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KMNZが向かうアバター、バーチャル文化のその先

YouTubeというプラットフォームを越えて

2人の個性はYouTube以外の場所でも存分に発揮されている。例えばTwitterだ。

YouTubeに動画を投稿するだけでなく、SNSを巧みに使いこなすことはVTuberたちにとってほとんど必須の技能となっている。彼らのファンは動画だけでなくTwitterの何気ないツイートや彼らのリプライを通して彼らの人格を感じ取り、VTuber同士のやり取りからキャラクターの関係性を想像して楽しむからだ。

KMNZのTwitterからも2人の個性はにじみ出てくる。LIZさんのつぶやきからは引きこもりがちな性格がにじみ、可愛らしい歌声からは想像もつかないお下品なネタで溢れている(もちろん配信などを見ればすぐに分かるのだけれど)。 一方のLITAさんの方もしっかり告知などもおこないつつ、LIZさんよりは抑え気味ながらもネタにはしっかり乗っかる。 暴走しがちなLIZさんの手綱を取りながら楽しんでいるLITAさんという2人の関係性がありありと浮かんでくる。

このような個性が発揮されるのは、もちろんSNS上のやり取りだけに留まらない。2人はバーチャル空間にもTV番組にも、現実世界にだってその姿──アバターで登場するからだ。

KMNZが現実世界に登場したことは何度かある。「KMNHZ MEETUP」と題して催されたKMNHZ(ケモノヘッズ)・KMNZファンとの交流会や、大阪で開催された「m-flo presents OTAQUEST LIVE」や秋葉原MOGRAでおこなわれた「冬〆」のようなライブイベントにも参戦。シンガポールで開催されたアジア最大のアニメフェス「C3 Anime Festival Asia 2018」へも登場し、日本だけでなく海外にもVTuberという文化を広める役割を担った。

この他にもTOKYO MXで放映されていた番組「VIRTUAL BUZZ TALK!」ではMCをつとめるなど、積極的にVTuber文化をファンのみならず外へと広げようという活動が印象的だ。

ハンドルネーム、ペンネームの向こう側としてのアバター

もちろん外部への布教だけでなく文化をより発展させる取り組みも忘れない。

VTuberのライブ配信アプリ「REALITY」で配信されている音楽番組「ぶいおん!!」ではシンガーソングライターのオーイシマサヨシ大石昌良)さんと共にMCを担当し番組を盛り上げている。
ぶいおん!! vol.01 GUEST: ときのそら
VRライブなど最新の技術にもしっかり追いついており「KMNZ VR LIVE in clusterとしてバーチャルイベント空間「cluster」上でのライブを既に2回成功させている。

以上のような活動はこのようにまとめることができる。アーティスト名としての「KMNZ LITA」と「KMNZ LIZ」の活動は我々がSNS上でハンドルネームを持って活動することと、筆者がペンネームで活動していることと大きな違いはない。

しかしハンドルネームでなければ呟けないこと、アーティスト名だから輝く才能があるように、アバターだからこそ真価を発揮するものがある。彼女たちのケモミミやシッポのついた可愛らしいアバターも、我々のTwitterアイコンの延長線上にあって、彼女たちは誰もがアバターを持つ時代の先触れとしての役割を果たしているのではないだろうかと。

「REALITY」上でのライブ配信では視聴者が作成したアバターが観客として客席に並んでいたり、抽選で配信中のステージへ上がり人気VTuberと2ショットを撮ることができる、という取り組みがおこなわれていた。

「REALITY」は有名なVTuberがイベントを配信するアプリという印象が強いが、一般の視聴者がアバターを作成し、スマホ1つで生配信をおこなうケースも増えてきているようだ。

実際、4月8日~4月14日にREALTYで開催されたフェス「REALITY FESTIVAL 2 >DIVE」ではREALTYの機能を使ってアバター配信をしてきた一般の配信者が主役としてステージ上で歌やダンスなどを披露していた。 同じくバーチャルイベント空間サービス「cluster」でもステージを飛び出した彼女たちとVR空間上で触れ合うことができた。

