「ギャルにも自分の絵を届けたかった」
20年という長期間にわたる、膨大な仕事を一覧できる「中村佑介20周年展」。当然ながら、ここまで紹介したのはほんの一部だ。たとえば、中村佑介さん自らが率いるバンド・セイルズのデビューミニアルバム『Pink』(2011年)のジャケットには、 それまでにないほど明るい表情を見せ、胸元が大胆に開いている女性が登場。 会場の展示作品に添えられた武田砂鉄さんの解説によれば、中村佑介さんは何度か「ギャルの人たちにも自分の絵を届けたい」と言及していたらしく、彼のポップへの志向性が現れた作品のひとつのようだ。
自分が知っていた中村佑介さんの仕事。展覧会では、それらがほんの一部だったことに気づくことができる。その物量は、このレポートでも全貌を網羅することはできない。
前述した以外に、数々の人気作品とコラボレーションを展開。『ドラえもん』『こちら葛飾区亀有公園前派出所』『逆転裁判』『ロックマン』『ストリートファイター5』『ゴジラ』『ストレンジャー・シングス 未知の世界』と枚挙にいとまがない。
「展示に対する解説は一度やると頼っちゃう」
作品の数に圧倒されてしまう展示にもかかわらず、会場を見渡すとあることに気がつく。作品に対する解説が、一般的な展覧会に比べて圧倒的に少ないのだ。「もともと画集でも解説や説明的要素はあまり付けてなくて、あったとしても別紙にしています。解説を読んだことで深みが増すような作品性は、一度やると頼っちゃうから」 テキストでの説明を充実させることで、「一見さんお断り感が出ちゃう」とは本人談。それは中村佑介さんがイラストレーターとして活動していく上で、最初に決めた方針だ。
「作品を好きになったタイミングに関わらず劣等感を感じないというか、別に昔の作品を知らなくても、何に使われたイラストかわからなくても問題ない。そういった表現を、作家としても、絵としてもできないかと思っています」 もちろん「CDジャケットであれば、曲やアーティストを知っていることで、相乗効果が生まれるというのは前提にある」としながら、むやみにハードルを上げたくないという。
だからこそ展覧会では、解説などは極力省きつつ、来場者に対して不親切にならないよう、最低限の情報が添えられている。
「本当に全エネルギーをぶち込んでる」中村佑介の信念
テキストが少なくなった結果として、原画やアイデアスケッチを含め、展示された作品は500点以上。中村佑介さんは、その膨大な作品を前にして「僕は仕事がめちゃくちゃ丁寧なんですよ」と笑う。「(作品の量に対して)人生を犠牲にしてきたんですよ(笑)。正月でも描いてますから。人間関係が希薄ですし、本当に全エネルギーをぶち込んでますもん」 20年間、どんな作品に対しても等しく全てを注ぎ込んできた。中村佑介さんは、そう振り返ることができるイラストレーターだ。
「なんかこの絵雑だね、ギャラ安かったの? 売れてないアーティストの仕事だったんじゃないの? って言われることがないようにしたい。5000円の仕事も500万円の仕事も……やったことないですけど(笑)」 「最近はそうじゃない生き方もできるんじゃないかって思います」としながらも、今後もイラストに対する向き合い方は「体力持つかわからないけど」変わらないという。
イラストレーター・中村佑介が、全エネルギーを使って生み出した作品の数々を、現場で体感し、圧倒され、「お腹いっぱいになって」(本人談)帰ってほしい。
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イベント情報
中村佑介20周年展
- 会期
- 2022年11月9日(水)〜2023年1月9日(月・祝)
- ※月曜休館、但し12月26日、1月2日、9日は開館
- 時間
- 11:00〜19:00
- ※最終入館は閉館の30分前まで
- ※金曜日のみ11:00〜20:00
- 場所
- Gallery AaMo(ギャラリー アーモ)
- 料金
- 前売・当日一律
- ・通常チケット 一般1,200円/学生900円
- ・グッズ付きチケット<数量限定> 一般1,500円/学生1,200円
- ※小学生以下は入場無料(単独入場不可)
- ※再入場不可
- ※グッズ付きチケット特典は 20 周年記念デザインマルチケース&トレーディングカード No.0
- チケット発売
- イープラス
- Gallery AaMo チケットカウンター(会期中のみ)
- 主催
- 株式会社東京ドーム
- 企画制作
- 中村佑介展実行委員会
- 協力
- 株式会社飛鳥新社、大阪芸術大学、スペクトラム・マネージメント、キューンミュージック
- 監修
- 中村佑介
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