連載 | #3 ギャルが生きた30年史

AIKA&今井夏帆が現代版ギャルに 輪廻転生する彼女たちの今

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2010年代初期のギャルの真理に触れた西野カナ

自撮り文化とともに一般化したセルカ棒

2010年代を代表する歌手の1人に西野カナがいる。デビュー当時の西野カナはギャルからの支持率が高かった。大ブレイクした「会いたくて 会いたくて」(2010年)のヒットの前後は、歌詞に携帯電話を絡める割合が高い。

君とのメールも写真も全部消えたのに 思い出は消せないままで」(2009年「君に会いたくなるから」)

でもね、ケータイに君の名前が光るたびに いつだって一人じゃないんだよって教えてくれる」(2009年「Dear.」)

真っ先にメールくれる優しさに もう何度も救われて」(2010年「Best Friend」

社会学者の鈴木謙介は、「会いたい」「せつない」が繰り返される西野カナのような歌詞が、2010年前後に多かったこと(青山テルマにはじまり、初期の加藤ミリヤなど)を受け、これらを「ギャル演歌」と命名した。
西野カナ『Dear…』
西野カナはメディア論的な読みどころにあふれている歌手だ。メモリから消去しても終わらない恋、うっかり彼氏のケータイを見てしまって終わる恋。どれも現代的ならではのせつなさである。そんなあれこれを初期の西野カナソングは教えてくれていた。ケータイで深くつながっているはずの相手との断絶こそが現代の悲劇であると。

2010年代は、ギャル色の強いファッションショーの規模が拡大していった。東京ガールズコレクションは、アパレルブランドが開催するのではなく、消費者目線のリアルクローズをベースとしたショー。ギャル雑誌でおなじみの読者モデルや芸能人たちがランウェイを歩き、その場でオンラインから購入できるシステムが話題を集めた。

そのスタートは2005年だが、年々規模を増し、2010年にはさいたまスーパーアリーナで3万人を動員。以後も会場を変えながら、大会場では3万人を超える規模のショーを年数回ペースで開催している。この東京ガールズコレクションは、経産省が推し進めるクールジャパン政策を担うイベントでもある。ギャルを独自の日本文化として海外へ売り込もうとされたのだ。

韓国で話題になった“指ハート”

日本独自のドメスティックな(演歌とも親和性の高い)存在だったギャルは、2010年代に突如、国際的シンボルとして注目される存在にもなった。

代表的なところでは、「新しいスタイルを生み出す活力を持ち、世界的にもトレンド発信力に優れた、日本のユニークな女性『ギャル』たちを研究し、彼女たちを等身大で理解・活用する」ための部署として、電通ギャルラボを立ち上げている。

閉塞感の漂う日本経済、消費をしない若者たちという社会の中で、ギャルだけが元気でわかりやすい若者像を示していたのだろう。

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ギャルが生きた30年史

女性における日本特異の文化として、時代の流行とも絡みながら平成の30年間に独自の変遷をたどってきた「ギャル」。 振り返れば常にギャルがいた平成から令和を迎え、その元年が終わろうとするいま。2020年という新たな10年間を前に、1990年代/2000年代/2010年代と時代を彩ってきたギャルを振り返る。 書き手は1973年に生まれ『ケータイ小説的。』(2008年)で浜崎あゆみらギャル文化の象徴とケータイ小説との密接な関係に切り込んだライターの速水健朗。 象徴的なアイテム・制服をまとい各年代のギャルを演じるモデルは、ギャル女優として活躍するセクシー女優のAIKAと今井夏帆というギャル文化をリアルタイムで経験してきた2人。 当時のギャルを取り巻く環境とその中で彼女たちが武装化、部族化、ハードボイルド化していったのか。それぞれが経験してきた(または未体験の)ギャル文化に思いを馳せてほしい。

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