「もし、実のお母さんがホスト狂い(※)だったら」「もし、実の息子がホストだったら」──きっと、多くの人がネガティブな感情を持つでしょうし、そのことで親子関係が崩れてしまうこともあるかもしれません。
一般的に「ホスト」や「ホストクラブ」というと、まだまだいい印象を持たれるものではありません。
今回話を聞くのは、大手ホストグループ・冬月グループの「Chloe」という店舗の代表・星咲五奏(ほしざきごそう)さんと、五奏さんの実のお母さん。実は、お母さんはホスト狂いで、五奏さんはホストです。
子供時代は「決して良好とは言えない親子関係だった」と語る五奏さん。しかし、五奏さんがホストとなり、お母さんが五奏さんのお店に通うことで、2人の関係は徐々に回復し、今では過去のどのタイミングよりも、良い関係だそうです。
ホスト狂いのお母さんと、ホストになった息子──。
一見すると、悪化してもおかしくない母と子の関係。信じられない話かもしれませんが、これはホストを通じて、2人が親子になる物語です。
※ホスト狂い:ホストにハマり、多額のお金を貢ぐ女を貢ぐ女のこと
取材・文:大原絵理香 編集:ちゃんかよ
お母さん 本当はChloeのプレオープンのときに来たかったのですが、忙しいからって断られたので、今日来られてよかったです。ちなみに、同伴は天ぷらでした(笑)。
──食事中はどういう話をされたのでしょうか?
五奏 普通の話ですね。「最近どう?」とか、本当に普通の話です。
──お母さんは初めてのChloeですが、印象はどうですか?
お母さん 暗い、ですよね(笑)。
五奏 照明とか、結構こだわっているんですけどね……母には昔から、すぐにこうやってダメ出しされます(笑)。
いまでこそ僕も大人になったのでこういうコミュニケーションも取れるようになりましたが、昔から気も語気も強い母だったので、幼少期は母の存在が怖かったです。ハイヒールのかかとで思いっきり殴られたこともありましたし……覚えてる?
お母さん 覚えてる、覚えてる。 五奏 あとは、母が2回離婚していたり……いわゆる複雑な家庭環境だったので、家族はもちろん、僕と母の関係自体も良いものではありませんでした。
母は夜の仕事をしていたので、生活も逆転していましたし。なので、家族一緒にいる意味がわからなかったし、家にいるのも窮屈で。ある程度の年齢で家を出て、連絡も一切取らなくなりました。
──一度、親子の関係は崩れてしまったんですね。ちなみに、お母さんのお仕事というのは、スナックでしょうか?
お母さん はい。スナックを経営していました。
──お母さんが水商売をしていることについては、五奏さんはどう思っていましたか?
五奏 それ自体は子供心にもまったく拒否感がなくて、むしろ「どういう仕事なんだろう?」と漫画とかドラマとかを見るようになったんです。そのなかで「ホスト」や「ホストクラブ」という存在を知りましたね。
──そこからホストを目指されたんですか?
五奏 そうですね。ホストの「一番をとったやつが一番偉い!」という考え方にすごく共感できて。いま思うと、幼少期から「一番にこだわれ」と母から言われ続けていたので、しっくりきたのかもしれません。 ──ある意味英才教育ですね。
お母さん 英才教育かどうかはわかりませんが……私がホストクラブに通っているときから、その店のランキング上位者にしか興味がなかったので、もしかしたら、そこも関係しているのかもしれません。
当時からストレス発散で、自分のお店が終わったあとに毎日のように行っていました。「ホスト狂い」なんて言葉もなかった時代でしたが、完全にホスト狂いですよね(笑)。ちなみに、回数自体は減ってしまいましたが、いまでも変わらず通っています。
お母さん いわゆる綺麗な飲み方をしていたと思います。ちゃっちゃと飲んで、ちゃっちゃと帰る、みたいな。ただ、仕事ができない男は嫌いなので、ナンバー(人気順位)に入っているホストしか指名しませんでした。
──お母さんがホスト狂いということを、五奏さんはご存知でしたか?
