人気バンド・SEKAI NO OWARIのステージ映像、舞台コンセプトデザインなどを手がけた塚原重義監督による、オリジナルアニメ映画『クラユカバ』。
しかもこのアニメ、“体験型”だというのだ。
今回は、このアニメ映画『クラユカバ』について、塚原重義監督に独占インタビュー!
さらに、クラユカバの舞台をVRで“体験”もしてきた。
今回は、その塚原監督がVRを活用した新作オリジナルアニメ映画を制作しているということで、東京茅場町のFuture Tech Hub へインタビューしに行ってきた。クラユカバ / KURAYUKABA Teaser PV 「始動篇」
『クラユカバ』は、塚原監督の得意とするスチームパンク感あふれる背景美術で構成された世界観が見どころ。伝奇めいた歴史改変SFファンタジーとのこと。
なるほど。『端ノ向フ』や『押絵ト旅スル男』といった、近年の塚原監督の文学色の濃い作品と比べて、今回は王道の冒険エンターテインメントになりそうだ。『端ノ向フ』
『押絵ト旅スル男』
作品の舞台「扇町」は王子がモチーフだ。プリンスではない。東京北区・王子だ。
路面電車が走り、飛鳥山公園の古墳や謎のモノレールなど、散歩マニア憧れの街でもある。
フムフム。他にもいろいろと聞きたいことがあり、腰を落ち着かせてインタビューを、と思ったらスタッフさんにオフィスの奥へ案内される...。
そこに待ち構えていた塚原監督。勧められるがままに案内されたデスク上にはVRのヘッドセットが置いてある。
まずはこちらを体験してほしいとのことで、筆者はヘッドセットを装着してもらい、両手には何やらコントローラーのようなものを握らされた。
次の瞬間、筆者は王子にワープしていた。いや違う、正確には『クラユカバ』の舞台である「扇町」という舞台に立っていたのだ...! まさに、ワープした感覚というべきか、体ごと意識全体がアニメの中に入ってしまった感じだ。
うわ高い! 普通にこわいんですけど。塚原さん曰く「みなさん、そう言われます」。 屋根の上にはセピア色の青空が広がっている。自分の周りの状況を一通り把握して、改めて認識した。
筆者は『クラユカバ』の世界に潜り込んでしまったのだ。 両手に握っているコントローラを使ってこの場所の歩き方を教わる。(進めた!)まっすぐ桟橋を登ると更に高い位置に到達し、振り向くとさっきまで立っていた場所は、向こう岸の眼下に見えている。どこか王子に似ているような気もする。
下に流れているのは川か? とにかく街全体が水に浸っている。となりには主人公キャラが立ってこっちを見ている。 こうして生まれてはじめてのVR体験は、なんとも不思議な感覚で始まった。
さらに原作者であり監督の塚原さん本人に案内されるというリッチな経験をしながらも、そんな時間を噛みしめる余裕はなく、扇町と呼ばれる物語の舞台をただ夢中になって探検する。 途中、木のベンチに居座ったかわいいPRマスコット「白キチ」と「赤フク」に出会った。デザインがなんともいえずノスタルジック。赤フクを持ち上げてみた。お、持てる! しかし、離れない…。
ちなみにこのPRマスコットの赤フクと白キチは日々『クラユカバ』の広報活動に勤しんでいるらしい。 さらに進むとその奥には「扇座」という名の映画館があるではないか。VR空間に映画館。
早速、中に入ると、塚原監督の過去作品が上映されている。座席もあるので、座ってみると、この空間の広がりや暗さ、リアルな映画館にいるのと同じ感覚だあ!
