そして2016年の夏、ストーリー、キャラクター、担当声優を一新したシリーズ『ラブライブ!サンシャイン!!』(以下、『サンシャイン!!』)のTVアニメ放送がスタート。
このタイミングで、今だからこそ「『ラブライブ!』の魅力とはなんだろう?」をテーマに、バックグラウンドの異なるラブライバーたちで熱く語ってみることにしました。アニメ好きを自認し、年季は違えど多くの作品と触れ合ってきたメンバーたちにとって、なぜ『ラブライブ!』は特別な存在になったのでしょうか。
アニメ第1期で「ことりちゃんに目を奪われ」てからその魅力にハマった出版社勤務のさてぃさん(南ことり推し)。そして、同じくアニメ1期から熱中している、今回の司会兼ライターで参加した筆者・松本塩梅(小泉花陽推し)です。
『ラブライブ!』は見る人によってさまざまな解釈ができる作品だけに、今回の座談会から導かれるのはきっと「答え」ではありません。より楽しむための「視点」を探そうとする4名のトークは、『ラブライブ!サンシャイン!!』への期待と不安に至るまで、2時間以上にわたって白熱しました!
※この座談会は『ラブライブ!サンシャイン!!』第3話放送直後にあたる2016年7月17日(日)に開催されました。
文・構成=松本塩梅、写真=かまたあつし
地方でも東京でも、アニクラでμ’sが聞こえるようになるまで
後藤王様 僕は『G's magazine』の初出時からずっと見ていて、これは何かヤバイことが起こるなと思ったから、真っ先に1stシングルを手に入れていました。『ぼららら』のPVは今見ればカクカクした動きに感じるかもしれないけど、当時のクオリティを考えればすごかった。前向きな「僕ら」というメッセージも良くて、推したいというより「聴かせたい」と思ったんです。
後藤王様 μ’sのコスプレやキャラクターTシャツを着ている人も増えたので、かけたら盛り上がり確定の曲だったもんね。
ちょうどアニメ1期の時にリリースされたベストアルバムから入って、アニメの流れに沿ってCDを買っていき、ニコ生番組の『ことほのまき』(『ラブライ部 ニコ生課外活動 〜ことほのまき〜』)を見ているうちにライブのBlu-rayが欲しくなり、アニメが終わる頃には一通り揃っているという状態でした。
松本塩梅 僕もアニメ1期を友人に勧められてハマった口ですが、僕は楽曲でいえば『スクフェス(スマートフォン向けゲーム『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』)』なんです。CDを持っていなくても曲が耳からどんどん入ってくる状態で、楽曲が日々近しいものになっていく感触がありました。
『ラブライブ!』は古参も新参も、CD、MV、動画サイト、スクフェスと、さまざまなチャネルで楽曲に触れる接点が多いコンテンツだなと思いますね。
サザエさん方式を捨て、「終わりのある物語」にした英断
後藤王様 僕がキーだと考えているのが、スクールアイドルは「必ず3年間しかできない」ことなんですよ。言い換えると「必ず終わりがある物語」だということ。
例えば、同じアイドルアニメといえば『アイドルマスター』があるけれど、彼女たちはおばあちゃんになってもアイドルをやっているかもしれない。でも、μ’sは老いて活動はできない。
KITUNE 僕は最初、アニメを見た時に『サザエさん』方式(キャラクターの年齢が変化せずに季節や流行が移り変わる作品展開)でいくと思っていたんです。でも、2期で流れが違うぞ、と。ちゃんと終わらせてくれたんで感動しましたね。
松本塩梅 3期や4期、ライバルのA-RISEパートを描くという演出もできたはず。でも、どれひとつやらなかった。
さてぃ スクールアイドルは3年間で終わりだからこそ、μ’sもファンも「今が最高」の状態にしようぜと向かっていく流れが、アニメ2期からファイナルライブで完全に演出されていましたよね。何よりもそれがきれいで、僕らが気持ちを入れられた要因なのかなと。
僕は普段、出版社で営業をしているのですが、仕事は商品を売ることがすべてなので、編集者が売れるコンテンツをつくってくれたのであれば、シリーズ化などでガンガン売っていくのがセオリーなんです。でも、もし売るものが『ラブライブ!』だとしたら、僕はその流れには納得できなくなるだろうと思えるほど、気持ちが入ってしまっていました。
松本塩梅 高校野球をテレビで見ていると、負けている方をつい応援したくなってしまうことってありませんか? まったく知らない子たちなんだけど、「完全燃焼するんだ!」という気持ちが見えていて、試合の外側には引退という終わりのテープが引かれていることを思うと応援したくなるわけです。
