T-Pablow「今、この場所には愛しかない」
ライブはここから怒涛の後半戦に。「Prologue」は日本のヒップホップシーンで頭二つほど抜け出した彼らのボースティングソング。Benjazzyが「トレンドじゃなくパンデミック」と歌えば、T-Pablowは「思い出残る路地裏抜けて王手をかける/今では政治家が隣人」と胸を張り、さらにYZERRは「比べられた奴今見当たらねえ/勝つこの game/ライバルいねえ/お前らと同じ世代に生まれてまじでごめん」と叩きつける。壮大な照明と映像で演出して、圧倒的存在感を誇示する。この流れのまま「Mobb Life」へ。「掃き溜めから Fly」。このフックは貧困が恐ろしい勢いで進む日本に夢を与える最高のパンチラインだ。マグマのような映像が映し出され、火柱も上がり、BAD HOPの内にある複雑な感情が表現される。
「YouTube観てるみなさん、まだまだ楽しめるなら俺らと一緒に行きましょう」というT-PablowのMCから「Ocean View」へ。さらに初期音源「BAD HOP ALL DAY」からの人気曲「White T-Shirt」に続く。BAD HOP 屈指のポップソングの高揚感は、間違いなく世界中のモニターの先まで届いていた。
そして BAD HOPの名前を一躍世に広めたあの曲のイントロが無観客の会場に響く。「Life Style」だ。この瞬間、横浜アリーナのステージには 確実に世界中と繋がってる感覚があった。エモーションが広がっていく。
さらに「京浜工業地帯出身の不良少年たち」という彼らのイメージをPVとともに決定づけた「Chain Gang」に流れていく。この曲には数々の生々しいパンチラインが存在するが、中でも「みんな疑問抱いて/でも口にしないで/目先の欲/餌に飼われてるなんてFuck You」は強烈だった。
本当は一回中止が決まってたんですよ。それに無観客でやるにしても、わざわざ横アリじゃなくても、小さいとこでやることもできた。でもそういうのが嫌なんですよ、俺らは。負債を背負うわけだからマネージャーとかは中止したかったと思う。でも俺らは頭下げて実施を認めてもらいました。
なんかさ、俺らがこのライブをこうして開催したのは、コロナウイルスのせいでネガティブな気持ちが蔓延しちゃうのが嫌だったんだよ。例えば、このウイルスが最初に広まった中国の人をネットで攻撃したり、心ないことを言ったりさ。不安な気持ちからネガティブになって、架空の敵をつくって攻撃するなんて、そんなの間違ってる。俺らは画面越しからポジティブなメッセージを発信したかった。
本当は生で観てもらいたかったけどね。でも、観てる人たちがポジティブな気持ちになってくれれば、それが俺たちをまた別の場所に連れて行ってくれると思うんだ。俺たちはみんなが観たいと思う場所でライブするよ。もちろんツアーで全国のライブハウスにも行くよ。
今、この場所には愛しかない。俺たちがこの『BAD HOP WORLD』で表現したかったのはそういうことなんだ。みんなはさ、俺らをどこで観たい? 俺らは必ずそこに行くぞ」と話して「Kawasaki Drift」がスタートする。
この日、一番感動的なシーンだった。BAD HOPは世界のKawasakiに跨ってどこにでも行くだろう。T-Pablow のパンチラインは「川崎市で有名になりなたきゃ人殺すか俺みたいになるか」と変わっていた。池上から出てきたどうしようもない不良は、ヒップホップを通じて大きく成⻑していると感じさせた。
ラストはWheezy&Turboのビートによる「Foreign」。トラックもスキルもぶっちりのクオリティだった。彼らは本当に海外でも成功してしまうかもしれない。そんなことを感じさせる気迫のこもったパフォーマンスだった。 なおBAD HOPはクラウドファンディングサイト・CAMPFIREにて本公演で生まれた負債の支援プロジェクトを開設。支援金額ごとにリターンが用意されている。その中には現在制作中の3rdアルバム『BAD HOP WORLD』や今回の販売される予定だったグッズ全種も含まれる。興味のある人はこちらもチェックしてもらいたい。
ティーンのカリスマに駆け上がったBAD HOP
2
この記事どう思う?
関連リンク
0件のコメント