“インディペンデント”であること。それは単に「メジャーレーベルに所属していない」状態を指す言葉ではない。
テクノロジーやプラットフォームの発展により、誰もが──たった一人、誰にも頼らずとも──世界中に作品を届けられるようになった今。そこは、自分のやりたいことをひたすらに、自らの意思で選び取る“主体性”があちらこちらに渦巻く世界だ。
TuneCore Japanの企画「MEDIA NETWORK」と連動し、KAI-YOUではこれからのシーンを担う才能をフィーチャーする連載企画を展開中。
「MEDIA NETWORK」
「楽曲をリリースしたあと、どうやってプロモーションすればいいのか?」
そんなインディペンデントアーティストの課題を解決すべく、誰でも手軽に、自身の楽曲をメディアに“売り込み”できる場を用意した取り組みだ。
今回スポットライトを当てるのは、アートワークも含めた世界観で“J-POPの再構築”を試みるKarneyz(カーニーズ)さんと、「平成の懐かしさと令和の今っぽさの融合」をDIYマインドで生み出す池田理論さんの2名。
インターネットを起点に楽曲を発信し続ける彼らが、無数の音楽が溢れる現代で、どのように自らの主体性を表現しているのか。
そのルーツや制作の背景、そして最新の楽曲に込めた想いを通して、インディペンデントアーティストのリアルな葛藤と可能性に迫る。
目次
ひとりで全部やってしまう“DIY精神”
──まずは自己紹介をお願いします。アーティストとしてのコンセプトや志向している音楽性/ジャンルなどについてうかがえれば幸いです。
Karneyz はじめまして、Karneyzです。2025年末にYouTubeでオリジナル楽曲「Not the Last Train」を発表し、2026年から「owl」などの楽曲配信で本格的に活動をはじめました。
音楽の創作活動は、幼少期に自分が感じたことやその時々の心境を歌として形にしはじめたのが最初です。
Karneyz
Karneyz これまでそれらを公開することはありませんでした。しかし、自分の楽曲をより多くの方に聴いていただき、リスナーの方の生活に重なることで、何かポジティブでささやかな化学反応が起こるのではないか。そんな想いが湧き起こり、思い切って世の中に発信していくことにしました。
また、音楽活動とは別でデザイナーとしても活動しているため、アートワークを含めた世界観全体をひとつの「アートプロジェクト」として表現しています。
楽曲ごとにその時自分が感じたことや、頭に浮かんだ色味などを入れ込んでいるので、必然的にジャンルも限定していません。なるべくさまざまな要素を取り入れつつ、ミニマルな質感になるように意識してつくっています。
池田理論 池田理論です、よろしくお願いします。普段は楽曲制作からMV制作までほとんど自分で行っていて、DIYマインドを担いで音楽活動をしています。
「平成の“どこか懐かしい”雰囲気」と「令和の“今っぽさ”」の融合をコンセプトに楽曲制作していて、シティポップや歌謡曲、ブラックミュージックやハウス、R&B、ファンクなど幅広く影響を受けました。
池田理論
池田理論 昔から音楽は好きだったんですが、急に思い立って作曲ソフトを買ったのが制作のきっかけです。
最初は「音楽ってどうやってつくるの?」という感じだったんですが、YouTubeの動画を漁りつつソフトを触っていたらそれっぽく曲がつくれてしまい、そこからのめり込んでいった感じです。
今振り返ると、曲とすら呼べないレベルの酷さだったんですが、当時の自分は何を血迷ったのか「俺天才やん!」と壮大な勘違いを決め込み、そのまま今に至ります。
あの時の勘違いがなければ音楽をやっていなかったかもしれないので……。時には勘違いも必要なのかもと思います(笑)。
J-POPの再構築と、ヒットチャートからの影響
──特に影響を受けたアーティストや楽曲について教えてください。
Karneyz 幼少期から家族の影響もあって、さまざまなジャンルや年代の音楽に触れてきました。10代の頃は国内外問わず、毎週知らないアーティストの知らないアルバムを聴いては「何が良いと感じるのか」を考察するようにしていました。