五奏 もちろん。というのも、自分がホストになって、同業(つながりのあるホストクラブに顔を出すこと)に行くと、その店のナンバー陣が「いつもお母さんにはお世話になっています」みたいな感じでわざわざ僕のところに挨拶に来るんですよ。新人ホストの僕よりも、母のほうが有名っていう(笑)。
お母さん そうなんです。だから、実はこの子がホストになったときも、周りからすぐに話がまわってきて。
五奏 それで母は僕の働いているお店にすぐ来たんですよ。
お母さん すぐ、ね。
──事前の連絡もなく?
お母さん そうです。びっくりさせようかなって(笑)。
五奏 「いらっしゃいませ」って入り口を見たら「お母さん!!!!!」ってなって、絶対バレないと思っていたんで、めちゃくちゃびびりました(笑)。
とはいえ、テーブルが2つとカウンターが8席くらいしかない本当に小さいお店だったんで、仕方なく…… ── 一女性、一お客様として接客されたんですか?
五奏 いや無理でしょ、絶対無理(笑)。でも、おかげで母と久しぶりに会う気まずさ、みたいなのはあの衝撃でぶっ飛びました(笑)。
お母さん ちょうどさっき言っていたまったく連絡を取っていない時期だったので、いいきっかけだったと思います。私自身、以前から通っていたホストクラブだったので、上の人たちに「息子をよろしくね」という話もできたので。
──さすがというかなんというか……では、ホスト狂いのお母さんにとって、息子がホストになるというのはどういう気持ちなんでしょうか?
お母さん 歌舞伎町と違って、岡山のホストクラブって飲まないとお話にならないんですよ。わたしもお客さんとして行って、もしお酒を飲めないホストが出てきたら、接客拒否します。
なので、絶対に身体を壊すだろうと思っていたので、それが嫌でした。でも、たぶんすぐに辞めるだろうなとも思いました。私から見るとまったく向いていなかったので。
五奏 「お前にホストはできない」と直接言われました。でも、そのときに「俺はホストでやっていく」って言ったんです。
昔から、ちゃんとコミュニケーションを取ってこなかったので、自分から何かをやりたいって言ったことがなかったんですよ。でも、ホストは「やりたい」「やっていきたい」って、ちゃんと言えたんです。 ──それを聞いてお母さんはどう思いましたか?
お母さん 本当にそれまではどんなことに対しても「やりたい」なんて言ったことなかったので、そこまで言うなら頑張ってみろと。
──応援してあげようと?
お母さん そうですね。
五奏 ホストへの応援って、やっぱり売り上げとか自分に対する指名になるんですが、母はホスト狂いなだけあって、そこをちゃんとわかってくれていたんです。なので、僕のバースデーイベントで、シャンパンを抜いて(卸して)くれたり、こまめに通ってくれたり、たまに同伴までしてくれていました。
──五奏さんとお母さんならではのお話ですね。
五奏 シャンパンを抜いてくれたバースデーのときは、当日「行くよ」とだけ言われていて、来たら「シャンパン持ってきな!」って(笑)。
「何にする?」って聞いたら、「私はピンクのドンペリしか飲まないから」って言われました。当時、ピンドンって30万円くらいだったんですが、田舎の店で、そんな高価なものが抜けることってほぼないんですよ。だから周りの反応もすごかったですね。「五奏のエース(一番お金を使っているお客さん)はお母さんだ!」って(笑)。
──「お母さんがエース!」と言われたときの心境を教えてください。
五奏 子供時代から考えても、あれが一番うれしかったことかもしれないです。実はそのピンドンが、僕のホスト人生で最初のシャンパンだったんです。 五奏 ほかにも、僕のSNSを誰よりもチェックしてくれていて、感想などをすぐに送ってくれます(笑)。「離れていても気にかけてくれているんだな」と思えてありがたいですね。
五奏 そうですね。一般的にはまだまだ“いい職業”とされていないホストですが、僕たちにとっては、親子の絆をつなぐ存在になってくれました。
やっぱり、僕の知るどの女性よりもホストに費やしてきた時間もお金も多いので、母のアドバイスはすごくためになります。例えば「酔ったときは、暴れるんじゃなくて女の子の膝で寝とけ!」とか。 ──ホストにとってはすごく具体的で身になるアドバイスですね。
五奏 あとは、僕が岡山から歌舞伎町に移って、自分のお店を持つことになったときもいろいろアドバイスをもらいました。本当にホストになってからのほうが会話が増えましたね。
「飲み過ぎには気をつけなさい」みたいな他愛のない会話も含めて。そういう当たり前な話も昔はほとんどなかったので、本当に不思議です。
──ちなみに、ホストというと「色恋営業(恋愛をしているような営業をすること)」や「枕営業」が避けられない場合も多いです。お母さんとして、そのあたりはどう考えていらっしゃるのでしょうか?