今はまだ処理や演出の都合か、一般参加者は定形のアバターにアイコンをつけたものでしかライブイベントには参戦できないが、きっといつかは誰もがみな思い思いのアバターで――思い思いの自分自身で彼らのライブへ参加する時代が来るはずだ。

アバターとストリートファッションの親和性

"思い思いのアバター"とは何だか急に話が大きくなってしまった気がする。

多くの人は3Dアバターをつくろうなんて真剣に考えたこともないだろうし、技術難度的にもまだまだ先の話だろう。

アバターの作成、ゲームの操作キャラのキャラメイキングは、たとえばファッションにも似ている。好きな服を選ぶように好きなアバターを選ぶ。見た目だけで強さには影響しない限定装備に課金するのだ。オシャレ感覚という意味ではそこに大差はない。

KMNZはKMNSUPPLY(ケモノサプライ)というオフィシャルグッズストアをWeb上に構えている(外部リンク)。

KMNSUPPLY

そこでは彼女たちの世界観、ストリートファッションをモチーフにしたパーカーやTシャツなどのアパレルグッズがシーズンごとに販売されている。

こういった動きはファンの目にはどのように映っているのだろう。グッズが即完売した、というだけでなく彼女たちの世界観はどのように受け止められているのか。

KMNZのファン・KMNHZたちの間では#KMNHZSTORYT(外部リンク)、#KMNHZ学園(外部リンク)というハッシュタグが使われている。

これはKMNZの世界観をモチーフにしてオリジナルキャラクターや物語をつくろうという試みで、たとえばそこにはケモミミの生えたHZたちがストリートファッションに身を包んだイラストなどが投稿されている。

オリジナルキャラクターにストリートファッションを着せることと、自身のアバターを作成することや自身がストリートファッションを着込むこととの距離感は如何ほどのものだろう。KMNZは、そしてそのファンたちは境界を飛び越えることができるだろうか。

部外者である筆者にそれは分からない。しかし信じることはできるし、信じるに足る理由もある。
VR - Virtual Reality / KMNZ [Official Music Video] #KMNZVR
3月1日に公開された「VR - Virtual Reality」のMVは現実世界に飛び出したKMNZの2人がこちらにポーズを取るカットで締められる。

歌詞だけを追うならバーチャルリアリティ、仮想現実や実質的現実と訳されるものの可能性について歌った作品と受け止められるが、MVはむしろ2つの現実が混ざりあった世界観を強調して表現しているようだ。

4月8日にリリースしたFuture Funkの代表格・Moe Shopをフューチャリングしたオリジナルソング「Augmentation」はタイトル/歌詞共にそのような世界観をより強く印象づける。
Augmentation (feat. Moe Shop) / KMNZ [Official Music Video]
タイトルのAugmentation(オーグメンテーション)は増加や増大を意味し、AR――Augmented Reality(拡張現実)という単語を意識している

繰り返されるGLITCH(グリッチ)は故障という意味から転じ、楽曲制作の素材としての故障音やノイズ音を指したり、あるいはゲームのキャラクターが壁に埋まったり空に飛んでいったりというようなプレイヤーが意図的に再現することのできるバグを指す。

最後に歌詞を引用してこの記事を締めくくろう。

グリッチを利用したかのような彼女たちの活躍は、きっとVTuberファンの垣根や国境、バーチャルもリアルも飛び越えて、インターネット文化やストリート文化の境界もなく思い思いの自分自身で過ごせる新しい街、けもみみの国へと我々を連れていってくれるに違いない。

TOKYO GLITCH 仮想と現実溶け出していくの境界線
TOKYO GLITCH シミュレートされる 君と僕の新しい街
TOKYO GLITCH データとハート 重なりだすMixed Reality
TOKYO GLITCH 欲望と妄想 新しい街を生む情報

KAI-YOU PremiumでninoPの連載開始

サブスクリプション型メディア「KAI-YOU Premium」にて、KMNZのプロデューサーninoPさんの連載がスタート! KMNZでの実践を起点に、バーチャルという世界の文化と経済の在り方、その未来を考察していきます。こちらも要チェック!
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