そういう意味では、エンニオ・モリコーネ(『荒野の用心棒』『ニュー・シネマ・パラダイス』)などの映画音楽や、UKロック、オルタナティブな音楽シーンなどから学べることはたくさんありました。
とはいえ、僕自身は基本的に日本語で表現する日本人として生きているので、今まで蓄積してきた音楽体験と、自分自身がその時々に感じたことの掛け合いから生まれる“口ずさめる歌”を大切にしています。
作品を発表するようになってからは、そのことをより意識して、“KarneyzとしてのJ-POPの再構築”をテーマに考えるようになりました。
ビートルズや、日本であればMr.Childrenのように、内省的な感情から生まれた曲が年代・性別を問わず、スタンダードとして広く長く聴かれていく。そのような曲を、ソリッドかつミニマルに現代の質感も含めながらつくれたら、という憧れがあります。
池田理論 特定のアーティストや楽曲ではないですが、小さい頃はミーハーだったので、ヒットチャートに影響を受けてたと思います。
毎週MステやCOUNT DOWN TVの週間ランキング見て、トレンド曲を中心に、CDを借りるのが日課でした。
池田理論 YouTubeやストリーミングサービスが登場してからは、自分の知らない素晴らしい曲が世の中には沢山あることを知り、ようやくヒットチャート以外の音楽も聴き漁るようになりました。
この辺りから何でも聴くようになり、影響を受けたジャンル幅も相当広がったと思います。結果として色んなジャンルの音楽を良い塩梅で摂取してこれたのかなとも思いますし、池田理論の楽曲コンセプトにも繋がっていると感じます。
自分の曲の権利を自分で持つ、ということ
──あなたはどこを「主戦場」として活動していますか? またはどのような環境で制作を行っていますか?
Karneyz 今はまだ活動をはじめたばかりで、「主戦場」がどこなのか分かっていない、というのが正直なところです。
でも、リスナーの方の感想や激励のメッセージなどから本当にたくさんの力をいただいています。なので今後は、Karneyzというフィルターを通して、音楽・言葉・映像がつながっていくようなプロジェクトを展開し、より一人でも多くのリスナーの方と関われたら嬉しいです。
寂しがりなので、リスナーの方には良い意味でたくさん絡んで欲しいなと思っています(笑)。
池田理論 インターネットです。事務所やレーベルに所属していない自分が、自宅で楽曲を制作して手軽に配信できる、今の時代に生まれて良かったと感じています。
──なぜ自身の楽曲を音楽ストア(音楽ストリーミングサービス)に配信しようと思ったのでしょうか?また、チューンコアを選んだ理由はありますか?
Karneyz 作品を発表しはじめた当初は、YouTubeなどで少しずつ聴いていただけたらと考えていたのですが、多くのリスナーの方から配信のリクエストをいただいたことをきっかけに実行しました。
色々と調べた結果、信頼度の高いチューンコアを選びました。
見知らぬリスナーの方が、一人で川や街の風景を眺めながら、散歩の時や帰り道に、あるいはお部屋でリラックスしながらなど、生活のさまざまなシーンでKarneyzの楽曲と共にいてくださることを思うと、配信して本当に良かったなと思っています。
池田理論 事務所やレーベルに所属していないので、音楽ストリーミングサービスからの配信を最初に検討しました。その中で権利を100%保有できるチューンコアを選択しました。
後から知ったんですけど、チューンコアはインディペンデントへのサポートが非常に充実していてありがたい限りです。
僕自身、「DTMを触ったことがない」「活動のやり方を教えてくれる知り合いもいない」という所からスタートしたので、そういった人こそ安心して使えるサービスだと思います。
「自分が思う自分らしさ」を出して貫き通す
──音楽シーンのメインストリームである「J-POP」やメジャーシーン、そして音楽シーンを取り巻く情報環境などをどう捉えていますか?
