連載 | #3 ギャルが生きた30年史

AIKA&今井夏帆が現代版ギャルに 輪廻転生する彼女たちの今

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ギャルカルチャーの転機

パーカーやベストで制服をアレンジ

ギャルが社会・経済の中で注目されると同時に、実際の教室文化の中では、ギャルであれば無条件でイケてるという価値観ではなくなっていた。当時を学生として過ごした世代に話を聞くと、むしろステレオタイプなギャルは“遅れていた”というのが1990年代半ば以降生まれの感覚だという。

時代は変わりつつあった。学校の制服もかつてのように着崩さないほうがおしゃれだった。クラスに少数のギャルはいるが、「単なる治安悪い系」に見えていた。それに変わってクラスの目立つ女の子たちは、ストリート系のファッションやK-POPスターのファッションを取り入れたような子たちだった。

いつしか、ギャルに転機が訪れていたのだろう。

話は少し前にさかのぼる。AKB48の初期においては、前田敦子と大島優子のツートップがグループを牽引する脇で、板野友美は、クラスに1人はいるギャルキャラのポジションで孤軍奮闘を果たした。サマンサタバサ(Samantha Thavasa)のイベントなどで、他のモデルより一回り小さいものの誰よりも存在感を放っていた。

ストリート系のファッションやK-POPスターのファッションは、制服にも取り入れられていた

ただしAKBでの板野は、主流派ではなく異端派。しかし板野は、総選挙でも上位のポジションを保っていた。2010年は4位。2011年、2012年は8位。グループ内にはギャル的なキャラクターが希少ゆえ、世間のギャル票を彼女が独占していたこともあるだろう。

そして、翌2013年にAKBから卒業する。この板野の卒業が、世間にとってのギャル時代の転機でもあったのではないか

歌手としてデビュー前のきゃりーぱみゅぱみゅが登場したのは、ギャル系ではなく、原宿ストリート系の『KERA』『Zipper』『HR』といった雑誌だった。その後、Perfumeを手がけた中田ヤスタカのプロデュースで歌手デビューすると、楽曲は23カ国で配信され(2011年発売「PONPONPON」)、同年末のシングル「つけまつける」になると先行配信が73カ国に増えた。

この頃が、ギャルの転換期だろうか。2014年には、藤田ニコルがローティーン向けの『nicola(ニコラ)』のモデルを卒業し、『Popteen』と契約して話題となった。彼女も『Popteen』専属モデルのギャルながら原宿系も要素も持ち合わせている。2015年頃からギャルの更新が始まってきたのだ。

SNSの台頭とともに写真のポーズも多様化

InstagramやVine、YouTube、TikTokといったSNSが台頭する時代に、雑誌というメディアは10代の気持ちを捉えたものではなくなっていく。女子高生たちのメディア比重も、スマホを介したネットに傾いていった。2014年には1995年から続いた雑誌『egg』(大洋図書)が、同年5月31日発売の7月号で休刊(編注:2018年にWebで復活、2019年には復刊)。当時、ギャル系雑誌の部数はどれも落ちていた。

恋愛リアリティー番組『バチェラー・ジャパン』(2017年)にゆきぽよこと木村有希(2012年から『egg』モデルとして活躍)が出演し、ギャルであることを全面に打ち出したキャラづくりが主に女性からの支持を集めた。

とはいえ、ここでのゆきぽよが貫いたキャラは“古き良きギャル”のようだった。これは90年代、ギャル文化の台頭期におけるヤンキー文化が“古き良きヤンキー”として生き残っていたのと近い現象なのかもしれない。

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ギャルが生きた30年史

女性における日本特異の文化として、時代の流行とも絡みながら平成の30年間に独自の変遷をたどってきた「ギャル」。 振り返れば常にギャルがいた平成から令和を迎え、その元年が終わろうとするいま。2020年という新たな10年間を前に、1990年代/2000年代/2010年代と時代を彩ってきたギャルを振り返る。 書き手は1973年に生まれ『ケータイ小説的。』(2008年)で浜崎あゆみらギャル文化の象徴とケータイ小説との密接な関係に切り込んだライターの速水健朗。 象徴的なアイテム・制服をまとい各年代のギャルを演じるモデルは、ギャル女優として活躍するセクシー女優のAIKAと今井夏帆というギャル文化をリアルタイムで経験してきた2人。 当時のギャルを取り巻く環境とその中で彼女たちが武装化、部族化、ハードボイルド化していったのか。それぞれが経験してきた(または未体験の)ギャル文化に思いを馳せてほしい。

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