「いつか都庁前で」 アニソン×ダンスDJイベント「リアニ」ができるまで

アニソンもダンスミュージック、それぞれの楽しみ方

──リアニといえば「アニソンとダンスミュージックの融合」を掲げたイベントだと思うのですが、やはりアニメが好きな人とダンスミュージックが好きな人とでは、楽しみ方は異なるのでしょうか?

ちへ 違うけれど、一緒に楽しめなくはないと思います。僕自身、中学生から高校生前半ぐらいまでどっぷりオタクだったのが、高校入ってからはいわゆる“ロキノン”をこじらせて、さらに『snoozer』にハマって大学時代を過ごして。

でも、社会人になって一人暮らしになって、寂しくて『魔法騎士レイアース』を観たら、またオタクに帰って来ちゃった、という人間なんですが(笑)、そういう人たちはけっこういると思うんですよ。

そういう人たちって、オタクのコミュニティの中ではロキノンの話はしづらかったし、ロックのコミュニティの中ではアニメの話はしづらかったという。でも両方語れる人って意外といて、自分たちはそういう人たちが集まるコミュニティをつくりたいと思ってやってるんですよ。だから、その切り口に反応してくれる人が、リアニに来て楽しんでくれるといいな、と。

──アニソンだけが好きな人もダンスミュージックに興味を持ってほしい、その逆にダンスミュージック好きな人はアニソンにも興味を持ってほしい、といった思いは?

ちへ 僕個人には、そこまでの使命感はないですね。確かに楽しみ方は違うと思うんですよ。例えばテクノやハウスのイベントで、かかっている曲を全部知っていますって人は普通はいないと思うんですね。そこで出会う音を楽しむというスタンス。アニクラ(アニソンのクラブイベント)はその反対で、知っている曲を聴きに来る雰囲気がある。

でもそれらが混じっていったら、アニソンだけ好きだった人が段々とキックの音が気持ちいいと思うかもしれないし、クラブに通っているけど恥ずかしくてアニメの話ができなかったという人も、ここで爆発してヲタ芸を打つのが楽しくなるかもしれない。その楽しみ方は自由にしてくれればいいかなと。

現在のアニクラシーン、そして今後の展開について

──そんなアニクラですが、今非常に盛り上がっている、イベントの数が増えているという話もありますが、かつてリアニを始められた時や「GEKKO NIGHT」を開催されていた時と比べて、どういう風にシーンが変化したと思いますか?

ちへ イベントの数も、アニクラをやらせてくれるお店も増えましたよね。実は「GEKKO NIGHT」を始めようとした時、大きいクラブを週末にオールナイトで借りようと思ったら断られちゃったんです。その枠は外タレ枠だからダメですって。でも今はその辺のハードルは下がったし、クラブでアニソンをかけるというのは当たり前になってきた気はしますね。

──演者やスタッフなど、イベントをつくる側の人が増えてきたということもあって、アニクラも細分化してきましたよね。

ちへ そうですね、プレイヤーが増えて細かいことができるようになったと思いますね。原曲のみとかリミックスのみ、ボカロのみとか、中にはエロゲだけとか特定のアニメに特化したりとか。ニッチなところで縛れるようになっているという点で良くなってきたんだろうと思います。

──今後こういったシーンがどうなっていくか、というビジョンはありますか?

ちへ たぶん10年後はすごいことになっていると思います。ようやく行政の人とか町の人とかメディアの人とか、外側の人たちが今のシーンに興味を持ってくれた。

イベントも、全然うちだけじゃなくて、「アニサマ」の外のステージでアニソンDJイベントが行われたりとか、『リスアニ!』みたいアニメ雑誌がDJイベントを主催したり、この間、歌舞伎町にナムコが経営するアニソンのカフェ&バー(「アニON STATION」)もできましたね。

こんな風に、企業の目もDJに向いてきたので、ここで次にどうするかだと思うんですね。あくまでアングラでやりますというのもひとつのスタンスだし、楽しいことができるんだったらそういうところにガブっと食いつくのもアリだと思ってて、僕は食いつこうと思っています。その辺はやり方次第かなと。

──最近は特にそういう傾向が強いと思いますが、その中でいかに折り合いをつけていくか、ということでしょうか?

ちへ そうですね。僕も外側の人たちと関わることで、自分たちのことをもう一度考え直す機会が増えたんですよ。さっきの話にもありましたが、みんなで企画立てて、機材を担いで設営をしてパーティーをしてヘトヘトになって片付ける、っていうのがリアニだと思っていたんですけど、外で話をする時にこれでは漠然としすぎているんですよね。そういう時に必要な「自分たちの要素」というものが理解できたので、外でイベントを組めることが増えた。

その辺の自己認識みたいなものが、多分これから自然とできてくると思うんですよ。その時に折り合いをつけるところとつけないところが、それぞれのイベントで多様化していったら面白いですね。いろんなことをやって叩かれる奴もいれば、超アンダーグラウンドにやる奴もいて、という風に。

「Re:animation6」終わり際のちへさん

──ちなみにリアニの構成要素とは?

ちへ その時に、”誰”とやるか。本当は野外に集まっている2000人のお客さん全員がいてこそのリアニなんですが、そのリアニを1時間で見せて、と言われた時にどういう人を選べばリアニになるのか? この人たちが揃えば、とりあえず「Re:animation」ですと言える、そんなチームづくりがなんとなく見えてきましたね。

最終目標は都庁前広場!?

──もうすぐで初回の開催から4年を迎え、これからも精力的にリアニを続けられていくと思うのですが、今後挑戦してみたいことの構想はありますか?
ちへ これは昔から冗談半分で言っているんですが、最終目標は都庁前広場でやることです。

東京都庁の2本のタワーって「マクロスキャノン」っぽいんですよね。『マクロスプラス』というOVAのクライマックスに、初代マクロスが地上に立っていて、その周りでバルキリーがドッグファイトをやるというシーンがあって、そこにシャロン・アップルというバーチャルアイドルが出てきて歌うんですよ。

そこで流れるのが、元電気グルーヴのCMJKという人の「Information High」という曲なんですけど、それが超印象的で、あそこで「Information High」をかけたら『マクロスプラス』っぽい。それをやりたいんですよね。

実は、無謀なことに東京都庁に問い合わせしたことがあるんですよ。そしたら公共性のあるイベントでかつ非営利だったら、というのが最低条件だという話を聞いたので、できなくはない。アニソンイベントも社会的に知名度も高まっていますし、今後、リアニとして実績を積んでいけばできるんじゃないかって思っています。
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杉本真之(ちへ)

「Re:animation(リアニメーション)」主催

2006年、TVアニメ『交響詩篇エウレカセブン』のファンによるオフ会から派生したDJパーティ「GEKKO NIGHT」を立ち上げる。2010年3月に開催された最終回では500人を超えるファンを集め、大盛況を誇るファンイベントとして話題となった。
その後、2010年12月よりアニソン×ダンスミュージックDJイベント「Re:animation(リアニメーション)」の主催をつとめる。第5回より、新宿歌舞伎町・旧コマ劇場前広場から中野駅前暫定広場に拠点を移し、第6回には2000人近くの動員を記録した。

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