お母さん なんとも思わないです。それで成り立っているのであれば、それで1位になれるのであれば。時には必要な場合もあることは、ホストに何年も通ってきているなかで理解しています。ただ、母親としては「女の子を泣かせることはするなよ」とは思います。
──「母親」という視点からもうひとつうかがいたいのが、整形についてです。五奏さんは整形を公表されていますが、どう思っていらっしゃいますか?
五奏 最初にした整形は二重切開だったんですが、絶対反対されることがわかっていたので、母には伝えずにやったんです。それが、例によって母が店に遊びにきたタイミングでバレたんです。そのときは…… お母さん もう、すごいショックで。あのときは泣きながら怒ったよね。
五奏 そうですね。家を出る前ぶりくらいに感情的な母を見ました。ただ当時と比べると、ホストやホストクラブを通じてコミュニケーションを図るいまのほうが、親子としての会話は活発かもしれません。
お母さん それ以降もいろいろ整形していますが、いまはもうそれでもいいかなと思います。「色恋営業」や「枕営業」の話と同様に、それが1位になるために必要なことであれば。でも、面影はそのままだと思いますよ。
──最後に、ホストを通じて現在の“親子”になったおふたりですが、この先のお話も聞かせてください。いまは五奏さんも現役なので考えられていないと思いますが、結婚や子供など、将来的にはそういう話も出てくると思います。
お母さん 本人が楽しくやっているのが一番ですが、私が死ぬまでに孫の顔は見たいな〜なんて。
五奏 まあ、いまはお店に集中したいのですが……そうですね、先の話で(笑)。
お母さん 楽しみにしています(笑)。
──ありがとうございました。では、お母さんから五奏さんに、五奏さんからお母さんへの一言で締めくくりたいと思います。
お母さん こんな大きなお店を持つなんて、自分の息子は成功したんだな、と心から思えます。おめでとう。私は大きくなくていいので、家を建ててくれるのを待っています。ついでに、お墓も(笑)。
五奏 いろいろありましたが、いまは結構いい関係だと思っています。何年かはきっと自分のこととお店や従業員のことで精一杯になってしまうと思うけど、将来的には何かしてあげられたらいいなと。家と墓、頑張ります。 一度は崩れてしまった関係が、「ホスト」や「ホストクラブ」という、一般的には良しとされていないものによって修復された親子。
親子の絆をつないでくれるものは、きっと、親子の数だけ様々な形で存在していますし、もしもそれが他人からは理解できないものだとしても、たとえ母親がホスト狂いで、その息子がホストだとしても。
本人たちが幸せなのであれば、それがベストなんだと思います。
一般的に「ホスト」や「ホストクラブ」というと、まだまだいい印象を持たれるものではありません。
今回話を聞くのは、大手ホストグループ・冬月グループの「Chloe」という店舗の代表・星咲五奏(ほしざきごそう)さんと、五奏さんの実のお母さん。実は、お母さんはホスト狂いで、五奏さんはホストです。
子供時代は「決して良好とは言えない親子関係だった」と語る五奏さん。しかし、五奏さんがホストとなり、お母さんが五奏さんのお店に通うことで、2人の関係は徐々に回復し、今では過去のどのタイミングよりも、良い関係だそうです。
ホスト狂いのお母さんと、ホストになった息子──。
一見すると、悪化してもおかしくない母と子の関係。信じられない話かもしれませんが、これはホストを通じて、2人が親子になる物語です。
※ホスト狂い:ホストにハマり、多額のお金を貢ぐ女を貢ぐ女のこと
取材・文:大原絵理香 編集:ちゃんかよ
複雑な家庭環境を経てホストの道へ
──今日はわざわざ岡山から来てくださって、ありがとうございます。おふたりで同伴(食事などをしてから一緒にお店に入ること)をしてきたそうですね。お母さん 本当はChloeのプレオープンのときに来たかったのですが、忙しいからって断られたので、今日来られてよかったです。ちなみに、同伴は天ぷらでした(笑)。
──食事中はどういう話をされたのでしょうか?
