最高峰の3DCG技術を支えた元フランス外人部隊兵
本作を語る上で外せない3DCG表現。なかでも、キャラクターの表情を描くにあたっては、アクターの顔におよそ30個のセンサーを付けるフェイシャルキャプチャーを採用。モーションキャプチャーによって体のアクションを収録したあとに、アクションに合わせて表情を別録りしたそうだ。2007年の『エクスマキナ』、そして2013年に荒牧さんが監督したフルCGの劇場版アニメ映画『キャプテンハーロック -SPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCK-』に比べ、荒牧さんご自身は「表情の再現精度は格段に上がっている」と、手応えを感じているようだ。
加えて氷川さんは「銃を持つ人がリアル」な点も見所のひとつと語る。荒牧さんによれば、今回ミリタリーアクションアドバイザーとして参加している細川雅人さんの功績が大きいという。それもそのはず、細川さんは元フランス外人部隊兵。本格的な銃の持ち方はもちろん、荒牧さん曰く「銃を構えたときの殺気がある」。デュナンの銃を持っての動きでは、細川さんが活躍する場面も多かったようだ。 一方で、話は作品からCG表現全般へと発展。「CGで女性のほうれい線を出すのはNG」など、美人・イケメンほどCGで表情をくずすのが難しいという、ならではのトリビアも語られた。
そんなCGと実写のボーダーへの言及のなかで、神山さんは「CG(アニメ)と実写では意味性が違う」とコメント。例えば、アニメはそもそもが架空の世界であるため、少し本物に近い描写を加えるだけで、“リアルに近づく”。一方、実写は現実をリアルに描写することで、かえって嘘が多くなってしまうという。
いまや素人でも簡単に動画を制作できる環境にある中で、ネット上には多くの面白い映像があふれている。それが単純な内容だったとしても、面白さや痛さも伝わってくる。そういった(あまり編集・演出されていないからこそ)リアリティの高い映像の一方で、実写でドラマ(作品)を撮ることの難しさがどんどん上がっているそうだ。「作品としてカット割りを用いることが、逆に“つくり物”という印象を与えてしまうこともあるのでは?」と、実写表現の難しさを語った。
神山さんが「映像におけるリアリティのデフレ」と称した現象には、制作環境の変化が影響しているようだ。要するに、技術の向上によって実写作品の可能性が広がる──すごい映像が撮れる──ほど、リアリティがなくなっていく。荒牧さんも映画『ゼロ・グラビティ』を例に出して、その意見に賛同しつつ、「そうなると、スマートフォンやGoProなどで撮影した素人作品のほうが、リアリティを感じられる」と、技術の進歩が招いたジレンマを明かした。
ストーリーに合わせた表現の選択・融合ができる“楽しい時代”
昨今、国産アニメでも増え始めている3DCG作品。ただし、神山さん曰く、海外と比べると制作予算の段階で「10分の1から100分の1くらいの差がある」のが現状。日本でも将来的には、素材として使いまわせる部分をストックしたり、ゼロからつくる要素を減らすことで、よりCGでの表現が取り入れやすくなるという。とはいえ、表現の幅が広がっていることは間違いない。荒牧さんも現状を踏まえ、これからの作品づくりに対して抱負を語っている。
「さまざまな手法の選択・融合を通じて、ストーリーに合わせた表現ができるようになっている。そういう意味では楽しい時代。まだまだCG作品は数が少ないので、どんどん作品をつくって(視聴者に)慣れてもらいつつ、そのうえで表現の可能性を見せていきたい」(荒牧さん)
なお、注目の続編については「皆さまの応援次第」とのこと。 番組内ではこのほかにも、英語版と日本語版のセリフの違いにも言及。脚本を担当したのは、ゲーム『God of War』シリーズなどに参加するマリアンヌ・クラヴジックさん。英語の脚本となれば、アクターのセリフも当然英語。日本版の制作にあたっては、英語から日本語という直訳ではなく、より面白さが伝わりやすいように、原作よりのセリフを取り入れるなど、シーンによっては大胆に変更した部分もあるという。英語・日本語での表現の違いに注目しても面白いかもしれない。
『アップルシード アルファ』は、1月17日(土)から新宿バルト9・梅田ブルク7ほか全国で公開(同日Blu-ray劇場限定版)。通常上映のほか、荒牧さん自身が「いろいろリクエストした」という、視覚だけではない体験型の4DX版を鑑賞するのもオススメだ。
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