かつて「伝説の人斬り」と呼ばれ、今は全国をさすらう流浪人(るろうに)となった男・緋村剣心。外見は少年のような優男だが、中身は癒えない過去を背負い、今なお罪の意識に苛まれる侍。彼の「闘いの人生」を描いた本作は、瞬く間にファンを獲得し、アニメ化やゲーム化、舞台化され知らぬ者のいない一大コンテンツへと成長を遂げた。
そして2012年。新たな“伝説”が幕を開けた。NHK大河ドラマ『龍馬伝』の大友啓史監督と俳優・佐藤健さんが組み実写映画化。第1作が興行収入30億円超えの大ヒットを記録し、シリーズ化と相成った。
日本映画史上、名実ともに最大級のヒットシリーズの“終わり”へ──。このメモリアルなタイミングで、原作者の和月さんへの単独インタビューが実現。約1時間にわたり、原作の制作秘話から実写映画の魅力、さらには少年漫画全体の話まで、KAI-YOUならではのどコアな要素もふんだんに盛り込んだ濃密なトークが展開した。
間違いなく永久保存版の超ロングインタビュー、どうか隅々まで楽しんでいただきたい。そして読み終えた暁には、「とりあえず、お疲れ様。」との言葉を贈ろう──。
取材・文:SYO 編集:小林優介
目次
原作者から見る実写『るろ剣』の凄さ
──これまでの『るろうに剣心』実写映画シリーズで、和月さんが「よくこの要素を実写に落とし込んだな」と驚いたポイントはどこでしょう?和月 やっぱり、アクションシーンですね。これまでも漫画原作の実写作品はありましたが、ここまで正しく原作を読み込んだうえでアクションシーンを仕込んでくれた作品は初めて見ました。
「九頭龍閃!(くずりゅうせん)」と技名を叫ぶことはないのですが、剣戟(けんげき)の中にしっかりと原作の技を入れてくれているんですよね。少年漫画としてのケレン味と同時に、アクション映画としての魅力を追求しているのがすごい。これは大友啓史監督やアクション監督の谷垣健治さんの演出力、そして佐藤健さんをはじめとする演者さんの超人的な身体能力があってこそだと思います。
あと、漫画を実写化する際に、どこまで2次元を現実に寄せていくのかというさじ加減の難しさがありますよね。このシリーズは、画づくりも含めてそこが非常に上手い。 和月 見ているだけで「これは(現実の)明治だけど『るろうに剣心』の世界でもある」とわかるんです。突拍子ないものになっていないんだけど、暗いライティングにもなっておらず、ちゃんと少年漫画の世界観に映えるように設計されている。
これは聞いた話なのですが、剣心の赤い着物についても、何着もパターンを用意してどの程度の赤が良いのか検討し、カメラテストを重ねて実写の中に映える赤を選んだそうなんです。ただ綺麗な赤を選ぶのではなく、作品世界に合ったものを追求してくれたと聞いて、本当に細部までこだわってくれているんだと感じました。
世界観とアクションをそのまま映画に持ち込むのではなく、どう変換したら実写に沿うのかを考えているところが素晴らしいです。
──2作目『京都大火編』での新月村の百人斬りシーン、3作目『伝説の最期編』における軍艦・煉獄での船上バトル、4月23日公開の『最終章 The Final』での高低差アクション等々、毎度驚きのアクションシーンがありますが、和月さんのお気に入りはありますか?
第1作での練習風景を映像で見せていただいた際、本当に佐藤さんご自身がやっているのを見て「壁を走る人を初めて見た!」とびっくりしましたね(笑)。あれはすごく印象に残っています。
剣心役に佐藤健を推したのは和月伸宏だった
──佐藤健さんを剣心役に推したのは和月さんだとうかがいました。和月 もともと佐藤健さんが主演された『仮面ライダー電王』を見ていて、妻と「若いのに演技もうまいし体も動くしすごいね」と話していたんです。
その後、映画の打ち合わせの際にプロデューサーさんから「叶うかどうかはわかりませんが、原作者サイドで『この方』というご希望はありますか?」と言っていただけて、「佐藤健さん」と答えたんです。
そうしたら、プロデューサーさんも驚いて「実は佐藤健さんにオファーしたいと思っていたんです」と。そこで合致して、うまくいったという形です。佐藤さんは演技のうまさ、身体能力の高さ、マスクの良さはもちろんなのですが、役に対する“真摯さ”が尋常じゃないですね。
何回か撮影中に陣中見舞いにうかがったのですが、役に入っているときは近寄れないです。かといって人をまったく寄せ付けないわけでもなく、しっかり対応もしてくれる。「スターだな、生きる世界が違うなぁ」というのが本音です。
和月 僕が特にうまいなと感じたのは、説明の省略ですね。原作は少年漫画ということもあり、やはり年齢層に合わせて「これはわからないかな?」という部分は心情セリフを並べてわかりやすくしようとしていたんです。
ところが、実写映画に関してはそこを潔く省いている。テンポ感や尺を意識しつつ、冗長になって情緒がなくなってしまうことのないようにすごく計算されていて、取捨選択をしているところがうまいなと。これがあるから「少年漫画の実写化」という範疇に収まらない作品になったんでしょうね。
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作品情報
るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning
- 公開
- 4月23日(金)『るろうに剣心 最終章 The Final』
- 6月4日(金)『るろうに剣心 最終章 The Beginning』
- 配給
- ワーナー・ブラザース映画
- 出演
- 佐藤健
- 武井 咲 新田真剣佑
- 青木崇高 蒼井 優 伊勢谷友介
- 土屋太鳳/三浦涼介 音尾琢真 鶴見辰吾 中原丈雄/北村一輝
- 有村架純 江口洋介
- 監督
- 大友啓史
- 原作
- 和月伸宏「るろうに剣心−明治剣客浪漫譚-」(集英社ジャンプ コミックス刊)
- 製作
- 映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会
- 制作プロダクション・配給
- ワーナー・ブラザース映画
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SYO
映画ライター/編集者
1987年福井県生。東京学芸大学にて映像・演劇表現について学ぶ。大学卒業後、映画雑誌の編集プロダクション、映画WEBメディアでの勤務を経て、独立。映画・アニメ・ドラマを中心に、小説や漫画、音楽などエンタメ系全般のインタビュー、レビュー、コラム等を各メディアにて執筆。映画作品の推薦コメント・劇場パンフレットの寄稿や、トークイベント・映画情報番組への出演も行う。カフェ巡りと猫をこよなく愛する。
Twitter(@SyoCinema)
1件のコメント
匿名ハッコウくん(ID:4437)
和月先生の想いを大友監督に託して頂きありがとうございます!
るろうに剣心は佐藤健さんでという原作者と映画関係者の意見があったから映画は完成したと思います。