1997年から2006年までの9年間にわたって連載された傑作漫画『からくりサーカス』が10数年の時を経てアニメ化ということで、読者は多いに沸き立った。筆者もその一人だ。
発表の翌週に開催されたアニメイベント「AnimeJapan 2018」のトークイベントには、原作者である藤田和日郎さんが登壇。
約1時間にわたって、クリエイティブ・プロデューサーの丸山正雄さん、TVアニメを企画したツインエンジンのアニメプロデューサー・木村誠さんと共に、これから本格的に始動する制作の裏側を語った。
また、個別インタビューの時間もいただいたので、トークイベント+インタビューという大ボリュームでお届けするっ!
2015年から2016年にかけては『うしおととら』がアニメ化されたことも記憶に新しい。そこから2年。2006年に完結した『からくりサーカス』も12年の時を経てアニメ化されることが判明し、ファンには大きな反響をもって迎えられた。TVアニメ『からくりサーカス』ティザーPV
そんな期待をひっさげて藤田和日郎さんが登場するステージに集まったのは、老若男女幅広い年齢層のファンたち。中には「祝アニメ」という手書きボードを掲げる人の姿も。
彼らを前に、藤田和日郎さんは開口一番「こんなにいる! 嬉しいな〜興味持ってくれて。ありがとう」と感謝を隠せない様子。 司会に話を振られるも「漫画家って本来こういうところに来る人じゃないでしょ!? 机の上が一番落ち着くの! だから落ち着くまでちょっと待ってね!」と元気よく言い放って会場を和ませる。
とはいえ徐々にエンジンのかかってきた藤田さんは「横で待ってるタイプの漫画家じゃないんで、一生懸命噛みます。うるさいと言われても」と『からくりサーカス』アニメへの並々ならぬ情熱を燃やす。すでに制作スタッフと何度も打ち合わせを重ねている。
43巻という長大な物語の中で、過去と現在が徐々につながっていく緻密で壮大なプロットと、敵味方それぞれに花を持たせる魅力的なキャラクター造形と演出が詰まっている『からくりサーカス』には、思い出しただけで目頭の熱くなる名シーンが多い。 プロデューサーという立場からすれば、人形同士のアクションもハードルが高くアニメ化を躊躇することもあったが、木村さんは「丸山(正雄)さんとstudioVOLNさんにやっていただけるなら」とアニメ化に踏み切った。 思わず藤田さんも「『今なんで12年前の作品をアニメ化するんだよ?』とか『アニメ業界もネタ切れか?』とか小憎らしいことを言われるけど、俺もそういう理由でアニメ化されたらやだなあと思うので、ちゃんとやりたいって言ってくれる人にやってもらえてよかった」と改めて安堵していた。
もう一人、アニメ化の重要なキーを握っているのは、元マッドハウス取締役社長にして、現在はスタジオM2代表取締役社長である丸山さん。細田守監督のオリジナルでのデビュー作となる『時をかける少女』や、故・今敏監督の『PERFECT BLUE』はじめ名作の数々のプロデュースしてきた“生ける伝説”だ。
76歳にして現役、『うしおととら』アニメ化の際もクリエイティブ・プロデューサーをつとめている。その丸山さんでさえ『からくりサーカス』のアニメ化を聞いた時「誰がやんの? こんなしんどいこと」と思ったという。しかし、そこで終わらないのが丸山正雄その人。 逆に「誰もやんないなら俺がやる。誰かがやるなら任せればいいけど、『あしたのジョー』から『はじめの一歩』まで、長く太いものをやってきた俺だからやろう」と考えた。
『うしおととら』でMAPPAと共同制作をつとめたstudioVOLNも「難しいことにも挑戦できるという時期にきた」と確信した上で、丸山さんは『からくりサーカス』を引き受けることに。
藤田さんも『うしおととら』アニメを振り返って、「俺は大変満足いく仕事ぶりと作画を丸山さんとVOLNにやってもらえたから嬉しかった。VOLNは嫌々かもしれないけど、俺は(『からくりサーカス』も)やってもらいたかったんだわ」と絶大な信頼を寄せる。
