1階の西1・2ホールに企業ブースを移転しました。

逆にサークル参加者の一般ブースは、企業ブースとして使われていた4階の西3・4ホールに移転したのですが、それだけだと(西1・2ホールに比べて)サークルさんの参加できる数が減ってしまうので、企業ブースの会期を2日間に短縮して、3日目は企業ブースを一般ブースに入れ替えることで、サークルさんの数も企業の数もキープするという形で行いました。

──今回は東京オリンピックの開催に向けた初めての体制変更でしたが、そこまで大きな混乱は見られなかったと思います。これについてはどのように対処されたのでしょうか?

市川 「今回はこういう風にやります」という大前提のもと、各分科会にそれに向けて計画を練るように伝えて並列で組織を動かしつつ、ボランティアのスタッフにも土日に集まってもらい、ほぼ毎週ミーティングを重ねました。

確かに今回は大きな混乱もなく上手くいったと思いますが、まだ我々の目から見ると「ここはまだダメだろう」という部分もありました。なので、参加者になるべく迷惑をかけないよう、1日目終了後も夜までミーティングをして、翌日の開催に向けて詰めていきました。

「コミックマーケット90」

──2020年の東京オリンピック開催に向けて、開催体制は今後どのように変わっていくのでしょうか?

市川 次回の冬コミ(「コミックマーケット91」)はちょうど工事期間の切れ目で屋外展示場が使えるのと、現在建設中の東7・8ホールも秋には完成しこれも利用するので、これまで以上の規模で開催することができそうです。

ただ、2017年はまた工事の影響で屋外展示場や西2ホールが使えないなど、今後も工事が行われる場所が出てくるかと思います。それがどこかということは、まだ具体的には会場側からは聞いていません。

だいたい1年から半年前くらいに工事の場所やスケジュールが伝えられるので、それに合わせて我々は運営方法を変えながら、どうすれば多くのサークルさんや企業に参加していただけるか、ベターな方法を毎回模索していく形になります。

──やはり、いずれは東京ビッグサイト自体が使えなくなってしまうということもありうるのでしょうか。

市川 そうですね。2020年夏には東京ビッグサイトは使用できなくなるわけですが、仮に全部使えなくなってしまったら時期をずらしたり、使えるエリアが減ってしまったら開催日数を伸ばしたり、他の会場での開催を検討したりというケースも考えなくてはいけません。とはいえ、それも一筋縄でいくものではありませんが。

ただ、2019年度には近隣の東京テレポート駅周辺に仮設会場を建てるという計画もありますし、使えるエリアを駆使して可能な範囲で開催していきたいと思っています。

日本のポップカルチャーを世界に発信するために

「コミックマーケット90」

──東京オリンピック開催に合わせて、コミックマーケットはポップカルチャーの発信拠点のひとつとして世界中からさらなる注目を集めていくかと思われますが、その点のお取り組みについてはいかがでしょうか?

市川 2015年春に、世界中のオタク系イベントを呼んで「OTAKU SUMMIT」という形でコミケットスペシャルを開催したり、IOEA(国際オタクイベント協会)の設立や、逆に我々が海外のイベントに参加したりと、これまでにもさまざまな取り組みを行ってきました。

しかし、これは東京オリンピックがあるからというわけではなく、国内だけではなく世界の方々とつながっていくための取り組みは昔から変わらず行っているものです。

──その一方で、同人誌における表現規制や、とりわけコミックマーケットではコスプレイヤーのローアングル撮影といった参加者の問題もたびたび話題になっていますが、その点についてはどのようにお考えでしょうか?

市川 同人誌もコスプレもそうですが、我々はルールよりもモラルが大事だと思っています。

以前はコスプレにおけるルールは厳しかったのですが、ここ最近は変わってきました。細かいルールで縛らず、表現の枠を広げることでコスプレイヤーさんもカメラマンさんもさらに楽しめるんじゃないかと。

ルールをつくるのは簡単ですが、まずその前に参加者自身のモラルを求めていきたい。それは、スタッフだけではなく参加者全員でこの場を守っていこうというコミケットならではの意識でもあります。

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イベント情報

コミックマーケット90

場所
有明・東京国際展示場(東京ビッグサイト/有明臨海副都心)
開催日
2016年8月12日(金)~14日(日)
開催時間
出展サークル 10時~16時
企業ブース 1日目:10時~17時
2日目:10時~16時
3日目:企業ブースはありません
コスチュームプレイ 10時~16時(最終日は15時)

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