独学で極めるハサミづくり
独特のスタイルで生み出されるハサミ。それらはどのように制作されているのだろうか。今春発売予定という「ハートの女王のハサミ」を例に解説してもらった。「『ハートの女王のハサミ』の場合、2021年4月から12月までの8ヶ月間、設計・試作・実用テストを繰り返しながら、3DCGソフトで元となるデザインを設計しました。次にそれを3Dプリンターで出力し、シルバー(SV950)で鋳造・研磨していきます」
刃には「SUS440C」という刃物向けのステンレスを使用。それをレーダーカット技術などで切断し、削り出し加工を手作業で行っていく。「ジュエリー用の金属より刃の金属の方が遥かに硬いため、適している工具を見つけ出す知識、それを使いこなす技術が必要だった」という。 その後、1050℃の高音で刃を熱すると硬度が上がり、切れ味が付くようになる。そこからさらに刃と刃が理想的に擦れ合うよう(反り、ひねりなどと呼ばれる)研磨する。
「焼き入れをした硬い刃は曲げても変形せず、無理に曲げると石のように割れてしまいます。独学だったので最初は割れたり粉々になったり苦労しましたが、美容鋏の研師の方にハサミを研いでもらい、その工程を撮影して何度も見返しました。ほかにもテレビで同じようなシーンが流れたら、即座に録画してコマ送りしたり一時停止したり、あとはネットの動画を見ながら学んでいきました」
最後は持ち手と刃を接合して完成。デザイン決定後の作業だけでも40時間を要している。
「怖いぐらい切れないといけない」
「こだわりとして、切れ味は譲れないところです。装飾性は個人の観点ですが、切れ味は絶対的に良い悪いがあるので妥協せずにつくっています」ハサミを表現媒体する理由として「ハサミの精神イメージが好きだから」と話す佐藤さん。「その恩恵を最大化するには道具として気持ちいいぐらい、怖いぐらい切れないといけないと思います。でなければ普通に彫刻でいいので」とこだわりを明かしてくれた。
最後に、ハサミをつくる理由について聞くと、はじめは「金属が小さい頃から好きだった」「しっくりきた」「誰もやっていなかった」という理由しかなかったが、最新作「ハートの女王のハサミ」を制作したことで、動機がより明確になった。 「ハサミという概念が持つ精神的なイメージと、その発生源である人間の危険な感情に美しさを感じ、それを昇華したいのだと思いました」
本人にそこまで感じさせただけあって「ハートの女王のハサミ」への思い入れは相当なもの。「ハサミのイメージとハートの女王のイメージが上手くハマっていて、実用性と強度とデザイン(装飾性)の3つが高い水準でまとまっており、過去に積み重ねてきたものの一つの到達点と言えるほどの手ごたえがあります」と力を込めた。
【画像】世にも珍しいハサミ作家の作品(25枚)✂世にも珍しいハサミ作家
— ハサミ作家✂佐藤聖也 (@f9u6yq) January 12, 2022
#フォロワー10000以下の一次創作作家発掘フェス pic.twitter.com/rnJ1y3n3yx
古今東西、人類を魅了し続けてきた「金属」
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