日々やりとりを重ね、時には喧々囂々の議論になることもある様子だが、壇上でのかけあいからはそれだけお互い言い合える信頼関係を築けているように見える。 作中に登場するしろがねが操る人形・あるるかんの頭の羽の本数を巡っては、「俺が描いたのは5本だったけど、アニメでは6本になってて。なんでか知らないけど理由を聞いたら『そっちの方が描きやすいから』だって(笑)。そしたら漫画家はどうしようもないから『じゃあ6本でお願いします』って。そんな火花散るやりとりが行われていますから」というエピソードも披露される。 どこが苦労しているかという質問に、丸山さんは「ここが苦労したというのは言えないですね。だって、全部大変だもん」と、とても冗談に聞こえない答えを返す。
「『からくりサーカス』はアツさ、ペンの力、思いの質量、そういったものが魅力なので、それをアニメにするのが大変」(丸山さん)
「まあ、今つくってる最中ですからね!」と藤田さんがとりなす。「黙ってりゃいいのに、構成とか脚本とか、噛ませてもらってますからね。設計図は、結構イケてます」と自信をのぞかせる。
「漫画は43巻で終わったけど、連載中は『これ本当に終わるんだろうか? こいつに良い退場を迎えさせてやれるんだろうか?』って、できるまではドキドキでした。漫画もアニメもそれは同じ。だから今頑張ってますとしか言えないんですよね」(藤田さん)
「まあねえ……描き切れるわけねえだろ!!ってところはありますわ」と、この日一番の大声で咆哮する藤田さん。 「だって、43巻だぞ!! 俺、9年かけて18Pを毎週毎週描いてきて、8000Pだからね!! 8000Pがアニメに入るわけねーだろ!!」とまくし立てる。
続けて藤田さんは「でもね、これから試合をしようとしてるんですわ」と、客席に語りかける。
「『からくりサーカス』アニメ化のチャンスなんて、10数年前に終わったものなんですね。それをアニメ化するチャンスなんて普通は今さらない。自分の漫画家としてのポジショニングくらいわかっているわけ、どれくらい売れる作品なのか、とか。
アニメも2部3部と、劇場と、本当はやりたいけどね、でもそういう夢を見てはいけない漫画家なの。だから今回のシリーズで決めたい。物語は一旦始まったからにはどんな尺でも絶対に終わらないと、俺が嫌だから」(藤田さん)
この時点で、登壇者の席が用意されているにも関わらず、藤田さんだけが壇上に立ってその場のお客さんを見回しながら、一人ひとりに語りかけるように話していた。 そして、ついに藤田さんの口から、『からくりサーカス』アニメの全容について「全36話で、初めて見た人も楽しめるようにする」と語られる。
一方で、原作33巻を全39話のアニメにまとめた『うしおととら』でも、描けなかったシーンやキャラクターについて読者から様々な反応が寄せられたことを思い出してか「もし不満があったら、今度は俺に文句を言って。溜飲が下がると思いますよ」と断言。
「元からのファンをすごい愛してるしその人たちの恩も受け取ってます」とした上で、「連載も、18Pという運命付けられたページ数があって、漫画家はその中でいつも戦ってます。だから、36回の『からくりサーカス』を書けと少年サンデーから命令されたような気持ちでいる」とその心境を吐露する。
「限られた尺の中で、絶対に面白くないものはつくらないという気持ちでこれから試合に臨みます。哀願というのはアンフェアかもしれないんだけど、これから試合に臨むボクサーに、どうせ無理だからやめろーって言う非情な人はいないと思うんですよ。
できるだけベストに物語をつくっていきたいと思います。俺が『からくりサーカス』を一番うまくやれる自信があるから、(エピソードを)抜く時だって俺が選びたい、それ以外の人には触ってほしくない」(藤田さん) 藤田さんは続ける。