それが思い入れのある子であればあるほど、自分にとっても絶対的な感動と喪失感、それから人生に残る刻印は大きくなる。ゴールに向かっていっている全体感と、終わりがわかっているという要素が、μ’sのラストライブで「今が最高!」の大合唱につながり、僕らがいまだに『ラブライブ!』の話で熱くなれる理由のひとつかもしれませんね。
葛藤しているからこそ、μ’sのキャラクターは支えたくなる
松本塩梅 ところで、皆さんは推しキャラって、どうやって決まっていきました?高坂穂乃果(CV:新田恵海)/『ラブライブ!』公式Webサイトのスクリーンショット
南ことり(CV:内田彩)/『ラブライブ!』公式Webサイトのスクリーンショット
小泉花陽(CV:久保ユリカ)/『ラブライブ!』公式Webサイトのスクリーンショット
μ’sのメンバーはみんな自分にどこか自信を持ちきれない、言わば精神的な不満足があるところもいいですよね。思春期らしさを感じる絶妙な設定。えりち(絢瀬絵里)もバレエでの挫折があったように、どこかでつまずいてることがアニメの中で描かれ、それを一緒にクリアしているような感覚が持てたのが好きにつながるポイントとして大きそうです。
矢澤にこ(CV:徳井青空)/『ラブライブ!』公式Webサイトのスクリーンショット
それで、アニメが始まって「『G's magazine』の設定と違うぞ、こんなに闇が深い展開にするのか……」というギャップにガッツリ掴まれてしまってからは矢澤にこ先輩が好きになりました。にこはアイドルというものに対しての挫折があって、ある意味で呪われちゃった存在。μ’sの解散にも未練や想いが強かったのは、人間味をいちばん感じさせましたね。
KITUNE 僕、にこで言うと、第1期13話(「μ'sミュージックスタート!」)で、スクールアイドルを辞めるといった穂乃果に「好きだから。にこはアイドルが大好きなの!」と答えるシーンが大好きでした。
後藤王様 好きなものを、ちゃんと「好き」って言えるのがカッコいいですよね。
「好きだから」に勝るパワーはない
「AJ Night」/画像提供:後藤王様さん
後藤王様 もともと「Re:animation」(リアニ)という野外DJイベントを2010年から開催していて、AJ Nightでもリアニとして参加させていただいたのですが、「AJ Nightでは全曲にすべてVJで映像を出したい」という話をして、セットリストにどの映像を当てるかをすべて表にして提出したところ、ランティスさんにも前向きにご理解いただけたんです。そこで専属のVJとしてKITUNEさんにも付いてもらって。
KITUNE 僕はふだんサラリーマンをやっているので、仕事の合間を縫って打ち合わせに行ったり、もうひとりのVJと映像をつくったりして進めていったんですよね。結果的に「アニメならすべてのシーンを使ってOK」という話になって、全曲に映像をつけるべく頑張って。そこまでできるのも「好きだから」としか言いようがない。
『ラブライブ!』に僕がハマったのは、彼女たちがまっすぐに目標へ向かっていった姿が好きで、そんな彼女たちの後ろ姿を5年間追ってきたから。AJ Nightではそこにμ’sの本人たちがいなくても「今が最高!」って気持ちになって、後藤王様が『愛してるばんざーい!』をかけた時には泣いてしまいました。
「AJ Night」/画像提供:後藤王様さん
松本塩梅 それはぜひ現地で見たかったです! 僕はアニメ第1期から入ったので、おふたりが追ってきた5年間を実感では持てないのですが、あとから映像で追体験した身としては、なんだかんだで1stライブが一番泣けてしまって。
KITUNE 初期のライブで思い出すのは、2ndライブで「『Oh,Love&Peace!』の時に振ってください!」と言われて買ったペンライトがあるんですけど、アナウンスがなく曲が始まって終わり、「このライトどうしたらいいんだ……」ってなった伝説の謎アイテムで(笑)。そうだ、あとは1stライブからのパンフレットとかも持ってきました。
大切に保管していた1stライブのパンフレットをその場で開封!
KITUNE 当時は物販で何万円と使っていました。会場限定グッズがすごく多くて、公式通販もなかったので、買えるだけ買おうと。仲間と物販チェックシートを全部埋めよう!みたいに決意して、みんなで朝から会場すぐそばの銀行に並びました(笑)。
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