月刊OUTが最初に宇宙戦艦ヤマト特集を組んだのは6月号だったが、まだ全国流通前の雑誌だった。実際に手にとったのは、9月号がはじめてだった
そんな、読者投稿のコーナーを読むにつれ「世の中には面白いことを考える人」「知的な人」が、いることを知るんです。バスケ部でシュートの練習をしたところで、それは学校内、部活動内の地位向上にしか繋がらないじゃないですか。それなのに、雑誌は「自分が知らない世間の動き、価値観があって、それを学べる。なんといっても、バスケの練習と違って面白い!」もので、運動部の先輩たちからは聞けない「文化的な」匂いに、ガツンとやられてしまうわけですね。「知的でかっこいい!」と。放課後にはバスケ部の練習をして、休日には友人宅でレコードの新譜を聴いて、というのが当たり前の日常でしたが、内心では、だんだんそんな「田舎の高校生らしい日常」がつまらなく感じるようになってしまったんです。
そんな気持ちがさらに加速するきっかけになったのは、『宇宙戦艦ヤマト』ブームの到来でした。月刊OUTで知った情報が、あっという間に現実に侵食してきたのです。ヤマトって存在は知っているけど、そこまで熱心に見ていたわけではなかったんです。
公開に先駆けて、サウンドトラックのLP発売。オリジナル音声から編集したドラマの名場面集。ビデオが一般的でなかった時代、ファンにとって数少ないイメージソースだった。
もちろん、雑誌情報にノせられて、隣駅の劇場まで観に行きました。記憶だと、中一当時の小遣いは、毎月2000円。当時の入場料金は1000円くらいだったはずなので、劇場で映画を観るなんて自分としては思い切ったのだと推測できます。でも、そこで観た光景は、その勇気に見合う貴重な体験でしたね。「戦争」というシリアスさ。大人っぽいセリフ。劇場で聴いてこそ迫力を感じる心踊る劇伴! 「子供のもの」と言われていたテレビまんがも、なんだよ、随分と立派なものなんじゃないか! と思ったもんです。作品のインパクトはもちろんでしたが、それ以上に、刺激的だったのは、劇場で「テレビまんがを真剣に見て論じる若者たち」がいる、という発見でした。『ヤマト』もすごいけど、時代の流れを発見した(つもりになっている)ってことが何よりすごいじゃないですか! そうなると、テレビランド増刊『ロマンアルバム・宇宙戦艦ヤマト』を買うしかないじゃないですか!!
で、ヤマトと同時期に、オレの好奇心をくすぐり続けていたのが『スター・ウォーズ』でした。アメリカでは大流行りしている! という話題は、どちらかというとファッション的な文脈で知った情報です。当時は、なぜか「西海岸ブーム」で、西海岸で流行っていることがおしゃれな若者にとってのトレンドだったんです。 そこで、当時のファッション、カルチャー誌『POPEYE』がスターウォーズの特集まで組んじゃったりしてたわけです。ロボットは出てくるわ、宇宙船は出てくるわで「まるでテレビまんがみたい」な内容なのに、大人が夢中になってる! まさに『宇宙戦艦ヤマト』と同じフォーマットです。しかも「オシャレ」という大義名分まである! そんなわけで、公開は翌年だというのに、なぜか世間はスターウォーズブームになりました。コカ・コーラは、スターウォーズとのタイアップをはじめます。当時はポピュラーに飲まれていた瓶コーラの王冠の裏には、前年までの「スーパーカー」に変わって、スターウォーズのキャラクターたちがプリントされるようになりました。文房具、アクセサリー、お菓子のパッケージ、あらゆるところにスターウォーズが登場するようになっていました。
『ヤマト』しかり『スター・ウォーズ』しかり。とびついた原因は、あの頃の自分が「サブカルチャー・スノッブだった」というところにつきるんですね。自分はすっかり「オシャレ知識人」になったと大いなる勘違いをしていたんですよ。
ちなみに、当時、ヤマトに次いで人気があったのは、『科学忍者隊ガッチャマン』と『海のトリトン』でした。いずれも、ヤマトのような劇場版映画が期待されのちに実現します、ムック本も出版されてました。忘れ去られてしまいがちですが、当時、出版された『海のトリトン』のムックというのは、ヘプタポーダ1話にのみ登場する敵を裏切った悪役ヒロインのグラビアが付くような、マニア寄りの編集だったんですね。こんな現状を見て「新たなカルチャーの真っ只中にいる!」とオレは確信していたんです。
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Takayoshi Saito
構成作家/インタビュアー。テレビ、ラジオ、イベントの企画、構成。BMSKコンサルティングの研究員としてブランディングコンサルタントと、その一貫でアートディレクションも生業にしています。その他ゲームの企画、シナリオ、キャラクター研究家。京都精華大学、非常勤講師。オタクの学校@模型塾、講師。アクトオンTV「つくろうプラモNAVI」ナビゲーター。
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