連載 | #21 コミックマーケット101特集

コミケ50周年に向け「上限12万6000人での開催を」代表が見据える節目

若手が主導したコミケ初心者ガイド

設営時の様子/撮影:コミックマーケット準備会

──今回、「n日目コミックマーケット準備会」というTwitterアカウントを通じて、初心者向けの情報を積極的に発信していたのが印象的でした。以前のインタビューにもあった、新しい世代を意識した展開ということでしょうか?

市川孝一 今回は、初めてコミケットに来る人向けに、事前準備・当日それぞれで初心者ガイドをつくったり、Twitterのスペースを使った情報発信を行いました。

それらは新しい世代を意識した展開であると同時に、準備会の若手から「やりたい!」と声が上がった企画でもあります。

「コミケットは知ってるけど、参加するには何をどうすればいいのか?」という疑問に対して、我々の世代が初心者向けの企画を考えると、どうしても玄人目線になってしまう。本当に初めて来る人への意識が抜け落ちてしまう可能性があります ──開催回数100回以上、50年近い歴史があるからこそということですね。

市川孝一 今回は準備会の若手が主導してくれたことで、本当の意味で初心者と同じ目線に立った企画ができたのではないでしょうか。

コミケットには参加する人は、サークルさんも一般の方も準備会スタッフも、何かをしたいという目的意識を持っていると思います。若手スタッフには、やりたいことがあればどんどんやらせてあげたいですし、今後、定期企画にできないかと相談しています。

コミケ50周年に向けて「まずは12万6000人」

『コミックマーケットへようこそ 準備するから準備会』/画像はAmazonから

──ここからは少し未来の話をさせてください。2022年12月に星海社から発売された書籍『コミックマーケットへようこそ 準備するから準備会』では、過去のコミケで頒布された作品のアーカイブについて言及がありました(※)。個人的にも歴史をきちんと残すという意味でアーカイブは必要だと感じましたが……。

市川孝一 私もアーカイブが欲しいと思っている1人です(笑)。とはいえ、本だけでも300万冊以上あります

電子的なアーカイブをつくるにしても、ただスキャンするだけではなく、いつ頒布された誰の作品なのかといった書誌データも用意しないといけないですし、そもそも、見本誌をコミケット側で自由にスキャンできるものでもありません。

また、通常の本よりも同人誌は開きにくいものが大半ですし、CD-ROMや立体物はどうするのか、そもそものコストなど、考えないといけないことが多い。

※コミックマーケットで頒布された作品の見本誌は、会期終了後、米沢嘉博記念図書館で一定期間閲覧できる。閲覧期間が終了した見本誌は倉庫へ移動され、現在はビル1棟に第1回以降のすべての見本誌およそ300万冊が収められている。

──物理的な量も膨大であれば、保存方法も媒体に応じて考えないといけない。

市川孝一 さらにもっと昔には、カセットテープやビデオテープで頒布していたサークルさんもあったので、どうやってそれらにも対応していくのかも考える必要がある。

文字通り大変ではありますが、50周年も目前に迫っているので、これまでの節目の年と同様に、歴史をきちんと記録として残していくことは改めて大切だと思います。

市川孝一さん

──では最後に、直近の未来として2年後に迎えるコミケ50周年に向けて、現時点での展望を教えてください。

市川孝一 まずは、来場者数を現在の東京ビッグサイトの上限である1日当たり12万6000人に近づけること。これは50周年はもちろん、今後のコミケットを通じてという意味合いが強いです。

その上で、できることなら2019年以前のような状況に戻していきたい。当然、まだまだ時間はかかると思いますが、実現するためにもコミケットを継続していきます。

──周年という意味では、30周年や40周年時に開催された「コミケットスペシャル」(※)など、通常とは異なる特別なイベントも考えているんでしょうか?

市川孝一 選択肢のひとつだとは思いますが、正直、具体的なことはこれからです。あと2年かけて、何ができるのかを考えていこうと。

とはいえ、繰り返しになりますが、まずは次の「コミックマーケット102」をはじめ、今後のコミケットをきちんと開催する。若いスタッフにも「やりたいことがあれば言ってほしい」と伝えているので、通常のコミケットの規模を大きくしつつ、その中で50周年のアイデアを練っていこうと思っています。

※コミックマーケット準備会が主催する同人誌即売会で、夏コミ・冬コミとは別に、ほぼ5年ごとに様々な節目で春頃に開催されていた。リアル開催は、40周年のタイミングとなった2015年の「コミケットスペシャル6 ~OTAKUサミット2015~」が最後。
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