五奏 普通の話ですね。「最近どう?」とか、本当に普通の話です。
──お母さんは初めてのChloeですが、印象はどうですか?
お母さん 暗い、ですよね(笑)。
五奏 照明とか、結構こだわっているんですけどね……母には昔から、すぐにこうやってダメ出しされます(笑)。
いまでこそ僕も大人になったのでこういうコミュニケーションも取れるようになりましたが、昔から気も語気も強い母だったので、幼少期は母の存在が怖かったです。ハイヒールのかかとで思いっきり殴られたこともありましたし……覚えてる?
お母さん 覚えてる、覚えてる。 五奏 あとは、母が2回離婚していたり……いわゆる複雑な家庭環境だったので、家族はもちろん、僕と母の関係自体も良いものではありませんでした。
母は夜の仕事をしていたので、生活も逆転していましたし。なので、家族一緒にいる意味がわからなかったし、家にいるのも窮屈で。ある程度の年齢で家を出て、連絡も一切取らなくなりました。
──一度、親子の関係は崩れてしまったんですね。ちなみに、お母さんのお仕事というのは、スナックでしょうか?
お母さん はい。スナックを経営していました。
──お母さんが水商売をしていることについては、五奏さんはどう思っていましたか?
五奏 それ自体は子供心にもまったく拒否感がなくて、むしろ「どういう仕事なんだろう?」と漫画とかドラマとかを見るようになったんです。そのなかで「ホスト」や「ホストクラブ」という存在を知りましたね。
──そこからホストを目指されたんですか?
五奏 そうですね。ホストの「一番をとったやつが一番偉い!」という考え方にすごく共感できて。いま思うと、幼少期から「一番にこだわれ」と母から言われ続けていたので、しっくりきたのかもしれません。 ──ある意味英才教育ですね。
お母さん 英才教育かどうかはわかりませんが……私がホストクラブに通っているときから、その店のランキング上位者にしか興味がなかったので、もしかしたら、そこも関係しているのかもしれません。
当時からストレス発散で、自分のお店が終わったあとに毎日のように行っていました。「ホスト狂い」なんて言葉もなかった時代でしたが、完全にホスト狂いですよね(笑)。ちなみに、回数自体は減ってしまいましたが、いまでも変わらず通っています。
母親からの宣告「お前にホストはできない」
──ホストである五奏さんのお母さんが「ホスト狂い」。とても興味深いのですが……具体的に、どういう遊び方をしていたのでしょうか?お母さん いわゆる綺麗な飲み方をしていたと思います。ちゃっちゃと飲んで、ちゃっちゃと帰る、みたいな。ただ、仕事ができない男は嫌いなので、ナンバー(人気順位)に入っているホストしか指名しませんでした。
──お母さんがホスト狂いということを、五奏さんはご存知でしたか?
