アフガニスタン系アメリカ人作家のジャミル・ジャン・コチャイさんによる短編集『きみはメタルギアソリッドⅤ:ファントムペインをプレイする』が、2月27日(木)に河出書房新社から刊行される。
父や母たちが逃れてきた戦争、多くの仲間が逃れられなかった暴力と死の記憶を、現代アメリカのポップカルチャーを経由した視点から描いた12編を収録。
“ビデオゲームマニア”作家と呼ばれるジャミル・ジャン・コチャイさんの手によるイスラム・マジックリアリズム短編集だ。邦訳はアメリカ文学研究者の矢倉喬士さんが担当した。
ポップカルチャーを通してアフガニスタンを描く作家
ジャミル・ジャン・コチャイさんは1992年、アフガニスタンの内戦が激化するなか、パキスタン・ペシャワールにあるアフガニスタン難民キャンプで生まれた。
生後間もなく家族とアメリカ・カリフォルニア州サクラメントへ移住。世界最大の難民コミュニティの一つで生活した。
ジャミル・ジャン・コチャイさん
高校卒業後は、自身で学費を稼ぎながらカリフォルニア州立大学サクラメント校で学士号を取得。
その後2019年に、長編小説『99 Nights in Logar』でデビューし、ニューヨーク・タイムズ紙、ガーディアン紙などから評価された。
作品には、家族の故郷であるアフガニスタンのロガール州で使われるパシュトー語やペルシャ語で、両親や親戚から聞かされた物語や、故郷への定期的な訪問が大きな影響を与えているという。
表題作は『メタルギアソリッドV』プレイする少年が主人公
『きみはメタルギアソリッドⅤ:ファントムペインをプレイする』は実験的ともいえる様々な形式/手法を駆使して描かれた12編を収録。
表題作の題材になっているのは、文字通りゲームクリエイター・小島秀夫さんが手がけたステルスゲーム『メタルギアソリッドV』。ソ連の侵攻以降、1984年のアフガニスタンなどを舞台としている。
表題作は、アフガニスタンからの移民一家で育つ少年が『メタルギアソリッドV』のアフガニスタンを舞台にしたマップ上に、主人公であるスネークの姿で降り立つ。
彼は他者の目を通してアフガニスタンの地と、そこで暮らす人々を見つめ、自分や家族に似た姿のノンプレイヤーキャラクターからの銃撃を受けながら、叔父が殺されようとしている村に向かうことを決断する。
『きみはメタルギアソリッドⅤ:ファントムペインをプレイする』表紙
……それはメタルギアで、コジマの作品で、きみの幼少期の思い出の中でも、欠かすことのできない大切なシリーズの最終作なわけで、ときどき過去作をプレイして、「The Best is Yet to Come」のアイルランド系ゲール語の歌声を聞くと、涙が自然とあふれ出て、キーボードへと落ちていく。(表題作より)
語り得ない痛みの歴史を、独特のユーモアで綴る12編
それ以外にも、配達され続ける息子の肉片を縫い合わせていく母親を描く「差出人に返送」、パレスチナの囚人解放を求めてYouTubeでハンガー・ストライキを拡散する大学生たちの物語「ハラヘリー・リッキー・ダディ」も気になるところ。
『きみはメタルギアソリッドⅤ:ファントムペインをプレイする』
さらに、死ねない老女を見守る天使と地球の物語「ヤギの寓話」、サルに変身し反乱軍を率いる青年の数奇な運命を描いた「サルになったダリーの話」、アフガニスタン系移民一家を監視する謎の人物が「巡礼者(ハッジ)ホタクの呪い」など全12編の短編を収録。
語り得ない痛みの歴史を、独特のユーモアで描いた作品群に仕上がっているという。
『きみはメタルギアソリッドⅤ:ファントムペインをプレイする』目次
きみはメタルギアソリッドⅤ:ファントムペインをプレイする
差出人に返送
もういい!
バフタワラとミリアム
ハラヘリー・リッキー・ダディ
サバーの物語
職務内容は以下の通り
予感、を、思い出す
ガルブディンを待ちながら
ヤギの寓話
サルになったダリーの話
巡礼者(ハッジ)ホタクの呪い
謝辞
訳者解説
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訳者: 矢倉喬士
仕様:46判/上製/272ページ
発売⽇:2025年2⽉27日
税込定価:2750円(本体2500円)
ISBN:978-4-309-20920-3
ブックデザイン:川名潤
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