完璧だ/LEX
アルバム『Original』にも収録された、タイトルそのままにLEXさんが自身に対して<完璧だ>と言い聞かせ続ける一曲。
<完璧だ>というワードとは裏腹に、LEXさんの声は時にシャウトもするものの、基本的には言い聞かせるように、掠れたものになっています。
MVでは、朝起きたLEXさんが、フックの歌詞にもあるように鏡の中の自分へと<完璧だ>と言い聞かせながら一日をこなしていく様子が描かれています。
その中では、なんらかの授賞式でトロフィーを受け取るも、どこか困惑した表情を見せる場面も。
全体を通して自分の栄光を誇り、笑うような姿を見せる場面はほぼ無く、疲れた顔をしている──しかし曲の後半、ビートが止まる一瞬の静けさの中で<洗面所で鏡に映る自分に言う『お前って完璧だ』>と口ずさむシーンでは、無になった表情がこれでもかというほどに決まって見える。
若くしてカリスマとなったアーティストの苦悩と、そんな姿さえもが映えてしまうという、彼がカリスマたる所以が現れた、素晴らしい演出です。
南無阿弥陀仏 Prod.KM/唾奇
沖縄出身ラッパーが集まった「RASEN in OKINAWA」やOZworldさんの「MIKOTO 〜SUN NO KUNI〜」等への客演参加はありながらも、個人での活動は2022年ごろから止まっていた唾奇さん。
さらに、所属していたクルー・Pitch Odd Mansionが2024年内で活動を終了。唾奇さんが今後、個人活動を再開するのかには、期待がかかっていました。
そんな中、2025年2月に静寂を破ってリリースされたのが、この「南無阿弥陀仏」でした。
タイトに韻を刻みながら朗々と内省的なリリックが歌われ、曲の進行とともにその内容も休止期間の心情から再起への想いへと移り変わっていく。MVで描かれる情景も、暗い画面から進行と共に晴れやかな風景へと様変わりしていきます。
そういった構成を踏まえてみると、フックの<へべれけな頭で考え真っ当する最初から根拠なんて無い go on><ダメで元々さ 小便引っ掛けて抜けた地元>というリリックも序盤は自嘲気味なものに聞こえたのが、後半では現状を認め、前へ進んでいく覚悟を歌ったものに聞こえるようになっていきます。
うそさ/Jinmenusagi
これまでもインターネット的な感性を曲にしてきたJinmenusagiさんが、“普通”の価値観を強制される学校などになじめず、インターネットと共に成長してきた半生を歌った一曲。
2025年のインターネットで、ある種中心にあったと言える“冷笑”。
<親にも教師にも通りすがりのサラリーマンにも殴られ覚えてったこの冷笑>と歌われるその価値観は、世間に溢れる欺瞞に加えて、自分自身さえも切り刻んでいく。
痛みをごまかして笑うことができないからこそ、自分を傷つけてでも過去と向き合い<子どもの頃楽しかったなんて うそさ>と言わざるを得ない。
そうして世間を斜に見ながら歩んできたJinmenusagiさんが、成長を重ねた、“普通”の価値観を認めたからこそ吐き出すことができる<ぜんぶ嘘さ 大人はクソだ>という歌詞に心を打たれました。
ひねくれているからこそ、逃げられずに世間と向き合っている。音楽でもなんでも、そういう面倒くささを感じさせる作品が大好きです。
KIRINAI feat. Kamui/オシャレになりたい!ピーナッツくん
オシャレになりたい!ピーナッツくんの最新にして5枚目のアルバム『Tele倶楽部II』に収録されたKamuiさんとの一曲。
かつてKamuiさんのアルバム『YC2.5』に収録された楽曲「ミライノソラ」で共演した2人。その当時にKAI-YOU Premiumで行われた対談では、架空の未来都市「Yandel City」を舞台にストーリーテリングが行われる同アルバムについて、サイバーパンクなどを軸に言葉が交わされました。
今回の「KIRINAI」も、ヤギ・ハイレグさんのRageビートが、近未来な雰囲気を醸し出しています。
2025年は、それぞれオンラインライブ「PQ」やTwitchチャンネル「ラフスタ (raf_studio)」でシーンの注目を集めた2人。世間の些末なことを意にも介さず爆走する様が、この曲ともマッチしていてなお良く感じられました。
中でも良かったのが、自身の心情などを歌った他のリリックからは少し浮いた、Kamuiさんの<バカにしてたやつビビらす ピラフ星人より先曲出すカムP>というライン。
道端に立っていたら、くぐもった爆音をまき散らす車から急にワンフレーズだけ聞き取れるワードが聞こえた時のような面白さがありました。
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