ユーモアと哀愁、そしてライブハウスの享楽 おととい来やがれズ×ゲスバンドインタビュー

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タナカハルカ
ユーモアと哀愁、そしてライブハウスの享楽 おととい来やがれズ×ゲスバンドインタビュー
ユーモアと哀愁、そしてライブハウスの享楽 おととい来やがれズ×ゲスバンドインタビュー

おととい来やがれズ×ゲスバンド

インディペンデント”であること。それは単に「メジャーレーベルに所属していない」状態を指す言葉ではない。

テクノロジーやプラットフォームの発展により、誰もが──たった一人、誰にも頼らずとも──世界中に作品を届けられるようになった今。そこは、自分のやりたいことをひたすらに、自らの意思で選び取る“主体性”があちらこちらに渦巻く世界だ。

TuneCore Japanの企画「MEDIA NETWORK」と連動し、KAI-YOUではこれからのシーンを担う才能をフィーチャーする連載企画を展開中。

「MEDIA NETWORK」

「楽曲をリリースしたあと、どうやってプロモーションすればいいのか?」

そんなインディペンデントアーティストの課題を解決すべく、誰でも手軽に、自身の楽曲をメディアに“売り込み”できる場を用意した取り組みだ。

今回スポットライトを当てるのは、「透明なハムスター」への異常な執着共に90年代グランジのテイストを鳴らす4人組・おととい来やがれズ

そして、「魂が躍動する享楽的なビート」を掲げつつ、なぜか親にはレゲエバンドだと嘘をついているという都内の5人組・ゲスバンドの2組。

ユーモアと哀愁、そしてライブハウスへの愛に溢れる彼ら。一見すると掴みどころのない飄々としたスタンスの裏に隠された、それぞれの音楽的ルーツや楽曲制作の流儀、そしてアンダーグラウンドシーンで活躍する独自の視点について迫る。

要するに「ドーンってなってガーとなる感じ」の音楽

──まずは自己紹介をお願いします。アーティストとしてのコンセプトや志向している音楽性/ジャンルなどについてうかがえれば幸いです。

おととい来やがれズ 一昨日から来ました“おととい来やがれズ”です。

突如、現れた4人組。始まりのギターリストYOSHITAKAによって2023年ロックの日に誕生したベーシストHIRO、気付いたらそばにいるドラマーEBIHARA•SO、透明なハムスターの保護活動をするボーカリストGINGA。 奴等を刮目せよ、笑い飛ばせ、次のジョンタイターは君達だ。

おととい来やがれズ 2023年にフジロック出演を目指して、YOSHITAKAが友人のHIROに「ベース弾けるか?」と聞いたところ、HIROは「弾けないけど、弾きたいです」と応え、偶然そこに居合わせたGINGAが「じゃ、私、歌う!」と言いだし、全てがスタートしました。

おととい来やがれズ

おととい来やがれズ YOSHITAKAが下北沢で友人のバンドのライブを観に行ったときに、ドラムをたたいていたのがEBIHARA•SOでした。それから3回ほど彼らのライブに通い、やっとの思いで告白してEBIHARA•SOもメンバーとなり、今に至れり尽くせりという話です。

YOSHITAKAがどうしても90年代のグランジロックしか聴かないため、そういったテイストの楽曲になりがちです。けど、今後はその影響を覆すような作品を続々と、ハムスターの繁殖力の如くリリースしていきたいです!

ゲスバンド 都内で活動しているゲスバンドです。メンバーは橋本(Vo)、高野(Gt)、井上(Gt)、金子(B)、益田(Dr)の5人。結成自体はずいぶん前なのですが、我々の自認としては「2024年から本格始動した」ということになっています(笑)。

コンセプトは「魂が躍動する、享楽的なビートと清らかなサウンド」。……と言葉にすると綺麗ですが、要するに「ドーンってなってガーとなる感じ」の音楽をつくっています。

ゲスバンド

ゲスバンド ジャンルは特に定めていません。年齢を重ねたら渋くジャズでもやりたいなと思っていた時期もありましたが、最近になって「あ、無理だな」と痛感しました

ちなみに私(橋本)は、親には「レゲエバンドをやっている」と嘘をついています。親の顔を思い浮かべると少し頬を赤らめてしまうので、まだまだ胸を張って「これが我々のサウンドだ!」とは言い切れませんね。

音楽制作のきっかけや結成のドラマチックなエピソードは特になくて、ライブハウス界隈の知人に適当に声をかけたら集まった、というのが正直なところです。

なぜハムスターに執着するのか?

