ラノベの形を覆す「ストリエ」 運営陣やファンタジア文庫が挑む先とは?

「もう1度さまざまな文学作品に触れるきっかけになれば」

左:濵田康彦さん/右:田辺隆也さん

会見後、「ストリエ」を手がけるインデックスの代表取締役社長・濵田康彦さん、執行役員・田辺隆也さん、事業開発局・中村夏日人さんにお話をうかがった。

──テキストに加えて、イラストや吹き出しといった要素が加わった「ストリエ」ならではの表現とはなんでしょうか?

田辺隆也(以下、田辺) やはり地の文と会話文の差だったり、普通の小説では表現できない視覚的な「間」をつくることもできたり、といったところでしょうか。

あと背景が変わることによる場面転換など、「ストリエ」だからこそできるビジュアル表現はたくさんありますね。

──すでにWeb上では2,000人以上の方がβ版サービスを利用されているとのことですが、これまでのユーザーからの反響はいかがでしたか?

中村夏日人(以下、中村) 我々としてはまだ理想のユーザー数には達していないのですが、Twitterでの拡散などの影響も大きく、ユーザーさん自体の熱量は非常に高い印象を受けていますね。

作家さんからは、これまで小説投稿サイトで公開されていた作品を「ストリエ」でリメイクしたり、あるいはイラストなどを利用して1から新しい物語をつくったりと、新鮮な刺激を受けているというお話をうかがいます。

また、イラストレーターさんからも、自分の投稿したイラストがいろいろな作品でいろいろな役柄で使われるというのがおもしろいと言っていただけたりもしますね。

一般のクリエイターさん同士による、小説やイラストのコラボレーションという、これまでにない形のコンテンツをつくる楽しみを届けられるようにしていきたいと思います。 ──近年ではWeb上でユーザーが投稿した作品に出版社が目をつけて商業デビューするという事例も多いですが、そういった「作家の卵」を見つけるといった狙いもあるのでしょうか?

中村 今回、公式連載という形で各出版社様の作品を扱うというコーナーを設けましたが、同時にβ版で投稿していただいた2,000名ほどのユーザーさんの中から3名の作品を選定し、公式連載として掲載するということも行っています。

そういったアマチュアの方々の作品にもいろいろな方の目に触れてもらうことで、他のメディアミックスなどにもつなげていくことができればと。今後はさらにそういったユーザーによる公式連載の枠も増やしていきたいと思っています。

──今回スマートフォン向けアプリもリリースされましたが、現在はスマホの利用者層も低年齢化し、小学生でもスマホを持っているという家庭も多いと思います。そのような低年齢層へのアプローチも想定されているのでしょうか?

田辺 そうですね。たとえば漫画ではじめて『三国志』を知ったという方が多いように、「ストリエ」ではじめてこの物語に触れた、という体験をしていただきたいという思いもあります。いわゆる小学生向けの児童文学といったジャンルへのアプローチもしていきたいですね。

──そのほかにも今後拡充していきたいサービスなどはございますか?

田辺 やはり(セリフや効果音といった)やノベルゲームのような動きでしょうか。どんどん進化していくスマートフォンの機能を、最大限活用していきたいと思います。

濵田康彦 現在はライトノベルが中心となっていますが、今後はさらにジャンルやカテゴリーも広げていくつもりです。

「ストリエ」は、「新しい(読み物)プラットフォーム」というのが1つの大きなコンセプトですので、活字離れが叫ばれる環境で、もう1度いろいろな文学作品に触れるきっかけになるサービスにしていきたいです。

ファンタジア文庫編集長が語る「ストリエ」の魅力とは?

森井巧さん

「ストリエ」との提携が発表されたKADOKAWAより、ファンタジア文庫とドラゴンブックの統括編集長をつとめる森井巧さんにもインタビュー!

──近年では電子書籍の台頭もあり、紙媒体の書籍市場が衰退しつつあるかと思います。特にファンタジア文庫には若者の間で人気のある作品が多いですが、売り上げに関してライトノベル市場の厳しさを感じられることはありますか?

森井巧(以下、森井) そうですね。いろいろなレーベルでたくさんのライトノベル作品が出ていますが、スマホやゲームといった小説以外のメディアに分散していっているという傾向もあり、その売り上げは最盛期に比べるとやはり下がっているのが現状です。

とはいえ、売れる作品は売れるというのは変わらないところだと思っています。多くの方に受け入れられるもの、不変のエンタメ性を持つものは、どんな時でも売れるのではないでしょうか。

──「ストリエ」との提携にあたって期待されていることはございますか?

森井 たとえば『フルメタル・パニック!』のような十数年前に立ち上がった作品は、不朽の名作とはいえ、なかなか若い方々が手に取るきっかけが少ないです。

でも「ストリエ」のように、若い方々が慣れ親しんでいるスタイルに合わせて物語を楽しめるというのは非常に良い機会だと思いました。そこではじめてβ版の時に配信させていただいたのが「フルメタ」だったんですね。

そのほかにも、『織田信奈の野望』のようにTVアニメ化されても原作を読む機会が少ない作品だったり、ファンタジア文庫から生まれた新進気鋭の作品にも若い方々が触れるきっかけになればと思い、正式サービス開始に合わせて、他の作品も提供させていただきました。

『フルメタル・パニック! 1 戦うボーイ・ミーツ・ガール』

──「フルメタ」といえば、新作アニメの発表でも話題になっていますよね。β版の時に「フルメタ」を期間限定で公開された時は、ファンの方々からの反響はいかがでしたか?

森井 やはりこれまでの読書スタイルとは違う形で物語を楽しめた、という反応が多かったですね。

キャラクターのセリフが吹き出しで出てくるようなトークアプリ風スタイルになじみつつも、こういう読み方もあるんだという不思議な感覚もあったようで。ファンの皆さんには、「フルメタ」という作品を新たな形で楽しんでいただくことができたかなと思います。

──実際に森井さんが「ストリエ」を利用されてみてのご感想はいかがでしたか?

森井 私もLINEのようなトークアプリを使う機会が多いのですが、そういった形で物語を読むことができるという不思議な感覚がやはり私にもありました。「フルメタ」も何度も読んでいるんですが、「ストリエ」では(オノマノペによる)効果音が入っていたりと、新しい体験が多かったですね。

ユーザーの皆さんにはこの「ストリエ」を通じて、物語の見え方が違うだけでその感じ方も違うという感覚を体感していただきたいです。そこでファンタジア文庫の作品も面白いと思ったら作品を買っていただいて、また別の形で楽しんでいただければと思います。

あと、クリエイターとユーザーは非常に近しい存在になっていて、(「小説家になろう」やpixivのような)どんな方々でもアイデアと思いがあればそれを形にできるメディアというのがどんどん増えています。その中でも「ストリエ」は、そのハードルの低さが今後魅力になっていくのではないかと思いますね。
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