「ネコのお供は考えさせられた」狩りのプロも唸るモンハンライズの世界

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人間がハンマーで倒せるのは人間だけ

──続いて、武器についてお聞きしたいのですが、『モンハンライズ』にはおおまかに14種類の武器があります。気になるものはありますか?

『モンスターハンターライズ』で用意されている主な武器

池谷 もっとも現実の狩りで使わないなと思ったものは「ハンマー」ですね。

人間がハンマーを使って倒せる相手って、人間だけなんですよ

たしかにモンスターをハンマーで倒すイメージは湧かなかったり…

池谷 盾なんかも、モンスターではなくて「人間と人間が戦うための武器」ですよね。そういう狩り以外の対人間の武器が混ぜてあるのが個人的には興味深いです。

──言われるまで気がつきませんでしたが、モンハンに限らずアクションゲームでは「対・動物」と「対・人間」の武器が区別なく使われているんですね。

池谷 面白いですよね。

使いやすい武器でいくと、ボウガンは実際の狩りでも強力な武器になると思います。あとモンハンは4人でプレイすることが多いゲームだと思うのですが、チームの誰か1人でも、リーチが長いヤリ系の武器を持つといいですね。

──「笛」といった武器もあるのですが、これは実際に元になった武器があるのでしょうか?

池谷 笛を使った狩りはあります。たとえばこれが実際の野生のニワトリを捕まえるための笛ですね。

野鶏用笛/池谷さん提供

池谷 野生のニワトリの場合、他のオスの声がすると「自分のナワバリを邪魔しにきた」と思ってオスが寄ってくるんです。だからオスの声がする笛を吹いて、ニワトリをおびき寄せるんです。

モンハンの場合も、おそらくそれぞれのモンスターにナワバリがあると思うんですよ。そういうときに同じような笛を使うのは有効かもしれないですね。

──実際に笛も武器として存在しているんですね。モンハンでは服装も自由に選べるのですが、おすすめの「狩りの服」などはありますか?

池谷 うーん……アフリカなどの狩りだと、最初は現地の方も服を着ているんですよ。

でも、狩りに夢中になるとどんどん服を脱ぐんですよね(笑)

──(笑)。ちなみになぜですか?

池谷 やっぱり真剣勝負ですし、とにかく動物に近づいて、動物と同じように走るので、暑くて服なんか着てられないってなるんですよ。だから特におすすめの服はないですね……。

──逆に避けた方がいい服などはありますか?

池谷 日本の場合、山の中であまり目立たない服を選ぶことが多いですね。

ただチームで害獣駆除をする人は、間違えて人間を撃たないように目立つ服を着ることもあります。

──方法や対象にあわせていろいろな狩りの方法があるんですね。

モンハンが現実なら…オトモのトレーナーに肉、集まる

──最後に、ゲームのストーリーや設定についてもお聞きしたいです。モンハンではハンターが村でかなりちやほやされていて「応援しています!」「あなたのおかげで村で平和に暮らせます!」といった言葉をよくかけられるのですが、現実のハンターもこういった扱いを受けるのでしょうか?

池谷 これは面白い視点ですね。現実ではハンターが「ちやほやされる」「ヒーローのように扱われる」といったことはないんです

──そうなんですね!

池谷 「ありがとう」と感謝されることはありますが、ハンター本人はすごく謙虚なんですよ。大きなゾウを捕まえたとしても、村にはすごく控えめな感じで戻ります。

──「大漁!」みたいな感じで胸を張って帰るのかと思っていたのでかなり意外です。

池谷 狩りの場合、その日は大物を捕まえられたとしても、次の日は病気やケガをするかもしれないですよね。

明日は他の人に助けてもらうことになるかもしれないので、今日たくさん狩ったからといって威張ったりはしないんです

現在のような「お金持ちがえらい」「たくさん狩った人がえらい」という考えは、農業が始まって、住んでいる土地によって人間どうしの格差が生まれてからのものです。

それまでは「自分がお金持ちかどうか」よりも「みんながちゃんと食べられるか」の方が大事でした。狩猟時代は、今(農耕時代)に比べて平等な社会だったんですね。

ハンターが思いっきり喜べるのはゲームのいいところ

──自分が捕まえたものでも、みんなで分けて平等に食べていたんですね。

池谷 ただ、捕まえた肉を最初にもらえる存在はいます。モンハンの場合は、オトモガルクやオトモアイルーを管理している人に、肉が集まると思います

肉が集まるオトモの管理人

──ハンター本人ではないんですか?!

池谷 「オトモがいるから狩りができる」という場合、オトモを管理している方がかなりの肉を持っていくと思います。

地域によっては「捕まえた動物の心臓はハンターがもらう」というルールがあったりしますが、肉がたくさんもらえるのはオトモの管理人ですね。

民「思う存分召し上がってください!」

──モンスターの倒し方から狩りの方法、人類の歴史まで幅広いお話が聞けて大変楽しかったです。今日はありがとうございました!

前編

※記事初出時、一部表記に誤りがございました。お詫びして訂正いたします。

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池谷和信

民博・人類文明誌研究部・教授

日本のマタギからアフリカ・シベリア・アマゾンのハンターまで、世界中の狩猟に参与してきました。人間にとって狩猟とは、本能であるのか文化であるのかに関心を持っています。

国立民族学博物館

大阪の万博記念公園にある、世界の人びとのくらしと文化にふれる世界最大級の民族学博物館。研究者が世界各地で収集した生活用具や民族衣装など、約34万5000点を所蔵。

みんぱくバーチャルミュージアムでは、自宅にいながら展示場を探索できる。

みんぱくバーチャルミュージアム

まいしろ

エンタメ分析家

社会の荒波から逃げ回ってる意識低めのエンタメ系マーケターです。音楽の分析記事・エンタメ業界のことをよく書きます。

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1件のコメント

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匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん(ID:4513)

この記事何のために作ろうと思ったんですかね…