──特に影響を受けたアーティストや楽曲について教えてください。

おととい来やがれズ ハムちゃんずの「ハム太郎とっとこうた」、目をつむっていても全部歌えます!

私は子供の頃からハムスターが大好きでした。それでも家で飼うことが許されなくて、ある日「マラソン大会で1位になったらハムスターを飼っていい」と親に言われたので、頑張って1位になったんです。でも結局飼ってくれなかったため、あれ以来透明なハムスターを飼うことに決めました

ずっと一緒にいます。思い起こせば、ずっとそばにいてくれています。

おととい来やがれズ

ゲスバンド 私(橋本)個人の話で言えば、音楽をディグるのが好きでして。ルーツであるパンクやハードコアのほかに、DFAレコードやOn-U Sound界隈、アフロポップ、東南アジアのダンスミュージックなどを夜な夜な聴き漁っています。

ただ、それがゲスバンドの音に還元されているかどうかは全くの謎です。一方で、メンバー5人の最大公約数的なルーツを挙げるとするなら、満場一致でB'zになりますね。

ゲスバンド

ゲスバンド あとはゲーム音楽からの影響も大きいです。橋本と金子は「ゲーム実況を見るのが好きな側」で、高野、益田、井上は「実際にプレイする側」と見事に分かれているところが面白いですね。

ゲーム音楽って、短い尺の中に情報量が異常に詰まっているじゃないですか。我々のように飽き性な人間には、あれくらい展開が早いコンテンツがちょうどいいんですよね。

──あなたはどこを「主戦場」として活動していますか? またはどのような環境で制作を行っていますか?

おととい来やがれズ 名古屋のKDハポンには透明なハムスターがいっぱいいます。ライブの度にハムスターたちが私のそばにずっといてくれるので、一緒にパフォーマンスできるのが毎回楽しみです。

東京を拠点にしているため、いつかはネズミとも仲良くなりたいと思っています。

台北のRevolverでは、雨の中、たくさんのオーディエンスと湿り気を帯びたハムスターたちが出迎えてくれました。ハムスターたちもオーディエンスたちも、ちょっと日本語を話してくれて本当に嬉しかったです。現地のローカルバンドの音楽もかっこよかった!

馬喰横山ではコーヒー・ギャラリー・バー「」というお店をHIROとYOSHITAKAが運営しています。楽しい仲間が集まってワイワイできます!

ゲスバンド 主戦場は主にライブハウスです。ここも特に深い理由はなくて、「バンドなんだからライブするもんだろ。ライブするならライブハウスだろ」くらいのテンションですね。

ネット上を主戦場にするのは少し懸念している点がありまして。というのも、ネットだと「失敗したことまでしっかりアーカイブ化されて、一生ネットの海を漂い続ける」じゃないですか。

その点、ライブハウスでの失敗って“飲み会でのやらかし”と同じで、いつかは風化してくれますからね。そういう意味で、我々にとってすごく安全な場所だなと思っている節があります。

……とは言いつつ、ネット上のコミュニティにも興味はめちゃくちゃあります。どうやって馴染めばいいのか、どなたか優しく教えてください。

嫌いな音楽をわざわざ聴いて“マイナスエネルギー”を充電

──なぜ自身の楽曲を音楽ストア(音楽ストリーミングサービス)に配信しようと思ったのでしょうか?また、チューンコアを選んだ理由はありますか?

