avex率いるイーライセンス/JRCは第二のJASRACなるか? 音楽著作権を巡って

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イーライセンス、JRC、avexが燃やす(?) 打倒JASRAC

前置きが長くなりましたが、話の核心に踏み込んでいきます。

JASRACは、日本の著作権法で「これは著作権者に権利がある」とされるほぼ一通りの楽曲の使い方に対して、一通り料金の回収をこなします。

さすがに全飲食店での放送や路上シンガーのアレンジ演奏などからの正確な回収は不可能なので、一部はサンプリング調査(ある一部分を抽出して分析した数値から全体の実情を推定する方法)となっていますが、特に大きな金額の動きやすい部分ほど全件報告、完全分配(たとえばカラオケの場合、JASRACは、どの事業者のカラオケ配信で何回配信されたのか、何台のカラオケ配信機器からアクセス可能な状態にされたのか、といった数字を取り溜めています)を実現しており、そこは流石に業界トップと言えるでしょう。

一方でイーライセンスやJRCは、JASRACよりも回収における手数料が低い費目が多いながらも、実は一部回収できない部分があり、ここがJASRACの競合として肩を並べるには大きなネックとされてきました。

イーライセンスの公式HPにもありますが (※2)、演奏権と貸与権(レンタルCDなどの利益からの収入)については現状まだ回収できておらず、「徴収開始予定」と記載されています。そして、もう一つ、カラオケ店における使用料の徴収を開始したのは、つい2014年4月のことなのです (※3)。言い換えれば、昨年まではカラオケからの料金回収をしていなかったということです。

ちなみにこの2014年のカラオケに続いて、イーライセンスは、今年に入って演奏と貸与に関する使用料規程の更新・追加(※4)、有線放送に関する使用料規程の更新・追加 (※5)といったように、ゾクゾクとJASRACとの溝を埋めつつあります。

※2 著作権管理事業者 イーライセンス (e-License) | 著作権 管理サービスとは? http://www.elicense.co.jp/rh/01.html

※3 株式会社イーライセンス Facebook https://www.facebook.com/eLicense/photos/a.287891141276421.65007.131908146874722/651385134927018

※4 著作権管理事業者 イーライセンス (e-License) | お知らせ | 「使用料規程」変更のお知らせ(2015年4月1日実施) http://www.elicense.co.jp/u/20150227_1.html

※5 著作権管理事業者 イーライセンス (e-License) | お知らせ | 『使用料規程』変更のお知らせ(2015年7月1日実施) http://www.elicense.co.jp/u/20150528.html

イーライセンス・JRCを傘下に収めたエイベックスの真意とは?

最後に、近年のレコード売上の推移と、音楽著作権収入の推移を見てみましょう。

「オーディオレコード総生産金額」つまりCD等の売上(一般社団法人 日本レコード協会|各種統計 http://www.riaj.or.jp/data/aud_rec/aud_m.html より)

有料音楽配信売上実績 2014年(社団法人 日本レコード協会|各種統計 http://www.riaj.or.jp/data/download/2014.html より) ※(単位)数量:千回、金額:百万円

JASRACの著作権収入(使用料徴収額の推移 JASRAC http://www.jasrac.or.jp/profile/outline/detail.html  より)

著作権収入の内訳(JASRACの2015 年定例記者会見資料 http://www.jasrac.or.jp/release/pdf/15052001.pdf より)

CDや音楽配信の売上に対して、著作権収入がどれだけの割合を占めるか、おわかりでしょうか?

実に原盤(CD、配信)売上の2300億円に対して、カラオケ、貸与、演奏、有線放送等だけで350億円超もあります。つまり、イーライセンスが、薄利多売であるこの業界においてとてつもない大きい収入源の回収準備を、急ピッチで進めているものかがよくわかるかと思います。

さて、イーライセンスが急ピッチで「売上の15%にも相当する利益」の回収準備を進める最中、イーライセンスとJRCが合併、さらにエイベックスがその筆頭株主となり、なんとJASRACからの撤退を宣言しました。

製造業では、売上の10%も利益率があれば超優良ビジネス」と言われています。そんな中での15%の追加利益ですから、エイベックスがこの大きな利益を放棄してJASRACからカタログを引き上げるはずはありません。

つまり、エイベックスがJASRACから離脱したことからも明らかなように、このイーライセンスの一連の使用料規程の変更は「法律に沿うための見せかけのポーズ」ではなく、エイベックスを筆頭にしたイーライセンス・JRC連合が、本気でJASRACと同じことができるようになる、つまりJASRACの「ガチ」の競合として土俵に上がってくるであろうことを予告しています。

そして、冒頭でも述べた通り、9月・10月と立て続けの業界を揺るがすニュースが報道された形です。

ユーザーにとっては、すぐに何か影響が出るというわけではありません。ただ、現在進行形で、音楽業界にとって抜き差しならない再編が起こっているという事実は知っておいて損はありません。

しかも、「原盤権」の総本山たる日本レコード協会に、過去は会長職を、現在も副会長職(※6)を送り込んでいるエイベックスグループが、今度は「(原盤権以外の)音楽著作権」の管理団体(しかもJASRACの「ガチ」の競合!)を傘下に抱える、という凄まじい構図。 

法律をはじめ、音楽ビジネスのルールをつくり上げ、運用してきた2大団体にエイベックスの息がかかることになります。

さて、これから何が起こるのか、音楽「ビジネス」的観点から、非常に目が離せません!

※6 一般社団法人 日本レコード協会|日本レコード協会について http://www.riaj.or.jp/about/officer.html
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