ここでは、昼夜を問わず、またスケールを問わずにいろいろな催し物が開催されるのだろう。
この映画館にはちゃんと売店もあり、古めかしい看板が妖しく点灯していた。一体何が買えるのだろうか…。
扇座を出て、またそぞろ歩いていると、小さなギャラリーのような空間へ促された。「水ノチマタ」と呼ばれているゲートへ、えいっと飛び込む。
70年代のアニメやSF特撮を浴びて育った筆者には、この別空間へ飛び込むワープ体験に、非常に興奮を覚える。 「水ノチマタ」に降り立つと、そこは古ぼけた遺跡のような巨大な空間。その奥まで続く山道と縁日、天井は真っ暗でみえないが無数の提灯が飾られている。その懐かしさに、無垢だった少年のころを思い出した。
しかし、まだ制作途中という山道には、ところどころ、白い箱が置いてあり、それを見てここはVR空間だったことを再認識する。
この「水ノチマタ」は巨大な建物のような空間にあるのだが、たくさんの提灯がぶらさがっており、手元は非常に明るい。
頭上には桟橋が見えるが、そこにつながる道はまだないのだそうだ、残念。奥の方には、路面電車が通りそうな線路がかすかに見える。 とにかくこの空間は、どこかにありそうで、やはりこのVR空間にしか存在しない、塚原ワールドであった。まさに作品のコンセプト「実はすぐ隣に非日常は存在する」をそのまま体験しているのだ。
早朝に夢をみているような、懐かしさとドキドキの感覚といえばよいか。
頭も体も慣れてきたころ、「そろそろ、こちらへ戻ってください」という合図が。あまり浸りきっていると、こちらの世界へ戻れなくなる? そんなB級SF映画のようなことが起こる時代が来るのか?そんな思いが頭をよぎった…。【開発中】試製クラユカバVR”水-二六七八號”先行映像
筆者初の『クラユカバ』のVR体験はここで一旦終了。高揚感と余韻に浸ってぼーっとしていると、塚原監督より「どうでした?」と話しかけられ、はっと我に帰る。
一度作成した3Dデータであれば映像以外の用途にも流用できるはず…ということで、とりあえずVR空間に置いてみたという経緯です。あくまで副産物ですね。
子供の頃、某科学館にある南極観測船へよく行きましたが、入れない通路があったりして「この先どうなっているんだろう?」とワクワクしたものです。
連絡先はTwitter まで。
なるほど、自身の作品を、単に観るだけでなく、その世界へ参加してもらいその空気感や臨場感を体感してもらおうという塚原さんの意志がカタチになったのが、『クラユカバ』のVR空間なのであった。
この作品、またはこの世界に入ってみたい! と思った方に朗報。近々この作品の一部をVRChatにて公開するらしい! 情報は塚原重義Twitterか、記事の続報を待ってほしい。
オリジナルのアニメ作品としての完成を目指し、このたびクラウドファンディングを開始した。 今後の新しいアニメの制作と表現を、一緒に挑戦しつくっていきたいという想いから始まったファンディングだ。
支援のリワード(報酬)の中には、「VR舞台への名入り提灯奉納コース」も。
実は下町育ちの筆者は、VRで体験した時、真っさらな提灯が気になっていた。縁日の提灯には神社へ奉納した者の名前が書いてあったりするものだからだ。
これがリワードになっているのは、憎い演出。
その他、作画監督の皆川一徳さん、アニメーター・りょーちもさんらが協力する豪華リターンもあるので、気になる方はチェックしてみてほしい。
アニメを制作すると同時並行に、このVRコンテンツのようにアニメの素材をうまく再利用して、本篇を中心に、いろいろな関連コンテンツやイベントが動きだし、作品に多様な厚みを加えていく。『クラユカバ』は、そんな仕組みを採用している。
『クラユカバ』はただ娯楽作品として消費するだけでなく、独自のカタチで観客にも擬似体験してもらうというチャレンジをしている希少な作品だ。
今回のVRはその集大成でなく、ほんの始まりだ。
この作品がどう始まって、最後はどうなるのか。そしてどんなカタチで我々を塚原幻術に引き込んでくれるのか? 先が全く見えないからこそワクワクしている。
しかもこのアニメ、“体験型”だというのだ。
今回は、このアニメ映画『クラユカバ』について、塚原重義監督に独占インタビュー!
さらに、クラユカバの舞台をVRで“体験”もしてきた。
『クラユカバ』塚原監督インタビュー
『クラユカバ』を手がけた塚原監督は、スチームパンクの世界観や日本のレトロカルチャーへの造詣が深い映像作家である。今回は、その塚原監督がVRを活用した新作オリジナルアニメ映画を制作しているということで、東京茅場町のFuture Tech Hub へインタビューしに行ってきた。
主人公の壮太郎が体験する冒険を通して「実はすぐ隣に非日常は存在する」....そんな“気分”を喚起し、対比としての「なんでもない日々」を生きることの面白さを表現したい。塚原監督は、『クラユカバ』にそんな思いを込めた。この『クラユカバ』という作品は、退屈な日々を過ごす私立探偵が、ある日街の地下世界へと足を踏み入れ、謎めいた少女タンネと出会って彼女が仕切る謎の装甲列車ソコレと共に、その地下世界「クラガリ」でいろんな奴らと戦ったり、友達になったりしながら非日常的な冒険をするという話なんです。
なるほど。『端ノ向フ』や『押絵ト旅スル男』といった、近年の塚原監督の文学色の濃い作品と比べて、今回は王道の冒険エンターテインメントになりそうだ。
路面電車が走り、飛鳥山公園の古墳や謎のモノレールなど、散歩マニア憧れの街でもある。
フムフム。他にもいろいろと聞きたいことがあり、腰を落ち着かせてインタビューを、と思ったらスタッフさんにオフィスの奥へ案内される...。
アニメの中に入ってアニメの世界を体験するって?
