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POPなポイントを3行で

  • 「とらのあな」約25年の売り上げ上位作品は?
  • 「平成のオタクカルチャー」を振り返る
  • 「ワンピース」がランクインしない、とらのあな固有の文化

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創業24年「とらのあな」の総売上から振り返る、平成オタク史
「総額1億円超え! とらのあな 平成最後の大感謝祭」というものが、とらのあなで始まるそうです。1億という数字もすごいけど、「とらのあなの『平成最後』」って、絶対特殊でしょそれ。他書店とルート違うでしょ。

かつて(というか今もですが)、僕はとらのあなが地元にできてから、コミックスと同人誌を買いに、足繁く通っていました。「その時欲しいものは買わないとだめだ」という意識があったので値段は見ない。気になったら後の自分のために買う、という生活を送っていました。

とらのあなでは、どの時期も、売れ線のコミックスやラノベが大々的に商品展開されていました。ぼくが今もなお愛している作品『けいおん!』が、めちゃくちゃ売れていたことは今でも鮮明に覚えています(もちろん特典目当てに買いに行きましたとも)。

とらのあなといえば、僕にとって2000年代~2010年代のオタク文化のど真ん中にあるお店です。

ここで売れているものを見れば、平成中盤から後半のオタクコンテンツの潮流を垣間見ることができるのではないか?

ということで今回は、平成に入ってから全ての(※とらのあなが開店して以降)、総売上上位作品を年代順にピックアップしながら、「オタク・サブカル書店から見える平成オタクカルチャー」を振り返ってみようと思います。

同人誌・商業誌、それぞれの商材別売り上げ集計データをもとに記載
※データは「とらのあな」提供。詳細な売り上げ・ランキングは非公開
※年表記はコミックス発売日にあわせています

文:たまごまご 編集:和田拓也

2002年(平成14年)

『げんしけん』(2002年~2016年)

大学のオタクサークルに集まった面々のモラトリアムと直面する現実を描く『げんしけん』(木尾士目)は、1巻スタートが2002年。「二代目」の21巻で完結したのが2016年でした。

当時のオタクで、『げんしけん』が青春の一冊だったという声はめちゃくちゃ多いはず。ダラダラとゲームをするといった「何もやらないことの楽しさ」と、同人誌をいざ作ろうとしても作れない「努力のできない後ろめたさ」がぶつかりあう、生々しいオタクの喜びと苦悩を描いた作品。

同時に、時が経つと後輩のオタク感覚も一変し、90年代知識型コアオタクの先輩・斑目が静かに苦しむ様子に、「俺達(おもに30代以上)の青春は一段落したんだ」と胸を痛めた人も多いはず。

なかでも、第一部の完結巻である『げんしけん9 特装版』(2006年)は、売上上位の中でも一際目立ちました。

主人公の笹原に彼女ができ、社会人として就職する、現実を突きつけられる巻です。「二代目」が世代交代をし、コンプレックスをこじらせすぎない10年代オタク女子たち、卒業して働く先輩たちが中心なのも含めて、平成のオタク史を語るには欠かせない作品です。

2003年(平成15年)

『よつばと!』(2003年~)

今もなおロングヒットを続けている『よつばと!』(あずまきよひこ)は、もう15年前から連載が続いています。とーちゃんとよつばの二人暮らしの日常を描く、観察記のような作品。

刊行スピードは速くないものの、売り上げトップクラスの作品として走り続けています。

同じくあずまきよひこさん作の『あずまんが大王』は、萌え4コマ漫画の最初期作品とされることが多く、オチがなく、可愛い女の子だらけのほんわかとしたテンションに魅了される人が続出しました。当時の4コマ漫画にはこういったノリの作品が少なかったので、非常にエポックメイキングな作品でした。帯の“原因不明の大ヒット作”という煽り文も、かなり興味深い。

『涼宮ハルヒの憂鬱(文庫)』(2003年~)

日々の生活に倦怠感を抱えるごく普通の男子高校生・キョンと、傍若無人なヒロイン・涼宮ハルヒらが、「SOS団」での活動で巻き起こる喧噪や非日常を通して、一人ひとり成長するSFジュブナイル。