Karneyz 今のJ-POPやメジャーシーンには、すごく面白いものがたくさんあると思っています。
音楽だけでなく、映像、SNS、キャラクター性、ストーリー、キャンペーンなどが一体になって広がっていく時代だからこそ、作品の届き方も以前よりずっと多様になっていると感じます。
一方で、楽曲そのものがコンテンツやキャンペーンの“おまけ”のように扱われてしまっているように感じることもあります。もちろん見せ方や仕掛けは大切ですが、楽曲が持っている強さをもっと信じたいと思っています。
良い曲が、良い曲として当たり前に届いていく。派手な話題性や分かりやすいコピーだけではなく、何度も聴きたくなるメロディーや、ふとした瞬間に思い出す言葉、生活の中に残っていく音楽が自然に評価されるシーンになると良いなと思っています。
Karneyzとしても、色々削ぎ落としたあとに「ちゃんと残るもの」を多くのリスナーにお届けしたいと思っています。
池田理論 正直、難しいです。僕自身まだ上手くいった事がないので、色々手探りの毎日です。
サブスク時代に突入してチャンスが増えた一方で、より激しいパイの奪い合いになっていると思います。最近ではAI音楽が大量にリリースされて、音楽が埋もれやすくもなっていると思うので、音楽活動の中で”自分が思う自分らしさ”みたいなものをちゃんと表に出して貫いていく事が、より求められていると感じます。
結局は、僕自身がちゃんと”良い”と思える曲を愚直に出し続けて、それが僕と同じように”良い”と思ってもらえる人に届いて徐々に広がる、という形が健全なのかなとも思ったりしますが、なかなか難しいですね。
お互いの楽曲の聴きどころは?
──今回「メディアネットワーク」に応募された楽曲について、聴きどころやこだわりのポイント、楽曲を通して届けたいメッセージなどを教えてください。
Karneyz 今回応募した「owl」の原曲案をつくったのは2022年頃でした。ちょうど、コロナ禍も過ぎ去りつつある中にあって、その時に感じていることを曲として残したいと思っていました。
ある日、「どんな孤独な音色も〜」とサビのメロディと詩がほぼそのまま降ってきて、そこからは一気に書き上げました。
Karneyz “会いたいけど会えない人たち”が多かったコロナ禍の雰囲気や、“コミュニケーションツールは増えても孤独や不安が埋まらない”ような現代社会の人間関係の間隔──本来であれば泣き叫びたくなるような感情をミニマルな音を重ねて落ち着いたテンションとテンポで表現することで、普段のリアルな生活に入りやすい楽曲にしたいという想いがありました。
<点滅する信号機>や<微炭酸のバブル>というワードも原曲案ができた時の語感を大切にしてそのまま採用しています。
元々はもっと長い曲なのですが、「owl」は活動初期の作品というのもあって、手はじめに様子見として短めに2分以内でつくっています。反応が全く未知数だったので、反応が薄かった場合にあとで言い訳できるように(笑)。結果としては多くの方に聴いていただけたので、これがこの曲の完成形だったんだなと思っています。
「owl」は、ラブソングなのか自身の孤独との向き合い方についてなのか、受け取り手の感覚に委ねつつも、生活の中のワンシーンにスッと溶け込むような曲として、より多くの方に聴いていただける楽曲となっていって欲しいと思っています。
池田理論 「Generation Z」はタイトルの通り「Z世代」にフォーカスした楽曲です。若い世代だからこそ感じるような、曖昧な葛藤であったり、何か満たされない渇望みたいなものをイメージしてつくりました。
Generation Z
池田理論 聴き心地としては、平成のシティポップやR&B、ファンクをイメージしたサウンド、無意識に体が動くようなスウィング感が特徴の楽曲です。
──お互いの楽曲を聴いてみて、どのように感じましたか?
Karneyz 「Generation Z」は、聴いた瞬間にすごくおしゃれで、好きなタイプの曲!と感じました。
グルーヴのあるリズムや、どこか懐かしさもあるサウンド感、耳に残るメロディーに優しいボーカルのキャッチーさがあって、テーマ性のある楽曲でありながら、耳馴染みよく聴けるところが魅力的でした。
“Z世代”という言葉で一括りに外側から決めつけられる現代への違和感をしっかり忍ばせながら、それを重くなりすぎず、音楽として軽やかに届けているバランスが面白いと思いました。
メッセージを前面に出しながらも、サウンドやメロディーの気持ちよさがあるので、言葉だけではなく楽曲全体で伝わってくる感じがありました。
Karneyzとしても、都市生活の中で言葉にしにくい感情や違和感をすくい上げたいという側面があるので、すごく共鳴する部分がありました。音楽性の面でも自分とは違う角度の魅力があるので、いつか何かご一緒できたら嬉しいです。
池田理論 めちゃオシャレで最高です。lo-fiっぽい感じも好きなので、夕方にコーヒーとか飲みながら聴きたいですね。
僕はどちらかというとハイキーで歌う楽曲が多いのですが、Karneyzさんみたいな地声で惹き込む感じが素敵だなと思いました。
いちリスナーとしてこれからも聴かせていただきます。
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