SIRUPインタビュー「音楽でやりたいことは、嘘をついてできない」

自分を愛することと学ぶことはセット

──学ぶためには、しんどいことも当然ありますからね。

SIRUP そうですね。僕が感銘を受けた言葉に“Love & Educate yourself”という言葉があります。自分を愛することと学ぶことがセットになっている。

学び続けるのはとてもカロリーがいるし、簡単じゃないですよね。だからこそ、セルフケアが大事になってくる。疲れた時には無理をしないのも大事だと思います。もしそれで自分がダメになっちゃうなら、単純に持続可能じゃないし。 ──疲れたときやセルフケアが必要だと思った時、SIRUPさんが心掛けることはありますか?

SIRUP 忙しすぎると、絵を描くとか運動するとか、そういうセルフケアもなかなかできなくなっちゃうんですよね。無理やり何もしない方法もあるんですけれど、目の前にタスクが溜まっていると、休みきれなくてしんどくなっちゃう。

そういう中で最近よかったのは、北海道の芸森スタジオというところに3日ほど滞在したことでしたね。大自然の中、コンビニもないところで仲間と軽くセッションで曲をつくって。そこで過ごすのはかなりエネルギーの充電になりました。

みんながすぐにできることではないと思いますが、まったく違う環境に行くのは自分にとってデカかったです。その前にも岡山と北九州でライブしたんですけれど、ライブの前後にも街を歩いたり自然に触れたりする時間があって、めちゃくちゃよかった。 ──SIRUPさんは、安らぐ、リラックスするという意味の「CHILL OUT」というものを、どんな風にとらえていますか?

SIRUP いろんな認識があるんですけど、自分としてはCHILL OUTというのはセルフケアの時間だと認識しています。もっと言うと、仲間と一緒に過ごす時間というイメージもかなりありますね。

頑張って「遊ぼうぜ!」っていうんじゃなく、ただリラックスして一緒に過ごす。予定もないし、やりたくなければ何もしなくていいし、行きたい人は行けば? みたいな空気感。それがCHILL OUTだと思います。そういう風に人とも付き合えたらいいなって思うんですよね。

同調圧力とまで言わなくても、みんなで一緒に行動しないといけないという考え方が日本にはまだまだあるように感じて。でも、自分のペースで過ごすほうが楽な人もいるし、それぞれが自分の好きなように居られる、お互いに尊重しあえる仲間と過ごす時間が僕にとってのCHILL OUTです。

実際、僕がこの2、3年シリアスになっていた時、周囲の仲間が過ごしやすい空気で接してくれたのが結局サポートになったし救われました。

──セルフケアと言うと、ひとりでリラックスする時間をイメージしがちですが、仲間と過ごす時間も大事だということですね。

SIRUP ひとりでゆったりCHILL OUTする時間も大事なんですけど、今は仲間と何も考えないで一緒の時間を共有して過ごすのがいいなあと思うんですね。

それはやっぱりコロナがあったせいだと思います。飲みにいくこともできなかったし、誰かと過ごすことさえできませんでした。だから、その反動があるのかもしれないです。

時代は、変化している。たとえ歩みが遅くとも

──世の中的にも、無理をせず休むこと、リラックスする時間を持つことが大事だと言われるようになってきていると思います。「CHILL」という言葉もそういう風潮の中で広まっている印象があります。そういう流れに対して、SIRUPさんはどんな風に考えていますか?

SIRUP 社会的風潮としては、セルフケアが大事だと言われたり、お互いに尊重しあうことが大事だという考え方が徐々に出てきていたりはしますよね。それは、コロナで自分の人生を見つめ直す方が増えたのもあると思います。そういうことがこの1、2年であったから、みんなセルフケアに敏感になっているところもあります。

ただ、そういう考え方は世の中的には広がっていると思うんですけれど、実際に自分のファンアプリ(SIRUPの公式アプリ『channel SIRUP』 )の中でメンタルヘルスについてのコーナーをやったり、そこでファンからの質問に答えたりしていると、いまだに一般的な仕事の中でメンタルヘルスが日常的になっているわけではないなというイメージがありますね。

──そうなんですね。 SIRUP 僕、日本は人権の意識がまだまだ低いと思っているんです。自分としては、アクティビストの方をフォローしたり、一緒に仕事をさせていただいたりすることが増えてきた中で、いろいろ学ばせてもらって、そう思うようになってますね。きっとこの先、もっと人権にフォーカスされてくるようになるだろうけれど、まだまだ時間がかかると思ってて。

──昭和の時代には“滅私奉公”みたいな価値観がある種の美学のように語られていた頃があって、そこから少しずつ変わってきたけれど、まだまだ過渡期が続いているという感じなんだと思います。ひょっとしたら、20年、30年後から今を振り返ったら「あの頃は野蛮な時代だったね」と言われるかもしれないですね。

SIRUP そうですね。20、30年かかると僕も思っています。でも、少しずつ変わってきているとは思いますね。そもそも、僕がこういう話をできていること自体が、だいぶ変化だし

それに、今、僕がしゃべっているようなことって、ほかの諸外国で何十年も前に、大量の論文が出されているようなことなんです。全然特別なことじゃないし、自分も、遅れて学んでいる感じですね。

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