ヤマト世代、ガンダム世代、エヴァ世代ときて、00年代は日常と非日常、倦怠感とが入り交じる「やれやれ系」なハルヒが大きな影響を与えた世代だったと、個人的に感じています。

そしてSOS団という閉じた空間の心地よさよ! なにをするわけでもない場所は、「オタクの理想郷」でもありました。『究極超人あ~る』(1986年)の光画部、『げんしけん』の現代視覚文化研究会、『涼宮ハルヒの憂鬱』のSOS団とを比較してみよう。ハルヒシリーズはほぼ全作が売上の上位入りを果たしています。

2004年(平成16年)

『真月譚月姫』(2004年~2010年)

『Take moon―武梨えりtypeーmoon作品集』(2004年)

このころは、同人ゲーム『月姫』の黄金期。能力に苦しむ少年、吸血鬼、猟奇殺人事件を題材とした内容を原作とし、作画を担当した佐々木少年の『真月譚月姫』シリーズ。

作者がこれまで『月姫』のアンソロジーで描いていた経験を活かしつつ、分岐するそれぞれのルートもうまく盛り込み、原作の良さを損なうこと無く再現。型月(制作元であるゲームブランド「TYPE-MOON」の略称)ファンに大好評を博しました。

同時に、『かんなぎ』の武梨えりさんによるアンソロジー作品集も売上上位に。このあたりがとらのあなの購買層を強く感じさせます。

『月姫』が18禁同人作品だったにも関わらず、その関連書籍(一般向け)が売上上位となるくらいにヒットしていたというのも興味深い。90~00年代を経験したオタクなら、「エロゲはオタクの嗜みだった」みたいに感じる人がかなり多いと思うのですが、いまの20代の方たちと話していると、エロゲがオタクストリームの重要文化だったという状況に、ピンとこない人が割といることに気付かされました。

2005年(平成17年)

『らき☆すた』(2005年~)

言わずと知れた、オタク系作品の金字塔。女の子をメインの登場人物とした、ゆるーく、ふわっーとしたテイストの4コマ漫画の人気を牽引した作品の一つ。「チョココロネをどっちから食べるか」という会話で読者が楽しめるかどうかという、掴みどころのないテンションは当時衝撃を与え、ネットでの論議を生みました。

またこの作品には、随所にオタク論が練り込まれています。特に最近は、毒舌気味にズバッと鋭く切り込むことも多い、侮れない作品です。

また京アニ(アニメ制作会社の京都アニメーション)によるアニメ化や、鷲宮神社の聖地化による地域活性化も大きく、さらに2006年あたりからのニコニコ動画MAD文化との親和性で、オタクの旗印としての存在感はドカンと膨れ上がりました。

ネット上で、『らき☆すた』OP曲の「もってけセーラー服」や、『魔法先生ネギま!』(赤松健)のOP曲『ハッピー☆マテリアル』を、オリコン一位にしようという運動があったのも懐かしい。

今でこそアニソン曲が上位になることが増えましたが、当時は「サブカルチャーがメインカルチャーに殴り込む」といった熱意が、掲示板やニコニコで湧き上がっていました。

『こどものじかん』(2005年~2013年)

小学生の教育と児童の性のあり方というセンセーショナルなトピックを描き、ブレイクした作品。

性的ワード連発のエロティシズムに満ちてはいるものの、中身は真剣に子供の性と心を描いた、教師と生徒の物語として話題となりました。

まだSNSが発展していなかった時期に、テキストサイトやブログがこの作品の話題をこぞって書いたのも、この作品が一気に広まった要因の一つでした。

『ひだまりスケッチ』(2005年~)

高校の美術科に通う少女たちが、アパート「ひだまり荘」でわいわい暮らす青春物語。4コマ漫画専門雑誌『まんがタイムきららキャラット』(芳文社)の代表選手で、まだ連載が続いている上に、作風も安定している作品です。

