スキージャンプに失禁体験? 学生VRコンテスト「IVRC」に潜入してきた

「VR観客賞」第1位は……!

そして、この展示を見にきた観客の投票によって決まる「VR観客賞」第1位に輝いたのは、筆者も体験させていただいた、電気通信大学 失禁研究会の「ユリアラビリンス」でした!

おもらしの疑似体験というユニークすぎる発想が功を奏したようです……。本当におめでとうございました!

第1回「IVRC」優勝チームの稲見昌彦さんにインタビュー!

工学博士・稲見昌彦さん

なんと「IVRC」第1回大会の優勝チームのメンバーだったという、慶応義塾大学大学院教授/工学博士の稲見昌彦さんにお話をうかがいました。

──稲見さんは第1回の優勝チームの一員でいらっしゃったということですが、その時の思い出などございますか?

稲見 当時は周りにVRをつくっている人もいなかったんですよね。むしろコンテストに出たことによって、同じような思いをしてる人たちに出会えたんです。

──当時は作品の点数はどれくらいだったんでしょうか?

稲見 5点ほどです。だから第1回優勝っていっても全然偉くはなくて、今とくらべれば競争は厳しくなかったですね。

──どのような作品をつくられたんですか?

稲見 手に何か持った感覚を出す「ARMS-II」という作品でした。それをしようとすると、大抵ロボットを装着して押したり引っ張ったりというものが多いのですが、人の筋肉を電気で刺激することで、手の動きによって刺激量を変え、押し返すような錯覚を起こすというしくみ使ったものでした。

──それから毎年、OBとして参加を?

稲見 そうですね、色々とアドバイスしたりとか、運営側に関わったりしました。

──最近のお仕事についてお聞かせいただけますでしょうか?

稲見 最近は「超人スポーツ協会」というのを立ち上げまして、VRとかウェアラブル技術や、もしくは拡張現実(AR)と呼ばれる技術を使い、2020年の東京オリンピック開催にあわせて、テクノロジーと身体をあわせた新しいスポーツの国際大会ができないかと考えています。今、50名以上の研究者やアーティスト、ゲームクリエイターの方々とプロジェクトをはじめたところです。

──今の段階で何かアイデアはございますか?

稲見 すでにあるのはハイジャンプができるシューズですね。あと、防具としてプロテクターがすごい大切なのですが、バブルサッカーに使われているような透明なボールをうまく組み合わせることで、人の力を超えたようなジャンプをしながらぶつかり合うというものができたり。

あとは、AR技術を利用して、頭にスマートフォンをつけたディスプレイをかぶり「カメハメ波」を出すような感じで実世界でプレイできるものをつくっています。

──稲見さんが注目している技術などはございますか?

稲見 技術というより、フィクションの世界で描かれていることをどれだけ実現していくかという取り組みに非常に興味を持っております。私が昔やっていた研究のひとつに光学迷彩と言われている分野がありまして、アニメの『攻殻機動隊』に出てくる技術でもあります。

今、そういった取り組みを色々な団体がはじめていまして、「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT」もあれば、「ガンダム」を動かそうというところもあれば、「銀河鉄道999」を現実化しようというプロジェクトも出はじめている。こういった取り組みが広がっていくと、結果的に世界にないようなオリジナルのものが出てくるんじゃないかと。

──『攻殻機動隊』のプロジェクトに関しては具体的には?

稲見 これから全国でハッカソン(開発コンテスト)を企画しています。その中で『攻殻機動隊』の世界観に近いような技術、もしくは『攻殻機動隊』に出てくるかもしれない技術を見つけていこうと思います。

──最後に、稲見さんにとってVRとは?

稲見 人間を知ることですね。VRのリアリティというのは「現実感」ですから、人の頭の中に出てくるものです。それは実は人自身というものを知らないと、きちんと構成することができない。VRの研究とは、人を知る過程だと思います。

IVRC実行委員長・舘暲さんにインタビュー!

「IVRC」実行委員長・舘暲さん

「IVRC」の実行委員長で、東京大学名誉教授/工学博士でもある舘暲(たちすすむ)さんにもお話をうかがいました!

──第1回目の「IVRC」から実行委員長をつとめられているとのことですが。

 第1回目の1993年からです。その頃はVRがちょうど出てきた頃で、世の中に根付かせるとしたら、若い人が興味を持って自分たちでやっていかないと、という想いから学生が自分たちで考えて自分たちでつくるコンテストを企画したんです。

──今回の大会はいかがですか?

 今回の予選大会では、11点の作品を選びました。これは10月に「DCEXPO2015」というイベントが日本科学未来館で行われ、海外からの作品と高専生を中心とした若い世代の作品もあわせてファイナルステージが開催され、その中でグランプリが選ばれます。

──第1回の頃とくらべて、雰囲気は変わっていますか?

 参加作品も増えてますし、流れの中で変遷しながらも、昔の繰り返しもあるんですよね。年を追うごとに進化を遂げています。

VRは90年代に出てきて知られるようになったのですが、その後、全体としてはあまり知られていない時期を経て、また最近になって大きなブームが来て、アメリカでも日本でも世の中に浸透しようとしている。

かつて、学生として「IVRC」に参加していた人たちが、今、40代の働き盛りで、いろんな分野で活躍し、新しい波の中で世の中を変えていくようなものをつくりだしている。そして、今の若い人たちはその次の担い手となるでしょう。

──VRを取り巻く環境は大きく変わっているのでしょうか?

 いよいよ一般の人にも浸透していく段階ですね。昔にくらべて今のVRというのは装置の価格が安くなってるんです。かつては、ヘッドマウントディスプレイでも何百万円もしたのですが、今は数万円ほどで買える。それからコンピューターも格段に安価になり、昔よりも性能がいい。また、人間の運動を計測する装置や、カメラのようなセンサーも安くなった。

一般的にいろんな人たちが、実際に使いながら体験できるようになると、裾野が広がってくるわけですよね。その中で、新しい考え方のものが生まれたり、年々進化していくと思われます。

──VRがどんどんポップになっていると! では最後に、館さんにとってVRとは?

 VRは、人間の想像を助ける、想像を実際のものに変える力ですね。人間のイマジネーションを実現していくための手法、クリエイションのための道具ということです。もしくは、情報のひとつの表現方法です。情報というと目に見えなくてよく分からないものですが、情報が具現化してわかりやすい形になっているのがVRなんですね。
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イベント情報

「デジタルコンテンツEXPO 2015」

会場
日本科学未来館
会期
2015年10月22日(木)〜25日(日)

主 催
経済産業省
一般財団法人デジタルコンテンツ協会
共 催
日本科学未来館

後 援
総務省、文化庁、観光庁、東京都、江東区、東京商工会議所

CG-ARTS協会(公益財団法人画像情報教育振興協会)、一般財団法人家電製品協会、一般社団法人電子情報技術産業協会、一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会、一般社団法人日本動画協会、一般社団法人VFX-JAPAN、公益財団法人ユニジャパン、日本バーチャルリアリティ学会、超臨場感コミュニケーション産学官フォーラム、3Dコンソーシアム、立体映像産業推進協議会

上海マルチメディア産業協会、日中CG文化交流協会、香港貿易発展局、 韓国コンテンツ振興院、台湾デジタルコンテンツ産業推進室

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