おととい来やがれズ ハードコアバンドの怖い先輩から、バンドをやるなら「しっかりレコーディングして配信するように」とアドバイスをもらいました。彼が紹介してくれたのは下北沢のK5スタジオで、いつもレコーディングはエンジニアのコースケPに頼っています。

TuneCore Japanさんが唯一、各サブスクにアップできると怖い先輩から聞いたため、私はTuneCore Japanさんとハムスターと共に活躍できることを願っています。気軽に多くの人たちが、私たちの音楽を聴いてくれるように願いを込めながら、毎回レコーディングに励んでいます。

自分たちの楽曲をアップして、SpotifyAppleMusicで同じ音源でも音質が違うことをはじめて気が付きました。この曲はSpotifyの方が音が良いなとか、そういう聴き比べもしています。

ゲスバンド そもそも配信にしようと思ったのは、CDをプレスして在庫が残るのが嫌だからです。いつまでも部屋に残り続けますし、いずれバンドが解散してそれぞれの道へ……ってなった時に、あの在庫の山ほど嫌なものはありません。

これは経験談でもありますし、長いことバンド界隈にいて、同じCDが数百枚単位で棚を占領してしまっている友達をたくさん見てきたからです。

その上でTuneCore Japanを選んだ一番でかい理由は、周りのバンドマンがみんな使っていたからです。「インディペンデントならとりあえずTuneCoreっしょ」という空気に、何の抵抗もなく乗っかりました。

あとは「売上の還元率が100%」というのも大きいですね。どうせなら取り分多い方がいいっしょ!って感じです(笑)。結果的にこうして今回のようなインタビューの機会まで貰えたりして、本当に感謝しきれないですね。

──音楽シーンのメインストリームである「J-POP」やメジャーシーン、そして音楽シーンを取り巻く情報環境などをどう捉えていますか?

おととい来やがれズ フジロックに出たいからという理由でおととい来やがれズは結成しました。なので「メジャーだから」「インディだから」とかは特にこだわりはありません。

むしろ、私たちがつくった表現が多くの人たちに届くなら、それが何より大切だと考えています。2025年の紅白歌合戦に同級生のバンドが出演していて、私たちもああなりたいと思いました。

現在ではTuneCore Japanさんが存在しているため、各サブスクで配信ができて、誰でも容易に音楽を聴いてくれることはハッピーだと思っています。

おととい来やがれズ

ゲスバンド 情報環境の話からすると、自分も普段はサブスクやSoundCloud、YouTubeで音楽を聴いていて、テレビも全く見ないので、最新のJ-POP情報が自然には入ってこないんですよね。

ただ、これらのサービスのおかげで、昔なら予算の都合で聴けなかったような音楽まで気軽にディグれるようになって、「こりゃ助かるわ」と心底思っています。

ただその一方で、少し思うところもあって。昔は街中やテレビで強制的に流行りまくっている音楽を聴かされて、「これを好きな奴らも、これをつくってる奴らも嫌いだわ!」みたいな、マイナスからはじまるエネルギーがあったじゃないですか。

今の自分の好きな音楽だけを選び取れる環境だと、その反骨心みたいなものが生まれてこないのが、果たしてどうなのかなと。

なので自分は、月に一度わざと「自分が嫌いそうな音楽のプレイリスト」を聴いて、意図的にマイナスエネルギーを充電しています(笑)。

ゲスバンド

ゲスバンド あとは、音源を1枚1枚買っていた時代って、3000円出して買ったCDがハズレだった時、なんとか減価償却しようと無理やり20回くらい聴き込んだりしたじゃないですか。

でも面白いもので、逆にその「無理やり聴いたハズレの音楽」の方が、今の自分の曲づくりの手癖になってたりするんですよね。すべてが便利で快適に洗練された今の環境には、そういう「無駄」や「ノイズ」みたいなものが少し足りないのかもしれません。

音楽が完成するまで、それぞれの紆余曲折

──今回「メディアネットワーク」に応募された楽曲について、聴きどころやこだわりのポイント、楽曲を通して届けたいメッセージなどを教えてください。

おととい来やがれズ うちはギターが音を持ってきて、そこから肉付けしていくスタイルで制作しています。そのため、はじめからボーカルパートをどう入れていくのかイメージがない状況で言葉をはめていくことになるんです。