それぞれ姉妹誌である『まんがタイムきらら』(2002年)、『まんがタイムきららキャラット』(2003年)、『まんがタイムきららMAX』(2004年)、『まんがタイムきららフォワード』(2006年)、『まんがタイムきららミラク』(2011年)、そして後述の『まんがタイムきらら☆マギカ』がありますが、この「きらら一族」を覚えるのはオタクの必修科目でした。

その他、2017年まで続く週刊少年サンデーの長期連載漫画『ハヤテのごとく!』も何冊も上位に入っています。とらのあなの文化圏では『ワンピース』よりも『ハヤテのごとく!』が話題、というのは興味深い部分。

2006年(平成18年)

『かみちゅ!』(2006年~2007年)

神様になってしまった中学生の少女の、ちょっと不思議で、それでいて等身大な日常を描いた作品。2巻完結ながらも売上上位に入っています。

作者は鳴子ハナハルさん。のちにエロマンガのジャンルでも、ヒットを飛ばす作家です。実際に、マンガの描き込みクオリティの高さは半端では無く、年代によるギャップが一切ない作風なので、読んでない人は今からでも是非読もう!

『GA 芸術科アートデザインクラス』(2006年~2016年)

こちらもきららシリーズの大黒柱。芸術科に通う5人の女子生徒を中心とした、日常系4コマ。『ひだまりスケッチ』や『GA』などと並び、4コマの代表にあげられる作品

女の子キャラがかわいいというだけではなく、未来を見据えて少女たちが成長をする物語であるという点には注目したいところ。美術解説ネタなども含め、かなり読み応えがあります。美術ネタのマンガらしく、本の中のカラーページが凝っているのも要チェックなポイントです。

2007年(平成19年)

『とある科学の超電磁砲』(2007年~)

今も大人気の「超電磁砲(レールガン)」。超能力開発実験が行われる学園都市を舞台に、トップクラスの能力者である少女・御坂美琴を中心に学園の事件を解決していくストーリー。

正確には、『とある魔術の禁書目録』(と書いてインデックスと読む)の外伝・スピンオフ作品です。10年越しに第3期アニメ化が決まっているという人気っぷり。「超電磁砲」はアニメOP曲の「only my railgun」「LEVEL5-judgelight-」(fripSide)などが話題となり、ニコニコ動画での歌ってみた・弾いてみた文化とも密接につながっていきます。

『魔法少女リリカルなのはStrikerS THECOMICS』(2007年)

アニメが原作の、魔法少女が熱血思想でガンガン殴り合う、硬派なガチンコアクション作品。ヒロインの声優・田村ゆかりさんいわく「魔砲少女アニメ」。コミカライズというよりは、アニメ『A's』と『StrikerS』の間を補完する内容となっています。

「なのは完売!」という嘘情報によって、物販在庫情報をめちゃくちゃにする撹乱ネタが、コミケになるたびに出ていたなぁ。当時はスマホがない時代だから(iPhone3Gの国内発売は2008年)情報を調べるのが難しい、というのがよく反映されているネタ。

魔法戦記リリカルなのはForce』(2010年)『魔法少女リリカルなのはvivid』(2010年)も売り上げ上位に。なかでも「vivid」は、2017年の20巻まで続く長期連載作品です。

その他、テキストサイトやブログで大いに盛り上がった、セクシー系ラブコメの『KIss×sis』『キミキス―various heroines』も上位に入っていました。

2008年(平成20年)

『東方儚月抄 Silent sinne』(2008年)

同人作品である「東方project」シリーズの公式コミカライズが売上上位というのは、とらのあながたどってきた文化の道筋を感じさせます。

シューティングゲーム『東方紅魔郷』が2002年に同人作品として発表されて以降、次々と「東方project」シリーズ作品が販売されました。その後同シリーズは作者が二次創作を全面的に認めたことで、同人文化として爆発的な盛り上がりを見せます。
そして数多のファンの期待を一身に受け、秋★枝さんが描いた公式コミックスが、この『東方儚月抄』。

ASCII.jpによる当時の「とらのあな売り上げランキング」を見ると、「驚異的な販売数」で「ダントツ一位」だったとのこと。この後の『東方三月精』(2010年)『東方茨歌仙』(2011年)も売上は上位となっています。(外部リンク
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