案内されたのは、普段塚原監督が作業をしているワークステーションらしい。PCディスプレイの周りには塚原監督自作のPC周辺機器がところ狭しと配置されている。そこに待ち構えていた塚原監督。勧められるがままに案内されたデスク上にはVRのヘッドセットが置いてある。
まずはこちらを体験してほしいとのことで、筆者はヘッドセットを装着してもらい、両手には何やらコントローラーのようなものを握らされた。
次の瞬間、筆者は王子にワープしていた。いや違う、正確には『クラユカバ』の舞台である「扇町」という舞台に立っていたのだ...! まさに、ワープした感覚というべきか、体ごと意識全体がアニメの中に入ってしまった感じだ。
「クラユカバ」の世界を遊びたおせ!
僕が立っていたのは、結構高い場所らしい桟橋の上。眼下には川が流れており、向こうの建物を見上げると、そこには『クラユカバ』に登場するキャラが立っている。うわ高い! 普通にこわいんですけど。塚原さん曰く「みなさん、そう言われます」。 屋根の上にはセピア色の青空が広がっている。自分の周りの状況を一通り把握して、改めて認識した。
筆者は『クラユカバ』の世界に潜り込んでしまったのだ。 両手に握っているコントローラを使ってこの場所の歩き方を教わる。(進めた!)まっすぐ桟橋を登ると更に高い位置に到達し、振り向くとさっきまで立っていた場所は、向こう岸の眼下に見えている。どこか王子に似ているような気もする。
下に流れているのは川か? とにかく街全体が水に浸っている。となりには主人公キャラが立ってこっちを見ている。 こうして生まれてはじめてのVR体験は、なんとも不思議な感覚で始まった。
さらに原作者であり監督の塚原さん本人に案内されるというリッチな経験をしながらも、そんな時間を噛みしめる余裕はなく、扇町と呼ばれる物語の舞台をただ夢中になって探検する。 途中、木のベンチに居座ったかわいいPRマスコット「白キチ」と「赤フク」に出会った。デザインがなんともいえずノスタルジック。赤フクを持ち上げてみた。お、持てる! しかし、離れない…。
ちなみにこのPRマスコットの赤フクと白キチは日々『クラユカバ』の広報活動に勤しんでいるらしい。 さらに進むとその奥には「扇座」という名の映画館があるではないか。VR空間に映画館。
早速、中に入ると、塚原監督の過去作品が上映されている。座席もあるので、座ってみると、この空間の広がりや暗さ、リアルな映画館にいるのと同じ感覚だあ!
ここでは、昼夜を問わず、またスケールを問わずにいろいろな催し物が開催されるのだろう。
この映画館にはちゃんと売店もあり、古めかしい看板が妖しく点灯していた。一体何が買えるのだろうか…。
扇座を出て、またそぞろ歩いていると、小さなギャラリーのような空間へ促された。「水ノチマタ」と呼ばれているゲートへ、えいっと飛び込む。
70年代のアニメやSF特撮を浴びて育った筆者には、この別空間へ飛び込むワープ体験に、非常に興奮を覚える。 「水ノチマタ」に降り立つと、そこは古ぼけた遺跡のような巨大な空間。その奥まで続く山道と縁日、天井は真っ暗でみえないが無数の提灯が飾られている。その懐かしさに、無垢だった少年のころを思い出した。
しかし、まだ制作途中という山道には、ところどころ、白い箱が置いてあり、それを見てここはVR空間だったことを再認識する。
この「水ノチマタ」は巨大な建物のような空間にあるのだが、たくさんの提灯がぶらさがっており、手元は非常に明るい。
頭上には桟橋が見えるが、そこにつながる道はまだないのだそうだ、残念。奥の方には、路面電車が通りそうな線路がかすかに見える。 とにかくこの空間は、どこかにありそうで、やはりこのVR空間にしか存在しない、塚原ワールドであった。まさに作品のコンセプト「実はすぐ隣に非日常は存在する」をそのまま体験しているのだ。
早朝に夢をみているような、懐かしさとドキドキの感覚といえばよいか。
頭も体も慣れてきたころ、「そろそろ、こちらへ戻ってください」という合図が。あまり浸りきっていると、こちらの世界へ戻れなくなる? そんなB級SF映画のようなことが起こる時代が来るのか?そんな思いが頭をよぎった…。
さて、あらためて監督へのインタビューを再開!