「試合が始まったら、自由に感想を言ってください。いろんな気晴らしができない世の中じゃん。アニメについて『あれは違う』『藤田和日郎はボケたな』って言えばそれはそれでいい気晴らしになれる。俺もこれだけ(アニメに)噛めるから、受けて立てる。それが一番言いたいことでした」(藤田さん)
「言いたいことは終わったので、あとは静かにしてます(笑)」と、もはや自分の仕事はやりきったと着席した藤田和日郎さん。その隣で「薄く長くより、濃く緊張した感じでやりたい」と丸山さんも静かに情熱を燃やすのだった。
現在、藤田さんはモダンホラーに挑んだ長編『双亡亭壊すべし』の連載を少年サンデー誌上で続けている。そんな多忙の中でも「レスがものすごく早い」(木村)というエピソードも語られた。
「印刷所とか、他の人に迷惑をかけるなって漫画家は教わりますから(笑)。連載は自分の急ぎ方をもう知っているから、アニメのスタッフさんに迷惑をかけないようにしないとと思っています。アニメは人がいっぱいでつくるものだと教えこまされていますから、すぐ返事は返しますよって」(藤田)。
リアクションが早いだけではない。スタッフのやる気がみなぎるようなハッパのかけ方がうまく、いつも現場を鼓舞してくれるという藤田さん。丸山さんをして「日本一良い原作者」と言わしめた。
人間って、人に応援されると頑張っちゃうもんなんだよね。今あなたがやっている仕事がすごい素敵なことだぜって言わないと、いいものができないと思うんだわ。それは、いろんなアシスタントと長年やってる経験があるから(わかる)」(藤田さん)
これまで数々のアシスタントの中から『金色のガッシュ!!』雷句誠さんや『烈火の炎』安西信行さんといった漫画家をデビューさせてきた藤田さん独自の創作論も語られた。
「アニメーターだって、コンピューターグラフィックつくる人だって、進行だって、みんな人間で、家族があって、その中で原作者ができることなんて『すっげえカッコいい!!』って言うことなんですわ。そんな大したことなんてやってないです」(藤田さん)
謙遜しつつ、『うしとら』のアニメ放送時は毎回手描きのイラストつきFAXがスタジオに送られてきたエピソードが丸山さんから語られると「こっちがテンション上がっちゃっただけですわ」と照れる藤田さんだった。 また、いよいよトーク終盤では、もう一つ気になる話題、声優のキャストについての話に。そこでも、やはり相当議論を重ねられたという。主人公の才賀勝役も、プロアマ問わない一般オーディションで選ぶという異例の試みが注目を集めている。 藤田さんはキャスト選びについて、しきりに丸山さんに感心していた。
「今が旬とか、今人気ある声優さんがいたらみんなが見てくれるから、そういうので決めるのかなと思っていたんです。でも、本当にその人がそのキャラでしゃべることができるのかどうかで選んでいるのを見ると、嬉しくなってきて。
言葉は悪いですけど、アニメは声優さんの陳列棚じゃなくて、ちゃんとそのキャラクターにあってる人を役に振っているんだって。全員がそうかわからないですけど、少なくとも丸山さんはそうだった」(藤田さん)
最後に、藤田和日郎さんは「『描き切れるわけねえだろ』とか言いましたけど、実際は楽しく、一生懸命やりますから、アニメ化の暁には見てやってください。漫画と同じように、ガッカリはさせないぜ、きっと。あるだけのものは出す。だから、よろしくお願いします!」とステージを締めた。
発表の翌週に開催されたアニメイベント「AnimeJapan 2018」のトークイベントには、原作者である藤田和日郎さんが登壇。
約1時間にわたって、クリエイティブ・プロデューサーの丸山正雄さん、TVアニメを企画したツインエンジンのアニメプロデューサー・木村誠さんと共に、これから本格的に始動する制作の裏側を語った。
また、個別インタビューの時間もいただいたので、トークイベント+インタビューという大ボリュームでお届けするっ!
横で待ってるタイプの漫画家じゃない!