五奏 もちろん。というのも、自分がホストになって、同業(つながりのあるホストクラブに顔を出すこと)に行くと、その店のナンバー陣が「いつもお母さんにはお世話になっています」みたいな感じでわざわざ僕のところに挨拶に来るんですよ。新人ホストの僕よりも、母のほうが有名っていう(笑)。
お母さん そうなんです。だから、実はこの子がホストになったときも、周りからすぐに話がまわってきて。
五奏 それで母は僕の働いているお店にすぐ来たんですよ。
お母さん すぐ、ね。
──事前の連絡もなく?
お母さん そうです。びっくりさせようかなって(笑)。
五奏 「いらっしゃいませ」って入り口を見たら「お母さん!!!!!」ってなって、絶対バレないと思っていたんで、めちゃくちゃびびりました(笑)。
とはいえ、テーブルが2つとカウンターが8席くらいしかない本当に小さいお店だったんで、仕方なく…… ── 一女性、一お客様として接客されたんですか?
五奏 いや無理でしょ、絶対無理(笑)。でも、おかげで母と久しぶりに会う気まずさ、みたいなのはあの衝撃でぶっ飛びました(笑)。
お母さん ちょうどさっき言っていたまったく連絡を取っていない時期だったので、いいきっかけだったと思います。私自身、以前から通っていたホストクラブだったので、上の人たちに「息子をよろしくね」という話もできたので。
──さすがというかなんというか……では、ホスト狂いのお母さんにとって、息子がホストになるというのはどういう気持ちなんでしょうか?
お母さん 歌舞伎町と違って、岡山のホストクラブって飲まないとお話にならないんですよ。わたしもお客さんとして行って、もしお酒を飲めないホストが出てきたら、接客拒否します。
なので、絶対に身体を壊すだろうと思っていたので、それが嫌でした。でも、たぶんすぐに辞めるだろうなとも思いました。私から見るとまったく向いていなかったので。
五奏 「お前にホストはできない」と直接言われました。でも、そのときに「俺はホストでやっていく」って言ったんです。
昔から、ちゃんとコミュニケーションを取ってこなかったので、自分から何かをやりたいって言ったことがなかったんですよ。でも、ホストは「やりたい」「やっていきたい」って、ちゃんと言えたんです。 ──それを聞いてお母さんはどう思いましたか?
お母さん 本当にそれまではどんなことに対しても「やりたい」なんて言ったことなかったので、そこまで言うなら頑張ってみろと。
──応援してあげようと?
お母さん そうですね。
五奏 ホストへの応援って、やっぱり売り上げとか自分に対する指名になるんですが、母はホスト狂いなだけあって、そこをちゃんとわかってくれていたんです。なので、僕のバースデーイベントで、シャンパンを抜いて(卸して)くれたり、こまめに通ってくれたり、たまに同伴までしてくれていました。
──五奏さんとお母さんならではのお話ですね。
五奏 シャンパンを抜いてくれたバースデーのときは、当日「行くよ」とだけ言われていて、来たら「シャンパン持ってきな!」って(笑)。
「何にする?」って聞いたら、「私はピンクのドンペリしか飲まないから」って言われました。当時、ピンドンって30万円くらいだったんですが、田舎の店で、そんな高価なものが抜けることってほぼないんですよ。だから周りの反応もすごかったですね。「五奏のエース(一番お金を使っているお客さん)はお母さんだ!」って(笑)。
──「お母さんがエース!」と言われたときの心境を教えてください。
五奏 子供時代から考えても、あれが一番うれしかったことかもしれないです。実はそのピンドンが、僕のホスト人生で最初のシャンパンだったんです。 五奏 ほかにも、僕のSNSを誰よりもチェックしてくれていて、感想などをすぐに送ってくれます(笑)。「離れていても気にかけてくれているんだな」と思えてありがたいですね。
「整形も枕営業も、それで1位になるのであれば」
──お話を聞いていると、ホストを通じて、親子関係が修復されているように感じます。五奏 そうですね。一般的にはまだまだ“いい職業”とされていないホストですが、僕たちにとっては、親子の絆をつなぐ存在になってくれました。
やっぱり、僕の知るどの女性よりもホストに費やしてきた時間もお金も多いので、母のアドバイスはすごくためになります。例えば「酔ったときは、暴れるんじゃなくて女の子の膝で寝とけ!」とか。 ──ホストにとってはすごく具体的で身になるアドバイスですね。
五奏 あとは、僕が岡山から歌舞伎町に移って、自分のお店を持つことになったときもいろいろアドバイスをもらいました。本当にホストになってからのほうが会話が増えましたね。
「飲み過ぎには気をつけなさい」みたいな他愛のない会話も含めて。そういう当たり前な話も昔はほとんどなかったので、本当に不思議です。
──ちなみに、ホストというと「色恋営業(恋愛をしているような営業をすること)」や「枕営業」が避けられない場合も多いです。お母さんとして、そのあたりはどう考えていらっしゃるのでしょうか?
