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POPなポイントを3行で

  • Chilly Source Radioは毎週日曜日22時から
  • ラジオというメディアが再注目されている
  • Manhattan Recordsと渋谷WWWでイベントも

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現代の海賊ラジオ『Chilly Source Radio』から紐解く「海賊文化」

Chilly Source Radio vol.10 【Tokyo chill hiphop ,R&B ,House mix 】より

Chill(チル)という言葉が日本に浸透して久しくなりました。

言葉の意味を一言で言ってしまえば「リラックスする」ですが、その形は千差万別。

いつもの溜まり場で仲間とダラダラすることだったり、特別な人を家に招きイチャイチャすることだったりと様々です。

そんな私達のChillなひとときにそっと寄り添ってくれる存在が、2016年頃に活動を開始した新興音楽/ライフスタイルレーベル「Chilly Source」です。

Chilly Sourceは、最近発表された1stアルバムが好評を博しているillmoreさんを始め、pinokoさんやケンチミンさんといった一癖あるアーティスト達を輩出しており、独自の存在感を放ち続けています。
pinoko -たばこ
そんなChilly Sourceを語る上で欠かせないのが、彼らのフラッグシップ・メディアであるChilly Source Radioです。

あらゆるコンテンツがオンデマンド化しつつある現代において、彼らはこの3年間、毎週欠かさず、YouTube Liveという場でラジオ放送を続けてきました。

彼らはなぜ、ラジオというオールド・メディアのスタイルにこだわるのでしょう。

金曜の夜でもなく、土曜の夜でもない

週末の華と言えば金曜日の夜。華金なんて言葉もありますね。また、翌日土曜日の夜も悪くはありません。

しかし、週末も日曜日になった途端、少しの憂鬱を帯びます。特に夜のソレは、「サザエさん症候群」という言葉で真面目に論じられる程です。この憂鬱は等しく我々を襲います。

そんな憂鬱の救世主が、日曜日の22時から23時半にかけて放送されるChilly Source Radioなのかも知れません 夜更かしもできないから、普段より早めに浴槽にお湯を張る。水垢の付いたZiplockにスマホを入れて、湯船に浸かる。この倦怠感を少しでも紛らわせたく動画を探していると、登録チャンネルのフィードにLIVEの文字が付いているサムネイルが一つだけある。

「こんなチャンネル登録したかな?」

気まぐれにタップしてみると、あなたの好みに合うChillなアンセムが流れてくる。もしかしたら、それは落ち着いた雰囲気のR&Bかも知れない。

不思議と画面を眺めているのが馬鹿らしく感じられてきて、あなたは浴槽の縁にスマホを置く。首と肩の力が抜けて、あなたのスマホはChillな空間を演出するアロマ・キャンドルに早変わり。

なんて、そんな日曜の一コマを演出してくれるChilly Sourceは、“流し聞く”というラジオの性質をよく理解しているのかも知れません。

ラジオの逆襲

The Buggles - Video Killed The Radio Star
60年代以降、テレビの普及などで影が薄くなったラジオですが、ここ最近になって息を吹き返してきています。

国内の例を見ても、ラジオ番組をオンデマンドで楽しめるサービス「Radikoプレミアム」がローンチされるなど、元々クオリティの高かった番組の数々が、時代に合った形でリスナーに届くようになりました。

スマホを眺め続けるのに疲れた私達が、ラジオという聴覚メディアに戻ってくるのは必然だったのかも知れません

そしてこの波は、ラジオのチューナーに触れたことのない若者たちにも届きつつあります。

日本でもにわかに注目を集め始めている「Lo-fi Hip Hop」系ラジオの流行が、まさにその象徴と言えます。

Lo-fi Hip Hopはラジオなのか?

lofi hip hop radio - beats to relax/study to
Lo-fi Hip Hopというジャンルに耳馴染みの無い方もいると思うので、このジャンルの成り立ちについてまとめて下さっているDJのBEIPANAさんのブログから、少し引用させていただきます。

"Lo-fi Hip Hop"というワードが広まり始めたのは2016年〜2017年頃だと考えられています。「意図的に汚したジャズなどのサンプル・ネタと、レイド・バック気味のヨレたビートで構成されるインストゥルメンタル」といった音楽的な特徴自体は古くから存在しましたが、近年そうした音楽が”Lo-fi Hip Hop”という新しい概念で認知されていくようになりました。

認知が広まったきっかけは、2017年にYouTube上で同時多発的に始まった"Lo-fi Hip Hop”というキーワードを含んだライブ・ストリーミングです。当時YouTubeがライブ・ストリーミングを行うチャンネルを積極的に上位掲載させる仕様と相まって、リスナーが徐々に増えていきました。

なお、こうした特徴のビートは"Jazzy"、"Chill"と形容することが一般的でした。ストリーミングを除いて、Lo-fiという言葉がこれらに最初に用いられたのは、2013年4月23日に公開されたChillhop Musicのプレイリスト”a lo-fi chill beats”だと言われています。 -引用元:BEIPANAさんのブログ記事「Lo-fi Hip Hop(ローファイ・ヒップホップ)はどうやって拡大したか」より

このLo-fi Hip Hopを24時間ストリーミングしているチャンネルは数え切れないほどに増えており、その盛り上がりは安定期に入りつつあります。

Lo-fi Hip Hop系チャンネルの最大手とも言えるChilled Cowが、昨年の8月から2019年5月現在まで連続してストリーミングしている放送に関して言えば、すでに130万回もLikeが押されています。

しかし、そのタイトルに「ラジオ」と銘打たれてはいるものの、この形態の放送はBGMに特化した有線放送の様に聞こえてしまうのが、ラジオ・リスナーの性でしょう。

DJが選曲して音を届けているというよりは、コンパイルされた音源が無機質に垂れ流されているという印象がどうしても強いのです。

それでは、Chilly Source Radioをこの文脈に当てはめるとどうなるのでしょうか?

