Diosインタビュー 「紙飛行機」に載せた無意味な祈りとフェイクへの挑戦

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Diosインタビュー 「紙飛行機」に載せた無意味な祈りとフェイクへの挑戦
Diosインタビュー 「紙飛行機」に載せた無意味な祈りとフェイクへの挑戦

Diosインタビュー

元・ぼくのりりっくのぼうよみたなかさん、盟友でありコンポーザーのササノマリイさん、イギリスのギター雑誌『Total Guitar』の読者が選ぶ「史上最高のギタリスト100選」で8位にランクインしたIchika Nitoさんによって結成されたバンド・Dios

2021年3月31日に「逃避行」でメジャーデビューしてから活動1周年を迎え、2022年6月29日には1st アルバム『CASTLE』が発売された。

その『CASTLE』にも収録されている「紙飛行機」は、Diosとして初となるラップソング。
Dios - 紙飛行機 (Dios - Paper Plane / Official Audio Video)
ぼくのりりっくのぼうよみ時代はラッパーとしての印象が強かったたなかさんだが、「逃避行」「鬼よ」「裏切りについて」「劇場」「ダークルーム」と、Diosの楽曲ではメロディアスなボーカルに専念。以前のインタビューでたなかさんは「Diosはラップしなくてもいいかなと思っていた」とも語っていた(外部リンク)。

また、「紙飛行機」のトラックは既存のDiosの楽曲とは一線を画す、アグレッシブなサウンドに仕上がっている。

今回、「紙飛行機」の誕生裏話について、Diosの3人にインタビューを敢行。その中で、結成当時と今の心境の変化、そして「フェイクにしかなり得ない」と語るポップスへ向かう覚悟が見えてきた。

文:EN Mami 取材・編集:都築陵佑 写真:雨宮透貴

目次

「紙飛行機」はラップ練習用のバトルビートから生まれた

Dios/左からササノマリイさん、Ichika Nitoさん、たなかさん

──先日リリースされた「紙飛行機」、めちゃくちゃ格好よかったです……! Diosの中で最もアグレッシブというか、オラオラしていて。この楽曲はどのような経緯でつくられたのでしょうか?

ササノマリイ 実は、元々Diosの作品としてつくったものではなかったんです。

たなかがYouTubeにラップの練習というか、ちょっとした動画をあげることが多くて。そのために用意した、数十秒のバトルビートだったんですよ。
ラップの練習した
ササノマリイ だから最初は、単純に自分の中での格好いいバトルビートをつくった形でした。サンプリング素材を切り貼りするくらいの。

それを聴いてもらったら「これDiosでやろうよ!」となって。元々コード進行はなかったんですけど、Ichikaがギターのバッキングを乗っけてくれて。そのギターの展開に合わせてトラック側も弄っていったというのが最初ですね。

Ichika Nito(以下、Ichika) ササマリ(=ササノマリイ)がラップの練習用につくった音源って他にもいろいろあるんですが、これを聴いたときに、「多分これコード乗っけたらいい感じだよね」と思ってアレンジしていったんです。

たなかのラップ詞も元々のビートからほとんど変わってないし。

──たなかさんは、「紙飛行機」のラップをどのように紡がれたんでしょうか?

たなか リリックを書くときは基本的に全部そうなんですけれど、音から弾みで出てきた単語で自分の世界を広げていくというか。

例えば「紙飛行機」だと、まず一行目の“Error”という言葉が出てきて、それに付随して「じゃあこうかな?こうかな?」と、連想ゲームみたいに繋がっていく感じでつくってます。

たなかさん

──たなかさんのラップは、フロウとと歌のメロディーがシームレスに繋がっているのが特徴です。「どうやって組み立てているんだろう?」と思っていました。

たなか 育ち的にそうなってしまったということが強いのかな。元々、日本のR&Bテイストの音楽で育っているんですよ。UAさんとかMONDO GROSSOとかEGO-WRAPPIN'みたいな系統の歌唱に馴染みがあって。

ただ、表現を始めた時には「ラップをやるぞ!」と思っていたので、そこでR&Bとラップの合流みたいなものが生まれたんだと思います。で、好き勝手にやっていくうちにラップと歌のキメラみたいなのができた。だから自分の中ではラップとメロディーの区別はそんなにないんですよね。

──ササノさんやIchikaさんは「紙飛行機」でたなかさんのラップを聴いた時、どんな印象を受けましたか?

