講談社、北米で『ヤングマガジンUSA』刊行 表紙は『攻殻』士郎正宗が描き下ろし

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宮本デン

『ヤングマガジンUSA』編集長 白木英美さんコメント

Q:なぜ今回、このような北米での企画を実施しようと思われたのですか?
A:近年、世界的にマンガの需要が高まる中で、特に青年マンガの持つ深みや魅力を、より多くの方に届けたいと考えたのがきっかけです。『AKIRA』や『攻殻機動隊』といった名作を世に送り出してきたヤングマガジンとして、次なる『AKIRA』を創出したいという想いもあります。ちょうど本年が創刊45周年という節目を迎えることもあり、その記念事業の一環として今回の北米向け増刊企画を実現する運びとなりました。現在、海外市場では少年マンガが主流となっていますが、少年マンガでは描ききれないテーマや表現を含む青年マンガの可能性を、海外最大市場である北米の読者の皆さまにも届けたいと考えています。

Q:日本の『ヤングマガジン』と、今回北米で展開される『ヤングマガジンUSA』には、どのような違いやコンセプトの変化がありますか?
A:日本版のヤングマガジンでは、殺し屋やドラッグといった刺激的な題材を扱う作品が多いのが特徴ですが、今回の北米向け増刊では、SFやダークファンタジーといったジャンルに重点を置いて構成しています。「アウトサイダーのための雑誌」というヤンマガらしさは踏襲しつつも、より国際的なスケールで共感されうる作品群を揃えました。世界観の広がりやテーマ性において、グローバル市場に響くラインナップを目指しています。

Q:「UN-filtered MANGA」というコンセプトは、どのような経緯で生まれたのでしょうか?
A:広告代理店の方々とのディスカッションの中で、「フィルターばかりの世の中は、本当におもしろいか?」「人間の想像力にフィルターは必要か?」といった問いをいただきました。この考え方は、まさに青年誌が掲げてきた価値観と重なるものであり、非常に共感できるものでした。青年マンガは、夢だけでなく現実を描くメディアであり、人生の葛藤や痛み、社会への違和感といった“生々しい感情”を描くことができます。社会、時代、配慮——さまざまな「フィルター」へのアンチテーゼとして、この「UN-filtered MANGA」というコンセプトを打ち出しました。北米の読者の皆さまにも、作品を通じてその真意を感じ取っていただければと考えています。

Q:北米の読者を想定して、どのようなテーマやジャンルを選定されましたか?
A:今回は「SF」「ダークファンタジー」「ホラー」「LGBTQ」という4つのジャンルに焦点を絞りました。ヤングマガジンではこれまでも『AKIRA』『攻殻機動隊』『ドラゴンヘッド』『BOYS RUN THE RIOT』『頭文字D』など、ジャンル性の高い作品が海外で評価されてきました。特にSFジャンルには重点を置いており、少年漫画では扱いづらい複雑なテーマや世界観に挑戦することで、より深い読書体験を提供できればと考えています。これらは、北米においても人気の高い骨太なジャンルであり、ヤングマガジンらしいアプローチが可能だと確信しています。

Q:作品選定や作家の起用は、どのような基準で行われましたか?
A:昨年10月に「海外向け増刊を制作する」という企画趣旨のもと、一般公募を実施し、100名を超える作家の皆さまにご応募いただきました。社内選考に加え、北米支社の現地スタッフ(ネイティブ)からの意見も取り入れながら、最終的に18作品を厳選いたしました。北米市場は人種・宗教・ジェンダーなど多様性に関する配慮が求められる市場ですので、その点には十分注意を払いながら、コンセプトに即した作品を選定しています。

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