お母さん なんとも思わないです。それで成り立っているのであれば、それで1位になれるのであれば。時には必要な場合もあることは、ホストに何年も通ってきているなかで理解しています。ただ、母親としては「女の子を泣かせることはするなよ」とは思います。
──「母親」という視点からもうひとつうかがいたいのが、整形についてです。五奏さんは整形を公表されていますが、どう思っていらっしゃいますか?
五奏 最初にした整形は二重切開だったんですが、絶対反対されることがわかっていたので、母には伝えずにやったんです。それが、例によって母が店に遊びにきたタイミングでバレたんです。そのときは…… お母さん もう、すごいショックで。あのときは泣きながら怒ったよね。
五奏 そうですね。家を出る前ぶりくらいに感情的な母を見ました。ただ当時と比べると、ホストやホストクラブを通じてコミュニケーションを図るいまのほうが、親子としての会話は活発かもしれません。
お母さん それ以降もいろいろ整形していますが、いまはもうそれでもいいかなと思います。「色恋営業」や「枕営業」の話と同様に、それが1位になるために必要なことであれば。でも、面影はそのままだと思いますよ。
──最後に、ホストを通じて現在の“親子”になったおふたりですが、この先のお話も聞かせてください。いまは五奏さんも現役なので考えられていないと思いますが、結婚や子供など、将来的にはそういう話も出てくると思います。
お母さん 本人が楽しくやっているのが一番ですが、私が死ぬまでに孫の顔は見たいな〜なんて。
五奏 まあ、いまはお店に集中したいのですが……そうですね、先の話で(笑)。
お母さん 楽しみにしています(笑)。
──ありがとうございました。では、お母さんから五奏さんに、五奏さんからお母さんへの一言で締めくくりたいと思います。
お母さん こんな大きなお店を持つなんて、自分の息子は成功したんだな、と心から思えます。おめでとう。私は大きくなくていいので、家を建ててくれるのを待っています。ついでに、お墓も(笑)。
五奏 いろいろありましたが、いまは結構いい関係だと思っています。何年かはきっと自分のこととお店や従業員のことで精一杯になってしまうと思うけど、将来的には何かしてあげられたらいいなと。家と墓、頑張ります。 一度は崩れてしまった関係が、「ホスト」や「ホストクラブ」という、一般的には良しとされていないものによって修復された親子。
親子の絆をつないでくれるものは、きっと、親子の数だけ様々な形で存在していますし、もしもそれが他人からは理解できないものだとしても、たとえ母親がホスト狂いで、その息子がホストだとしても。
本人たちが幸せなのであれば、それがベストなんだと思います。
ホストという生き方
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星咲五奏
Chloe代表
大原絵理香
広報/ライター
川崎生まれ、東京とニュージャージー育ち。会社員とフリーランスをいったりきたりしながら生きている。PR、広報。あと、ライター。
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