『からくりサーカス』は、熱血少年漫画『うしおととら』で人気を博した藤田和日郎さんにとって長編作品2作目で、現在累計発行部数は1500万部を数える。2015年から2016年にかけては『うしおととら』がアニメ化されたことも記憶に新しい。そこから2年。2006年に完結した『からくりサーカス』も12年の時を経てアニメ化されることが判明し、ファンには大きな反響をもって迎えられた。
彼らを前に、藤田和日郎さんは開口一番「こんなにいる! 嬉しいな〜興味持ってくれて。ありがとう」と感謝を隠せない様子。 司会に話を振られるも「漫画家って本来こういうところに来る人じゃないでしょ!? 机の上が一番落ち着くの! だから落ち着くまでちょっと待ってね!」と元気よく言い放って会場を和ませる。
とはいえ徐々にエンジンのかかってきた藤田さんは「横で待ってるタイプの漫画家じゃないんで、一生懸命噛みます。うるさいと言われても」と『からくりサーカス』アニメへの並々ならぬ情熱を燃やす。すでに制作スタッフと何度も打ち合わせを重ねている。
43巻という長大な物語の中で、過去と現在が徐々につながっていく緻密で壮大なプロットと、敵味方それぞれに花を持たせる魅力的なキャラクター造形と演出が詰まっている『からくりサーカス』には、思い出しただけで目頭の熱くなる名シーンが多い。 プロデューサーという立場からすれば、人形同士のアクションもハードルが高くアニメ化を躊躇することもあったが、木村さんは「丸山(正雄)さんとstudioVOLNさんにやっていただけるなら」とアニメ化に踏み切った。 思わず藤田さんも「『今なんで12年前の作品をアニメ化するんだよ?』とか『アニメ業界もネタ切れか?』とか小憎らしいことを言われるけど、俺もそういう理由でアニメ化されたらやだなあと思うので、ちゃんとやりたいって言ってくれる人にやってもらえてよかった」と改めて安堵していた。
もう一人、アニメ化の重要なキーを握っているのは、元マッドハウス取締役社長にして、現在はスタジオM2代表取締役社長である丸山さん。細田守監督のオリジナルでのデビュー作となる『時をかける少女』や、故・今敏監督の『PERFECT BLUE』はじめ名作の数々のプロデュースしてきた“生ける伝説”だ。
76歳にして現役、『うしおととら』アニメ化の際もクリエイティブ・プロデューサーをつとめている。その丸山さんでさえ『からくりサーカス』のアニメ化を聞いた時「誰がやんの? こんなしんどいこと」と思ったという。しかし、そこで終わらないのが丸山正雄その人。 逆に「誰もやんないなら俺がやる。誰かがやるなら任せればいいけど、『あしたのジョー』から『はじめの一歩』まで、長く太いものをやってきた俺だからやろう」と考えた。
『うしおととら』でMAPPAと共同制作をつとめたstudioVOLNも「難しいことにも挑戦できるという時期にきた」と確信した上で、丸山さんは『からくりサーカス』を引き受けることに。
藤田さんも『うしおととら』アニメを振り返って、「俺は大変満足いく仕事ぶりと作画を丸山さんとVOLNにやってもらえたから嬉しかった。VOLNは嫌々かもしれないけど、俺は(『からくりサーカス』も)やってもらいたかったんだわ」と絶大な信頼を寄せる。
日々やりとりを重ね、時には喧々囂々の議論になることもある様子だが、壇上でのかけあいからはそれだけお互い言い合える信頼関係を築けているように見える。 作中に登場するしろがねが操る人形・あるるかんの頭の羽の本数を巡っては、「俺が描いたのは5本だったけど、アニメでは6本になってて。なんでか知らないけど理由を聞いたら『そっちの方が描きやすいから』だって(笑)。そしたら漫画家はどうしようもないから『じゃあ6本でお願いします』って。そんな火花散るやりとりが行われていますから」というエピソードも披露される。 どこが苦労しているかという質問に、丸山さんは「ここが苦労したというのは言えないですね。だって、全部大変だもん」と、とても冗談に聞こえない答えを返す。
「『からくりサーカス』はアツさ、ペンの力、思いの質量、そういったものが魅力なので、それをアニメにするのが大変」(丸山さん)
「まあ、今つくってる最中ですからね!」と藤田さんがとりなす。「黙ってりゃいいのに、構成とか脚本とか、噛ませてもらってますからね。設計図は、結構イケてます」と自信をのぞかせる。
「漫画は43巻で終わったけど、連載中は『これ本当に終わるんだろうか? こいつに良い退場を迎えさせてやれるんだろうか?』って、できるまではドキドキでした。漫画もアニメもそれは同じ。だから今頑張ってますとしか言えないんですよね」(藤田さん)