ササノマリイ いつも通り……(笑)。ほんとただ「たなか」っていうか。シンガーソングライターの観点からすれば、思いつかないのは間違い無いですね。

Ichika Nito 自分はラップをリズムとして捉えていて、それがよりカッコよくなるようにギターを加えている感覚なんですよね。

ヒップホップ的だったトラックにメタル寄りの要素を足してみるとか、曲の可能性をいろんな方向に広げようとする。

その要素として目立ったのが歌のリズムだったので、じゃあここを強くしようかなと。狙い通りになりました。

「無関心」だから「想定外」 化学反応を楽しむ制作スタイル

──パーカッシブに掻き鳴らされた「紙飛行機」のギターバッキングを、Ichikaさんはどのように考えられたのでしょうか?

Ichika Nito 「紙飛行機」は自分の好きなメタルっぽく、スラップ奏法で全部弾いてみようと思いました。

Ichika Nitoさん

Ichika Nito でも、音作りに関してはメタルライクだけどDiosのサウンドとかけ離れないように試行錯誤しました。

オルタナティブ・ロック系というか、テレキャスターっぽい感じのチャキチャキした、透明感のある音のピックアップにしたり、ダブリング(同じフレーズを2回録音して重ねること)したギターをLRにパンニングして壁をつくったりせずに、1本でステレオ処理したり。
【#shorts】Ichika Gt. - 「紙飛行機」 ("Paper Plane") instrumental01
──確かに。Diosでは珍しいディストーションサウンドでしたね。

Ichika Nito バッキングのメロディも一音目にルート音(コードの基準音)を置くことを心がけて……元々ササマリのつくったトラックにはベースがほぼなかったんですよ。あるにはあるけれどルート音みたいなのはなくて、そこに無理やりギターでルート音を足していったんです。

ギターではあるけれどベースの役割もする、両方のパートを担えるようなものをつくりたかったんですよね。サビも最初はサビっぽくなかったし。

たなか なかったなかった!

Ichika Nito もともとサビなんてなかったけれど、“展望台”から始まるフレーズがカッコいいし、ここから聴くと「サビっぽい」と思ったから、そこで区切ってルート音を足してみたんです。無理やり魔改造したみたいな。

──ドライブがかかったギターサウンドの「紙飛行機」は、昨今のラップミュージック/ヒップホップシーンでは珍しいと思います。サウンドメイクの観点からササノさんが意識したことはありますか?

ササノマリイ 単純に僕はカッコいいもの、つまりクオリティの高いものをつくれたらいいなと。

良くも悪くも、そこまで現在の流行りっていうものにあんまり興味はなくて。自分の好きなタイプの音楽、自分がいいと思えているものを信頼を持ってやっているんです。正直どうやったってカッコよくなるしかないんですよ、この3人だったら

ササノマリイさん

Ichika Nito たなかがアイデアを出した中盤のジャズパートは良かったよね。あれがあるから一本調子にならずにすむ。

たなか ループものだから、単調に聴こえちゃうかもしれないからね。

Ichika Nito あとは、アレンジしてトラックに歌もギターも乗っけた上で、「よりサビをサビとして聴かせるにはどうしたらいいか」みたいな試行錯誤はありました。

サビ前のリボルバーのワンショット音を効果的にカッコよく聴こえさせたりとか、ギターのフィルインやキメをオクターブ上と下とを重ねてみたいな……3オクターブくらい使ったよね?

ササノマリイ うん。1サビとして扱われている“展望台の上”からはじまる部分も、トラックとしてはBメロの展開に乗っかっていて。同じサビでも2サビの”サビらしい”展開とはちょっと差別化している。意識して聴いてないとわからないと思うけれど。

だから同じメロディーだけど、BメロないしはAダッシュメロとして聴こえる可能性もあるよね。

Ichika Nito そうだね。結構無理やり変えちゃったから。

たなか なんか変な曲だよね〜。「紙飛行機」のサビっぽい部分のメロディは、自分の中でも変なことをやったつもりではあるんだよね。違和感のある音の繋ぎ方というか。

──3人それぞれが自分のスキルを「紙飛行機」にぶつけたことで、ある種の化学反応が生まれているような気がします。

たなか 自分がつくったものをメンバーに送るとき、過度に言語化しないということは心掛けていて。作品をボールで例えると、自分がボールを持っている間は自己中にやりたいことをやるし、ボールを投げた後は無関心なんです。

ササノマリイ 互いのすり合わせがないことで想定外の形になるから面白い。「こういう風にして」みたいなものがあると、今の「紙飛行機」みたいにはならなかったと思うから。

「後はメンバーがどうするか楽しみだ」くらいの、ある意味で第三者目線で見ているからできたんじゃないかなとは思います。

Ichika Nito みんなそうだよね。「自分はこれをつくりました。あなたはそれに対してどう思いますか?」って。

たなか ボールをどんどんパスし合う感じでつくってます。

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