ウルトラマンは母性原理で戦っていた? 心優しきヒーローと命をめぐる物語

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体内に生命を宿す戦士──ハヤタの命について

ウルトラマンの最大の特徴と言えば、科特隊の隊員ハヤタと一体となっている点である。

一般的には、ウルトラマンはハヤタにのりうつっていると考えるものがだが、ここで一つの疑問が生まれてくる。

最終回のエピソードを見てみると、ウルトラマンがハヤタの体から分離してしまうと、ハヤタは今までウルトラマンとして活動していた時の記憶を無くしてしまうのだ。

ハヤタとウルトラマンは、意識を共有していたのなら、記憶が残っていてもいいずなのに、ハヤタの記憶は、第一話のウルトラマンに救出される前まで戻ってしまっている。

ハヤタは、ウルトラマンと合体していた時、ウルトラマンに意識を乗っ取られていたのだろうか?

ひとつのアイデアであるが、最終回の際、ハヤタは、ウルトラマンの力によって蘇ったのではなく、生まれ変わったのだと考えてみるのはどうだろうか。

最終回で判明するが、ハヤタは大変な危篤状態であったらしく、ウルトラマンと分離してしまったら、即死してしまうような状態であったのだ。

もともと、ウルトラマンは、最初のエピソードで、ハヤタを事故に巻き込んでしまっている。それを詫びるとともに、代わりに自分の命を提供することで、共に地球のために戦うと申し出たのだ。

つまり、ハヤタはウルトラマンと命をつなげて生きながらえているような状態であり、へその緒でつながっている赤ん坊のようであったという見方ができる。

そのことを予期していたからなのか、ゾフィーは命を二つ持ってくる。そして、ゾフィーから与えられた命でよみがえったハヤタに記憶がなかった。

胎児にも母体の中にいる際の記憶のようなものがあると言われているが、その記憶は、生まれて成長するとぼんやりと、忘れ去られてしまう。

つまり、ハヤタはウルトラマンと分離し、もとの人間に生まれ変わったのかもしれない。ウルトラマンという母体にいた胎児だったころの記憶、すなわち、ウルトラマンとつながっていた時期の記憶を忘れてしまったのだ。

命のゆりかごとなる『ウルトラマン』とシャーマニズム

なぜ、ウルトラマンは、自分の命をつなげたり、人間を生まれ変わらせることがきるのだろうか?

それは、ウルトラマンが、命もしくは「魂」のゆりかごとなる力を持っているからである。

ウルトラマンが最初に現れたとき、赤い球体のような姿をしていたことを思い出してほしい。

第一話でハヤタ隊員は、ジェット機でパトロール中に、この赤い球体となっていたウルトラマンと衝突してしまい、死地を彷徨う。その際、赤い球体となっていたウルトラマンは、ハヤタ隊員をゆっくりと引き込んでいったのだ。

この時、ウルトラマンは、テレパシーのような力で、ハヤタの精神に直接語りかける。その様は、まるで霊的な存在と交信するシャーマンのようである。シャーマンとは、霊的なものと交信をはかるだけでなく、現世と霊界の境界者でもある。

ハヤタは、光の国の住人と交信ができるシャーマンでもあり、現世と霊界、すなわち、生と死の境界にいる者でもあったのだ。

生と死の境界とは一体どこか? それは、母体、子宮である。

古の時代、洞窟や墓を母の胎になぞらえることがあった。暗い洞穴のような場所は、子宮を象徴しており、古代のシャーマンや巫女は、洞穴などにおこもりをして、神への祈りをささげていた。

こもるとは元々、身ごもるという意味も含まれており、シャーマンは神を受胎し、そして神そのものとなるということである。

沖縄などにある亀甲墓という墓は、母の胎を模しており、死んだ者の魂が、再び、母の体内に戻って復活するという考えに基づいている。

ウルトラマンの生みの親であるシナリオライターの金城哲夫は、沖縄出身だ。沖縄にはユタやノロといったシャーマンが存在する。

ユタやノロは、女性がなるものだが、これは上記の通り、産みの力を持つ女性の方が、魂と交信するシャーマンに向いていると言う説と、霊界の住人が、男性であるから、女性の方がいいという考え方がある。

これに準えると、ハヤタは、男性だからシャーマンではないかも? という考え方になってしまうが、もしウルトラマンが女性と仮定するのであるならば、むしろ、本作においてシャーマンとしてふさわしいのは、男性であるハヤタだともいえる。

ウルトラマンが女性、すなわち女神的な存在であるならば、ウルトラマンの創り出したあの赤い球体は、疑似的な洞穴、もしくは子宮的なものだと考えることも可能だ。

ウルトラマンが中性的な存在、もしくは、性別を超越した存在であるとしたら、男性であるハヤタのために、女性化したということも考えられる。

前述したように、古代において、シャーマンが女性であるのは、神霊的な存在と交わるためである。そして、霊的な存在の子を受胎するためであるが、もし、霊的な存在が女性、すなわち女神であるなら、男性のシャーマンは、女神の子供となって一体化するものではないのだろうか。

最終回では、ウルトラマンもゼットンにやられた後、救援に駆け付けたゾフィーの創り出した赤い球体に吸収され、ウルトラマンはハヤタとともに蘇ることができた。

あの赤い球体は、命の回帰をおこなう魂のゆりかごのようなものであったのだ。

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