連載 | #8 チャートハックと音楽シーン

政治化する推し活──アイドルMVのコメント欄「◯◯担です」から考える

「〇〇担です」は宣伝であり、政治的外交である

特定のアーティストをランキング入りさせることを目的に、意図的に再生数や得票数などを稼ごうとするチャートハック行為。

推し活文化において、そういったチャートハック行為が必要になるのは、推しのアイドルの新曲リリース時や投票企画の実施時など、特定のタイミングに集中する。

そこで、それ以外の“平時”は他のファンダムのチャートハック行為に「〇〇担です」とアピールし協力することで、見返りとして“有事”に他のファンダムにチャートハック行為を協力してもらう。

つまり、ファンダム間で相互扶助の共犯関係が築き上げられているのだ。

アイドル戦国時代──そして政治化する推し活

群雄割拠のアイドル戦国時代と言われて久しい現代。YouTubeやSNSが発達することにおいて、さらに加速度的な盛り上がりを見せている。

こうしたチャートハック行為が横行する背景にあるのは、自分たちが推しているアイドルが他のアイドルよりも価値があると証明したいという、ファンダムの承認欲求だけではない。

誰にでもわかりやすい数字で結果を出さなければ、推しのアイドルの仕事が減ってしまい、場合によっては活動を続けられなくなってしまうという切実な危機感もある。

ランキング入りによって、少しでも推しのアイドルの露出機会を増やそうする、献身的なファン心理も理解できなくはない。

しかし、自分がイチオシする人物やキャラクターを愛でたり応援したりすることを指すはずだった推し活が、いつの間にかマーケティングや政治的な価値観に染め上げられてしまっていることは、考えさせられるものがある。

1
2
この記事どう思う?

この記事どう思う?

推し活文化の功罪を考える

Billboard運営が警鐘「チャートハック目的では、音楽を“聴く”とは言えない」.jpg

Billboard運営が警鐘「チャートハック目的では、音楽を“聴く”とは言えない」

日本版Billboardとして、2008年からヒットチャートをスタートさせたBillboard JAPAN(ビルボードジャパン)。 CDセールスやダウンロード数、ストリーミング数のみならず、動画の再生数やツイート数、カラオケで歌われた数など、複数の指標に独自の係数を掛け合わせて合算。総合ソングチャートとして算出している。 …

kai-you.net
「推し活女子」の実態を調査 約15%が、30万円超を推し活に使う.jpg

「推し活女子」の実態を調査 約15%が、30万円超を推し活に使う

「推しに関する実態調査」を、オタクの“気になる”を独自目線で届けるWebメディア「otalab」が発表した。 調査は47都道府県在住の10~30代の推し活をしている女性1078人を対象に、6月9日〜14日にかけてインターネット上で実施。 どこからが「推し」かの判断基準や、自分と同じ「推し」を推しはじめた人を…

kai-you.net

関連キーフレーズ

連載

チャートハックと音楽シーン

音楽配信の主流がCDからデジタルへ移り変わる昨今。CDの複数枚購入を促す従来の特典商法に加え、デジタルならではの「チャートハック」行為が音楽シーンに影響を及ぼしている。 アーティスト・レーベルの人為的な施策やファンダムによるチャートハックの是非。改めて、「音楽を楽しむ」とはどういうことなのか。 再生数やランキング結果など、わかりやすい「数字」の話題性・権威性に頼らず、アーティストや楽曲を知ってもらうためにできることを探る。

0件のコメント

※非ログインユーザーのコメントは編集部の承認を経て掲載されます。

※コメントの投稿前には利用規約の確認をお願いします。