ウルトラマンは、我が国を代表する特撮ヒーローで、今なお不動の人気を誇っている。
2022年にも、庵野秀明と樋口真嗣のコンビが制作した、『シン・ウルトラマン』が興行収入40億円を突破するなど、大ヒットを記録している。
さて、ヒーローの行動原理と言えば、正義感で戦うものである。米国のスーパーマンもそうであり、バットマンも犯罪者への復讐心こそあるが、基本は正義のために動く。
それでは、ウルトラマンはどうだろうか? ウルトラマンが戦うのは正義のためなのだろうか? そう思って、あらためてウルトラマンを拝見してみると、ウルトラマンは正義というよりは、母性原理的な慈愛の心で戦っていたように見えてくるのである。
ウルトラマンという呼称は、英語的にどう考えても男性につけられるものだが、そもそも本人が名乗ったものではない。
ウルトラマンという名前は、科学特捜隊のエースパイロット・ハヤタによって名づけられたものである。そうなると、実はウルトラマンには他に名前があるはずである。
その背景からか『シン・ウルトラマン』では、「リピア」という固有名称がつけられていた。
このリピアというのは花の名前で、花言葉だと「絆」や「誠実」、「私を理解してください」という意味合いがあり、その意味合いから考えると、男性的というより、女性的な名前に思えてくる。
そもそもウルトラマンワールドでは、多数の異星人が地球に来訪してくるが、それらすべてが男性と決まっているわけではない。中には、男性と思ってたら、実は女性であったというパターンもあった。
ギギとは、異星人ではなく、別の次元から来た異次元人と呼ばれる集団で、地球を侵略しようとしていたが、中には穏健派も存在しており、その中の一人、ギギドクターと呼ばれる者は自部族たちの侵略行為に反対し、主人公のムサシたちに協力してくれていた。
物語の終盤でギギドクターの性別が女性であったことがわかる。
ギギは、人間からすると外観では性別がわからないうえに、彼女は、男性の声で再生される翻訳機を仲介して会話していたために、地球人からは男だと思われていたのだ。
SF的な興味深い仕掛けだが、これは、ウルトラマンワールドに登場する宇宙人たちも、男性ではなく、女性もいた可能性を示唆しているエピソードである。
そもそも、異星人は地球と生態系が異なる世界の住人だから、男性的な声や姿をした女性がいても全くおかしくはない。
もっとも、ウルトラマンと合体していたハヤタは、第一話でウルトラマンのことを「彼」と呼んでいることから、ウルトラマンを男性と思っているようである。
ウルトラマンと心身を合体していているハヤタが、性別を認識できないのは少々おかしいので、ウルトラマンが男性である可能性は高いが、ハヤタはウルトラマンの生態をよく知らない可能性もある。自分自身と一体化したということもあり、男性と勘違いしていた可能性もある。
また、ウルトラマン自身が、地球人ほど性別にこだわりがないということも考えられるので、ハヤタの勘違いのままにさせていた可能性もある。
セブンが、がっしりとした体格で、鎧のようなものを身に着けているのに対し、ウルトラマンは細身で、柔和な線を感じさせる。防具のようなものも身に着けていない。極端な力強さを感じさせないデザインである。
そのため、ウルトラマンのスーツアクターは、スマートな体格だった古谷敏が担当したことで有名である。
『ウルトラマン』は、シリーズ後半だと胸板の部分が厚みのあるデザインになっているが、『シン・ウルトラマン』では、序盤のウルトラマンを意識しているのか、とてもスマートなデザインとなっていた。
顔もセブンのほうがいかつく、ウルトラマンはうりざね顔で、穏やかそうな顔に仕上がっている。
ウルトラマンのデザインを手がけた成田亨は、ウルトラマンの顔を、菩薩の表情、すなわちアルカイックスマイルをイメージしてデザインしている。 菩薩は女性というわけではないが、その慈愛に満ちた表情から、母性的な女性のことを、菩薩に喩えることがある。そのため、ウルトラマンの表情は、どことなく母性的な、慈愛に満ちた表情を浮かべている。
いかにも男性的でマッチョな雰囲気を持つ米国のヒーロー・スーパーマンとは対照的である。
『シン・ウルトラマン』も、かなりスマートなデザインで、どことなく中性的な感じの体つきに見える。ウルトラマンの特徴だったカラータイマーすらつけていない。カラータイマーは、成田亨が嫌っていたことで有名で、ウルトラマンのデザインは、無駄なものを削ぎ落した体つきにしたかったとされている。
あくまでも地球人視点で見ているので、この時点では、ウルトラマンの性別は、はっきりさせることはできない。
もっとも、ウルトラマンが人間を超越した存在と仮定するなら、むしろ性別という概念すらない存在、すなわち中性的な生命体であるとも考えられる。
2022年にも、庵野秀明と樋口真嗣のコンビが制作した、『シン・ウルトラマン』が興行収入40億円を突破するなど、大ヒットを記録している。