しかし未だ余韻に浸りつつ、頑張って体験型アニメの開発についていくつか質問をしてみた。Q. アニメの世界を VR内で再現しようと思ったきっかけはなんだったのですか?
塚原監督 もともと『よろず骨董山樫』(2011)や『端ノ向フ』(2012)の頃から、奥行きのある世界を表現するため、一部背景に簡易な3Dを用いていました。一度作成した3Dデータであれば映像以外の用途にも流用できるはず…ということで、とりあえずVR空間に置いてみたという経緯です。あくまで副産物ですね。
Q. 作品世界の VR空間化について工夫した点とは?
塚原監督 空気感を出すため、ディティールが見えすぎないように、細部をカゲで潰したりしています。また、あえて進入できない場所を多く設定し、ユーザーの想像力を刺激するよう意識しています。子供の頃、某科学館にある南極観測船へよく行きましたが、入れない通路があったりして「この先どうなっているんだろう?」とワクワクしたものです。
Q. 自分はその「塚原幻術」にまんまとはまったわけですね。逆に苦労した点とかあれば。
塚原監督 全て! 何もかもが初めての作業なので、覚えることが多すぎた。まだわからないことも多いので、すでに詳しいVR開発者さん、モデラーさんなどいましたら是非、情報共有しましょう!!連絡先はTwitter まで。
Q. VRの中での「クラユカバ」で、おすすめの遊び方はありますか?
塚原監督 とりあえず中に入ってもらって、まだ語られていないストーリーを妄想したり、緊急イベントに参加したり。または我々スタッフが実際にロケハンなどしているところに立ち会ってしまうかもしれない、そんな特別な体験を目指して絶賛開発中です!なるほど、自身の作品を、単に観るだけでなく、その世界へ参加してもらいその空気感や臨場感を体感してもらおうという塚原さんの意志がカタチになったのが、『クラユカバ』のVR空間なのであった。
この作品、またはこの世界に入ってみたい! と思った方に朗報。近々この作品の一部をVRChatにて公開するらしい! 情報は塚原重義Twitterか、記事の続報を待ってほしい。
ファンの方々とつくっていく作品にしていきたい
従来のアニメとは異なる挑戦をしている塚原監督の『クラユカバ』には、さらに新しい展開が始まっている。オリジナルのアニメ作品としての完成を目指し、このたびクラウドファンディングを開始した。 今後の新しいアニメの制作と表現を、一緒に挑戦しつくっていきたいという想いから始まったファンディングだ。
支援のリワード(報酬)の中には、「VR舞台への名入り提灯奉納コース」も。
実は下町育ちの筆者は、VRで体験した時、真っさらな提灯が気になっていた。縁日の提灯には神社へ奉納した者の名前が書いてあったりするものだからだ。
これがリワードになっているのは、憎い演出。
その他、作画監督の皆川一徳さん、アニメーター・りょーちもさんらが協力する豪華リターンもあるので、気になる方はチェックしてみてほしい。
アニメを制作すると同時並行に、このVRコンテンツのようにアニメの素材をうまく再利用して、本篇を中心に、いろいろな関連コンテンツやイベントが動きだし、作品に多様な厚みを加えていく。『クラユカバ』は、そんな仕組みを採用している。
『クラユカバ』はただ娯楽作品として消費するだけでなく、独自のカタチで観客にも擬似体験してもらうというチャレンジをしている希少な作品だ。
今回のVRはその集大成でなく、ほんの始まりだ。
この作品がどう始まって、最後はどうなるのか。そしてどんなカタチで我々を塚原幻術に引き込んでくれるのか? 先が全く見えないからこそワクワクしている。
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ShigeoTachibana
アニメ映画のプロデュースを夢見るグラフィクデザイナーです。アートやアニメ、映像などについて、観たり、読んだり、聴いたりしたことを自分なりに解釈し、こちらに意見などを投稿していきたいと思ってます。新しい技術などもじゃんじゃんレポートしていきたいです。
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