【抜粋】
清涼飲料水の広告の少女はいつもドラマティックな青春を謳歌しているし、「推し」はファンの期待した筋書きどおりに振る舞うし、就活面接では挫折経験を「美談」として語らねばならない。
私は端的にこう思う。何かがおかしい、と。
人々はあまりにも強い物語の引力に引き寄せられて、もはや物語に支配されつつあるのではないか、と私は危惧し始めた。
だから、私はこれから、物語に対抗したいと思う。何かしらの物語が私たちの幸福を奪うのだとしたら、もはやそんな物語は廃棄されるべきだろう。私はよき物語を愛している。それゆえ、物語を批判したいと思う。愛するということは、支配されるわけでもなく、支配するわけでもなく、独特のバランスのなかで惹かれ合い、反発し合うことなのだと考えている。
第一部の「物語篇」では、物語化の持つ魔力と危うさを論じていく。第二部の「探究篇」では、物語の危険を避け、物語を相対化できるような思考を「遊び」を手がかりに探索していこう。その中で、改めて物語との向き合い方がみえてくるはずだ。
物語化批判、そして、遊びの哲学を始めよう。
序章 人生は「物語」ではない
▼物語篇――物語の魔力と危うさ
第1章 物語批判の哲学
1 他人を物語化することは正しいか
2 自分語りの罠
3 感情と革命
4 キャラクターをアニメートする
▼幕間――物語から遊びへ
▼探究篇――物語ではない世界理解
第2章 ゲーム批判の哲学
1 人生はゲームなのか
2 ゲーム的主体と力への意志
3 競争しながら、ルールを疑う
第3章 パズル批判の哲学
1 陰謀論と考察の時代
2 パズル化するポストモダン
3 答えなき、なぞなぞとしての世界
第4章 ギャンブル批判の哲学
1 人はなぜギャンブルに飛びこむのか
2 ギャンブラーが生きる「現実」
3 ギャンブル的生の解放
第5章 おもちゃ批判の哲学
1 原初、世界はおもちゃだった
2 すべてを破壊する「おもちゃ遊び」
3 遊び遊ばれ、ニルヴァーナ
終章 遊びと遊びのはざまで
あとがき
参考文献
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