それに加えて、YOSHITAKAがJ-POPに馴染みがない部分も相まって、サウンドに日本語をはめるとどうしても音が硬くなってしまい、チグハグしてしまうんですよね。

そこをどうやって噛み砕くのかがおととい来やがれズの楽曲の面白さでもあると思うのですが、「You complete me」は今までで1番日本語を入れるのが難儀でした。

「You complete me」収録のアルバム『サンセット・サンライズ』

おととい来やがれズ 多分半年くらい固まらず、つくっては没にしてを繰り返していました。 同時期に友人との会話の中で、「自分が観測する自分と他者が観測する自分、両方ある事で補完されて完璧になる」という話をしていて。それを聞いてから曲のイメージがようやく出来て、自分や自分の周りの印象的だった事を組み立てていきました。

ただやっぱり日本語がしっくり入らない部分が多かったので、それならポエトリーリーディング調にしようと思って、語り口調を多めにしました

思い通りにいかなかった分、思いつかなかったメロディやテンポに出来たのでとても気に入ってます。この曲は聴いた人達にいろんな解釈をしてもらえたら嬉しいです!

ゲスバンド 今回応募したのは「Vertical Suicide」という楽曲です。応募の理由は至ってシンプルで、ただ周りの反応が良かったからです。

制作背景についてお話しすると、我々には断片的なボツ曲やボツになったアイデアのストックが大量にありまして。この曲は、それらの行き場を失ったかけらをパズルのように組み合わせてつくりました。つまり、音楽的なリサイクルですね。

我々としては「SDGsに配慮したサステナブルな作品」とも言えるんじゃないかと自負しています。

「Vertical Suicide」収録のアルバム『STANDING OVATION』

ゲスバンド だいたい5、6曲つくると、これと同じように1曲分のボツアイデアが溜まる計算なので、順調にいけば1年後にはまた似たような製法で新曲が1曲完成しているはずです。

聴きどころとしては、「全編サビ」のような展開が続くところです。ただ、展開はたくさんあるのに「フラットに展開していく」という点にはすごくこだわっています。

これ、伝わるかわからないんですが……レコーディングの時にパソコンの画面で横並びの波形を見るじゃないですか。あそこで、曲の終盤の右側に向かってドーン!とデカい波形ができている(大サビで極端に音圧が上がる)のを見ると、なんか急に冷めませんか? 私だけですかね?

なので今回は、その波形が「同じ形で山が複数連なっている」ように高低差をつくらずに、でも盛り上がりっぽいものはつくる。という不思議なバランスを目指してみました。波形視点でのフラットな美しさを意識しながら聴いてもらえたら嬉しいです。

──お互いの楽曲を聴いてみて、どのように感じましたか?

おととい来やがれズ ハイテンポでタイトなファンキー感がたまりませんでした! 一緒に月見ル君想フとかで、対バンできたら嬉しいと思えるようなバンドです。

中野通りを全力で走っているときの心拍数と同じくらいだったので、とても共鳴できました。汗だくです。

メロディやテンポ、歌詞に雄(オス)みを感じました。私には無いところなので、とても羨ましいです。いつかは、私たちもああいう速度で並走したいです!

ゲスバンド まずジャケットが最高ですね。楽曲自体は、ゆるい感じで浮遊感がありつつも、決める所や気持ちいいポイントはガッツリ決めてくる。歌モノでありながらジャムバンド感もあるんですよね。

例えるなら、「すげー物腰は柔らかいのに、いざとなるとめちゃくちゃ激詰めしてくる上司」みたいな恐ろしさがあって、完全に「まいったな……」と感じました(笑)。

特に羨ましいと思うのは、やはりそのジャムバンド感やセッション感です。我々ゲスバンドのような集団には、あのような阿吽の呼吸で生み出されるグルーヴや世界観は多分一生無理だろうなと、清々しいほどに思い知らされました。

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