さて、ヒーローの行動原理と言えば、正義感で戦うものである。米国のスーパーマンもそうであり、バットマンも犯罪者への復讐心こそあるが、基本は正義のために動く。
それでは、ウルトラマンはどうだろうか? ウルトラマンが戦うのは正義のためなのだろうか? そう思って、あらためてウルトラマンを拝見してみると、ウルトラマンは正義というよりは、母性原理的な慈愛の心で戦っていたように見えてくるのである。
ウルトラマンという名前
まず、ウルトラマンの性別は何なのかを考察してみよう。ウルトラマンという呼称は、英語的にどう考えても男性につけられるものだが、そもそも本人が名乗ったものではない。
ウルトラマンという名前は、科学特捜隊のエースパイロット・ハヤタによって名づけられたものである。そうなると、実はウルトラマンには他に名前があるはずである。
その背景からか『シン・ウルトラマン』では、「リピア」という固有名称がつけられていた。
このリピアというのは花の名前で、花言葉だと「絆」や「誠実」、「私を理解してください」という意味合いがあり、その意味合いから考えると、男性的というより、女性的な名前に思えてくる。
そもそもウルトラマンワールドでは、多数の異星人が地球に来訪してくるが、それらすべてが男性と決まっているわけではない。中には、男性と思ってたら、実は女性であったというパターンもあった。
『ウルトラマンコスモス』ギギが示唆した、宇宙人の性別の可能性
例えば、『ウルトラマンコスモス』に登場するギギという怪人がいる。ギギとは、異星人ではなく、別の次元から来た異次元人と呼ばれる集団で、地球を侵略しようとしていたが、中には穏健派も存在しており、その中の一人、ギギドクターと呼ばれる者は自部族たちの侵略行為に反対し、主人公のムサシたちに協力してくれていた。
物語の終盤でギギドクターの性別が女性であったことがわかる。
ギギは、人間からすると外観では性別がわからないうえに、彼女は、男性の声で再生される翻訳機を仲介して会話していたために、地球人からは男だと思われていたのだ。
SF的な興味深い仕掛けだが、これは、ウルトラマンワールドに登場する宇宙人たちも、男性ではなく、女性もいた可能性を示唆しているエピソードである。
そもそも、異星人は地球と生態系が異なる世界の住人だから、男性的な声や姿をした女性がいても全くおかしくはない。
もっとも、ウルトラマンと合体していたハヤタは、第一話でウルトラマンのことを「彼」と呼んでいることから、ウルトラマンを男性と思っているようである。
ウルトラマンと心身を合体していているハヤタが、性別を認識できないのは少々おかしいので、ウルトラマンが男性である可能性は高いが、ハヤタはウルトラマンの生態をよく知らない可能性もある。自分自身と一体化したということもあり、男性と勘違いしていた可能性もある。
また、ウルトラマン自身が、地球人ほど性別にこだわりがないということも考えられるので、ハヤタの勘違いのままにさせていた可能性もある。
“ヒーロー”的ではない中性的なウルトラマンのビジュアル
初代ウルトラマンの見た目は、あまり男性的ではない。後に出てくるウルトラセブンと比べるとよくわかる。そのため、ウルトラマンのスーツアクターは、スマートな体格だった古谷敏が担当したことで有名である。
『ウルトラマン』は、シリーズ後半だと胸板の部分が厚みのあるデザインになっているが、『シン・ウルトラマン』では、序盤のウルトラマンを意識しているのか、とてもスマートなデザインとなっていた。
顔もセブンのほうがいかつく、ウルトラマンはうりざね顔で、穏やかそうな顔に仕上がっている。
ウルトラマンのデザインを手がけた成田亨は、ウルトラマンの顔を、菩薩の表情、すなわちアルカイックスマイルをイメージしてデザインしている。 菩薩は女性というわけではないが、その慈愛に満ちた表情から、母性的な女性のことを、菩薩に喩えることがある。そのため、ウルトラマンの表情は、どことなく母性的な、慈愛に満ちた表情を浮かべている。
いかにも男性的でマッチョな雰囲気を持つ米国のヒーロー・スーパーマンとは対照的である。
『シン・ウルトラマン』も、かなりスマートなデザインで、どことなく中性的な感じの体つきに見える。ウルトラマンの特徴だったカラータイマーすらつけていない。カラータイマーは、成田亨が嫌っていたことで有名で、ウルトラマンのデザインは、無駄なものを削ぎ落した体つきにしたかったとされている。
あくまでも地球人視点で見ているので、この時点では、ウルトラマンの性別は、はっきりさせることはできない。
もっとも、ウルトラマンが人間を超越した存在と仮定するなら、むしろ性別という概念すらない存在、すなわち中性的な生命体であるとも考えられる。
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蔵無
漫画考察者。
特撮、文芸書も大好き。
ブログ:http://blog.livedoor.jp/zome/
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