湯船に浮かぶ「海賊ラジオ」

映画『パイレーツ・ロック』DVD 予告編
Chilly Source Radioは「海賊ラジオ」です。

これは筆者が思いついた造語ではなく、ラジオの歴史を語る上では絶対に外せない存在です。

1966年、イギリスの国営放送が運営する「BBCラジオ」は、ロックミュージックの放送を1日45分に制限していました

しかし、当時はロックやポップの需要がどんどん高まっていた時期です。そこでイギリスの音楽好きたちは、DIY精神で、国民が本当に聴きたがっていた音楽を24時間ぶっ続けでかけることにしたのです。

しかも海の上から

当時、公海から電波を飛ばす分には、彼らを取り締まる放送免許や著作権にまつわる法の拘束はなかったのです。1967年には10隻の海賊ラジオが、毎日1,000万人から1,500万人のリスナーに違法な電波に乗せて音楽を届けていたと言われています。

彼らは文字通り「海賊」でした。

Pirates of YouTube

Chilly Source Radioは「海賊ラジオ」の精神を受け継いでいると言えるでしょう。

彼らの放送は現在約120回を数えており、毎週YouTube LIveでの配信後、そのアーカイブを全てYouTubeとSoundcloudにアップロードしてきました。

しかし、ある時から、彼らはYouTubeにアーカイブを残さなくなってしまいました。理由は、YouTubeという海においてChilly Source Radioが、本当の意味で海賊ラジオとみなされたからです。

どういうことでしょうか。

昔から、DJは選曲と曲間の“つなぎ”を巧みに構成して、自身のMixを作り、自分のセンスやスキルを披露してきました。

また、一部のオフィシャルなMixを除いて、DJたちは収録楽曲に関する著作物の利用申請をしてきませんでした。

なぜなら、有名なDJのMixに自分の曲が収録されることが、アーティストたちにとってのプロモーションになっていたからです。

だからDJたちのMixは、違法であるものの、ほぼ黙認されてきました
【日本語ラップ MIX】DJKRO TOKYO SUNSET JAPANESE HIPHOP MIX
そんなDJ Mixの動画はYouTubeにも数多くアップロードされています。

しかし、楽曲の著作権を保持しているレコード会社のさじ加減一つで、そのMixの一部は無音にされてしまいます。現に、Chilly Sourceが過去にアップロードしているDJ Mixにも、無音箇所が挟まれているものがいくつかあります。

要するに、YouTube Liveでの放送を終えアーカイブになったMixは、途端に「無音制裁」というリスクに晒されてしまうのです

ちなみに、Soundcloudは2016年にこのDJ Mixに関する著作権の問題を解決済みです(外部リンク)。

Soundcloudは音楽シーンを支えてきた「海賊文化」という文脈をきちんと理解した上で、DJという義賊たちと良好な関係を築いています。

たった一つのChillなやり方

たとえ、その一部が無音になってしまったとしても、人目に触れることの多いYouTubeにアーカイブを残すことは、きっとアクセス数の増加に繋がるはずです。

Chilly Sourceはなぜ、このオプションをふいにしたのでしょうか。

個人的な想像ですが、これは聴いて欲しい音楽を、誰にも邪魔されずに、ありのままで聴いて欲しいという彼らの義賊精神の表れではないかと思っています。

Chillで穏やかな時間を演出してくれるのが魅力なChilly Source Radioですが、その精神は、時にチリソースの様にピリリと辛い、私にはそう感じられます。

これが彼らのもう一つの魅力なのかも知れません。

そんなChilly Source Radioは6月21日(金)に、渋谷・宇多川町の老舗レコード・CDショップのManhattan Recordsと共同でイベントを開催する予定です。

イベント当日は仕事終わりに直行し、明けた土曜を寝ぼけ眼でChillに過ごして、日曜はChilly Source Radioで締める。そんな週末はいかがでしょうか?

Chillでいる秘訣を知ってる

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イベント情報

Manhattan Records × Chilly Source Presents 『Vibin'Out』

日程 2019年6月21日(金) OPEN/START:18:00 / 18:00
会場 渋谷WWW (https://www-shibuya.jp/schedule/011115.php)
出演者 DJ HASEBE / AKLO / FNCY / Ryohu(KANDYTOWN) / illmore / KOJOE / CHICO CARLITO / SHOHEY from THREE1989 / pinoko / ケンチンミン / 15MUS / DJ KRO & Chilly Source ...and more
主催 Manhattan Records / Chilly Source
問い合わせ WWW TEL 03-5458-7685 / マンハッタンレコード TEL 03-3477-7166

Manhattan Recordsとビートメイカーillmore等が所属しているライフスタイルレーベルChilly Sourceが共同で主催するイベント。KANDYTOWN、Aun beatz、ズットズレテルズのラッパーでありながらDJ/トラック制作も手掛ける“Ryohu(呂布)”の出演も決定。

当日はDJ HASEBE、AKLO、illmore、pinoko、ケンチンミン、15MUS、DJ KRO...などManhattan Records、Chilly Sourceがこれまで作品に携わってきたアーティストや、1st ALBUMリリース予定のFNCY、そして、illmoreの客演としてKOJOE、CHICO CARLITO、SHOHEY from THREE1989が出演する。

イベント会場では毎週生配信しているDJ MIXが人気のChilly SourceリーダーDJ KROによる会場限定MIX CDが発売される予定で、マンハッタンレコードでは「会場限定MIX CD」とセットになったお得な前売りチケットは販売中。

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