作者が咆哮「36話で描き切れるわけねえだろっ!!」
そしていよいよ「アニメにする上で、どこまで描ききれるんでしょうか?」と、ファンが最も気になっている質問を司会がぶつける。「まあねえ……描き切れるわけねえだろ!!ってところはありますわ」と、この日一番の大声で咆哮する藤田さん。 「だって、43巻だぞ!! 俺、9年かけて18Pを毎週毎週描いてきて、8000Pだからね!! 8000Pがアニメに入るわけねーだろ!!」とまくし立てる。
続けて藤田さんは「でもね、これから試合をしようとしてるんですわ」と、客席に語りかける。
「『からくりサーカス』アニメ化のチャンスなんて、10数年前に終わったものなんですね。それをアニメ化するチャンスなんて普通は今さらない。自分の漫画家としてのポジショニングくらいわかっているわけ、どれくらい売れる作品なのか、とか。
アニメも2部3部と、劇場と、本当はやりたいけどね、でもそういう夢を見てはいけない漫画家なの。だから今回のシリーズで決めたい。物語は一旦始まったからにはどんな尺でも絶対に終わらないと、俺が嫌だから」(藤田さん)
この時点で、登壇者の席が用意されているにも関わらず、藤田さんだけが壇上に立ってその場のお客さんを見回しながら、一人ひとりに語りかけるように話していた。 そして、ついに藤田さんの口から、『からくりサーカス』アニメの全容について「全36話で、初めて見た人も楽しめるようにする」と語られる。
一方で、原作33巻を全39話のアニメにまとめた『うしおととら』でも、描けなかったシーンやキャラクターについて読者から様々な反応が寄せられたことを思い出してか「もし不満があったら、今度は俺に文句を言って。溜飲が下がると思いますよ」と断言。
「元からのファンをすごい愛してるしその人たちの恩も受け取ってます」とした上で、「連載も、18Pという運命付けられたページ数があって、漫画家はその中でいつも戦ってます。だから、36回の『からくりサーカス』を書けと少年サンデーから命令されたような気持ちでいる」とその心境を吐露する。
「限られた尺の中で、絶対に面白くないものはつくらないという気持ちでこれから試合に臨みます。哀願というのはアンフェアかもしれないんだけど、これから試合に臨むボクサーに、どうせ無理だからやめろーって言う非情な人はいないと思うんですよ。
できるだけベストに物語をつくっていきたいと思います。俺が『からくりサーカス』を一番うまくやれる自信があるから、(エピソードを)抜く時だって俺が選びたい、それ以外の人には触ってほしくない」(藤田さん) 藤田さんは続ける。
「試合が始まったら、自由に感想を言ってください。いろんな気晴らしができない世の中じゃん。アニメについて『あれは違う』『藤田和日郎はボケたな』って言えばそれはそれでいい気晴らしになれる。俺もこれだけ(アニメに)噛めるから、受けて立てる。それが一番言いたいことでした」(藤田さん)
「言いたいことは終わったので、あとは静かにしてます(笑)」と、もはや自分の仕事はやりきったと着席した藤田和日郎さん。その隣で「薄く長くより、濃く緊張した感じでやりたい」と丸山さんも静かに情熱を燃やすのだった。
藤田和日郎の仕事論
もちろんその後もトークは続き、「もっとほしいんだけどね、ほんとは50回、60回と。でも、与えられたページ数でなんとかするのが漫画家なので」と藤田さんがポロっとこぼす場面も。現在、藤田さんはモダンホラーに挑んだ長編『双亡亭壊すべし』の連載を少年サンデー誌上で続けている。そんな多忙の中でも「レスがものすごく早い」(木村)というエピソードも語られた。
「印刷所とか、他の人に迷惑をかけるなって漫画家は教わりますから(笑)。連載は自分の急ぎ方をもう知っているから、アニメのスタッフさんに迷惑をかけないようにしないとと思っています。アニメは人がいっぱいでつくるものだと教えこまされていますから、すぐ返事は返しますよって」(藤田)。
リアクションが早いだけではない。スタッフのやる気がみなぎるようなハッパのかけ方がうまく、いつも現場を鼓舞してくれるという藤田さん。丸山さんをして「日本一良い原作者」と言わしめた。
「漫画って、やっぱり人間が描いてるんですよね。みなさんが集まってくれるイベントに出て、帰ったらペンの滑りが確実に違いますもん。アニメも同じ。シヌホドサスガでした。ありがとうございます!
