ハチロク世代女子映画プロデューサーの、カンヌ映画祭滞在記☆ vol.2

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ハチロク世代女子映画プロデューサーの、カンヌ映画祭滞在記☆ vol.2
ハチロク世代女子映画プロデューサーの、カンヌ映画祭滞在記☆ vol.2

カンヌ国際映画祭のメイン会場メインの会場「グラン テアトル リュミエール」

こんにちわ! QULTという会社で、映画プロデューサーをやっております、山中羽衣と申します。さて、私が映画プロデューサーとして初めて足を運んだカンヌ国際映画祭のあれこれを紹介するこのコラム。今回の中編ではカンヌ国際映画祭で印象の強かった出来事について、詳しく迫っていきたいと思います。前編をご覧になっていない方はぜひこちらから読んでみてください!

町全体で映画祭を応援

カンヌでは映画祭の時期には街のいたるところで、上映や盛り上げるような活動が行われています。

カンヌ国際映画祭公式サイトより

そんなカンヌの街はこんな感じ。 たとえば、街中に突然アコーディオンを弾いている方や、マネキンのように動かずにいるパフォーマーの方がいたりします。地元の人たちは、少し距離を置いて通り過ぎているものの、映画祭を目的に訪れた人は物珍しいのか、とても喜んで盛り上げに加わっていました。

まるでデモ行進を思わせるような、ゲリラ宣伝の様子

また、上映作品の宣伝のための催しやゲリライベントなども行われていたりします。ハロウィンの時のように仮装しながら、団体で行進して、テレビや雑誌の取材などを受けている人たちもいて、こんな宣伝方法があるのか、と驚きました。 夜には映画祭のオフィシャルのプログラムとして、「シネマ ドゥ ラプラージュ」という場所で毎日21:00から屋外上映会も行われていました。カンヌの砂浜での上映会ということもあり、みんな砂浜に座ってビールを飲みながら鑑賞していました。

また、どこへ行っても、街にいる人から話しかけられて映画についての話になり、とても温かい街でした。映画祭は映画を盛り上げると共に地域を盛り上げていくものなんだなぁと感じました。映画や文化に対する愛情を感じて、とてもうれしい気持ちになったものです。

映画製作者への講義

カンヌ国際映画祭では映画に関わっている人に向けて、様々な講義を行っています。
例えば、クラウドファウンディングについての講義。

このように会期中には様々な講義が行われていました

一部の企業などから制作資金を投資してもらう形ではなく、多くの個人から少額の資金調達を行いプロジェクトを進めることのできるクラウドファウンディングサービスが近年国境を越えて注目されています。日本では、CAMPFIREやmotion gallery、GREEN FUNDINGなどが有名ですが、海外ではKickstarterやindiegogoが有名。今回は、Kickstarterの方の講義を聴いてきました。現在、出版や音楽などもそうですが、映画でも制作資金をいかに集められるのかが大きな課題になっています。

そこで、不特定多数の人がインターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うクラウドファウンディングがここ数年で急速に注目されはじめました。実際に私も2012年に池田千尋監督特集上映を行った際に、前述のmotion galleryというクラウドファウンディングサービスを利用したことがあります。その際には、お陰様で無事に目標を達成させていただきました。資金提供以外にも、ご協力いただいた方から、温かい応援メッセージなどをいただいたりしまして、心強さを感じたものです。

映画業界は規模も大きく、なかなか歴史もあるために、長年かけて作り上げられてきたルールや仕組みが存在します。カンヌ映画祭という歴史のある場所でこの講義をやるということで、世界では新しい仕組みを取り入れようとする流れが出てきているのではないか、となんだかこれからの映画業界が楽しみになりました。作り手は本当に真剣になって話を聴いていて、作りたい人と応援したい人が結びついていくことで、もっと作品制作が活発になっていくといいな、なんてことを思いました。

カンヌのレッドカーペットについて

カンヌ国際映画祭ではたくさんのシアターがあるのですが、メインの会場「グラン テアトル リュミエール」は2300人が入る会場になっています。今回、日本からは三池崇史監督の『藁の楯』と、是枝裕和監督の『そして父になる』がノミネートされましたが、ノミネート作品はこのメイン会場で上映が行われ、毎回2300席が満員となります。

メイン会場の「グラン テアトル リュミエール」前はたくさんの人であふれていました

オフィシャルでのノミネート作品は、会期中に数回ずつこのメイン会場で上映されるのですが、なんといっても一番盛り上がるのは夜の上映。夜の部はソワレといって、男性はタキシードに革靴、女性はドレスアップといった形で正装することが義務付けられているのですが、上映作品の監督や出演俳優の方もソワレ姿で登場するので、その点でも見ものなのです。

というわけで、私も慣れないながらドレスアップしてみました!

立場は違えど同じ日本人の作品ということで、私は今回夜の部で三池さんが監督された『藁の楯』を観に行きました。 上映後、みんなが一斉に立ち上がり、映画を作った監督やキャストに向けて拍手を盛大に送ります。いろんな国から来た別々の文化を持った人たちが一つの映画を観て、一斉に拍手をする姿から、映画の強さを改めて感じました。また、同じ時間・空間を共有して観る事で生まれるそれぞれの思いや独特の熱気が伝わってくる様子になんだか胸がいっぱいになりました。

映画人なら誰でも憧れを持つであろうレッドカーペット。普段、自分とは関係のない遠い場所として認識していたのですが、言葉を越えて伝わるもの通じることがあるのだなあ、と改めて実感しました。今回はプロデューサーという立場で参加させていただいたのですが、日本の中で熱い思いを持って動いている監督やスタッフの方たちと共に、いつか自分の関わった映画を携えて、この場所を歩いてみたい、と思いました。

さて、いよいよ次回で最後となるレポート後編では、日本作品についての紹介と今回の渡航のまとめ、そして肝心の私が携わった作品についてご紹介したいと思います。

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山中羽衣

合同会社QULT 代表

1987年生まれ。大学在学中に映画監督の岩井俊二氏のもとで手伝うようになった事が映画との最初の関わり。2011年3月早稲田大学卒業。同じ年の夏、音楽家まつきあゆむ出演、池田千尋監督の短編映画「重なり連なる」を初プロデュ―ス。井上真行監督「夢を見た」が最新作。形にする人と共に作っていきたい、という想いから2012年5月、合同会社QULT設立。絶賛、英語勉強中。

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