— 藤田和日郎 (@Ufujitakazuhiro) 2016年4月29日
RT @mountful: うしおととら31話の作画監督をさせてもらった。とにかく心を込めて本気で秋葉流を描いた。言葉でうまく言えないけど必死で描いた。 pic.twitter.com/ouuqXbptAP
人間って、人に応援されると頑張っちゃうもんなんだよね。今あなたがやっている仕事がすごい素敵なことだぜって言わないと、いいものができないと思うんだわ。それは、いろんなアシスタントと長年やってる経験があるから(わかる)」(藤田さん)
これまで数々のアシスタントの中から『金色のガッシュ!!』雷句誠さんや『烈火の炎』安西信行さんといった漫画家をデビューさせてきた藤田さん独自の創作論も語られた。
「アニメーターだって、コンピューターグラフィックつくる人だって、進行だって、みんな人間で、家族があって、その中で原作者ができることなんて『すっげえカッコいい!!』って言うことなんですわ。そんな大したことなんてやってないです」(藤田さん)
謙遜しつつ、『うしとら』のアニメ放送時は毎回手描きのイラストつきFAXがスタジオに送られてきたエピソードが丸山さんから語られると「こっちがテンション上がっちゃっただけですわ」と照れる藤田さんだった。 また、いよいよトーク終盤では、もう一つ気になる話題、声優のキャストについての話に。そこでも、やはり相当議論を重ねられたという。主人公の才賀勝役も、プロアマ問わない一般オーディションで選ぶという異例の試みが注目を集めている。 藤田さんはキャスト選びについて、しきりに丸山さんに感心していた。
「今が旬とか、今人気ある声優さんがいたらみんなが見てくれるから、そういうので決めるのかなと思っていたんです。でも、本当にその人がそのキャラでしゃべることができるのかどうかで選んでいるのを見ると、嬉しくなってきて。
言葉は悪いですけど、アニメは声優さんの陳列棚じゃなくて、ちゃんとそのキャラクターにあってる人を役に振っているんだって。全員がそうかわからないですけど、少なくとも丸山さんはそうだった」(藤田さん)
最後に、藤田和日郎さんは「『描き切れるわけねえだろ』とか言いましたけど、実際は楽しく、一生懸命やりますから、アニメ化の暁には見てやってください。漫画と同じように、ガッカリはさせないぜ、きっと。あるだけのものは出す。だから、よろしくお願いします!」とステージを締めた。
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3件のコメント
匿名ハッコウくん(ID:2176)
『吉田聡先生や高橋「久」美子先生にファンレター』
留美子先生だと思うけど
匿名ハッコウくん(ID:1941)
鳴海失踪までを3話でまとめて、仲町サーカス編を5話、真夜中のサーカス編を7話+前半ダイジェスト1回、金銀しろがね誕生編+正二郎とアンジェリーナ編で7話、勝の黒賀村滞在編を3話(多分、構成上一番辛いのがここ)+中盤ダイジェスト1回、残り9回でラストまでって感じかな。まあ、どこをどう抜いて誰に誰の役割を重ねるか、原作者ならではのあっと驚く大英断に期待しちゃうね。
匿名ハッコウくん(ID:1919)
封神演戯と違って成功しそう。