“インディペンデント”であること。それは単に「メジャーレーベルに所属していない」状態を指す言葉ではない。
テクノロジーやプラットフォームの発展により、誰もが──たった一人、誰にも頼らずとも、世界中に作品を届けられるようになった。そこは、自分のやりたいことをひたすらに、自らの意思で選び取る“主体性”があちらこちらに渦巻く世界だ。
TuneCore Japanの企画「MEDIA NETWORK」と連動し、KAI-YOUではこれからのシーンを担う才能をフィーチャーする連載企画を展開中。

「MEDIA NETWORK」
「楽曲をリリースしたあと、どうやってプロモーションすればいいのか?」
そんなインディペンデントアーティストの課題を解決すべく、誰でも手軽に、自身の楽曲をメディアに“売り込み”できる場を用意した取り組みだ。
今回スポットライトを当てるのは、楽曲ごとにクリエイターが変わるポップス・コレクティブという形で作品を発表するANEMONÉ。
そして作詞家としても活動しながら、ジャンルを横断した物語を紡ぐシンガーソングライター・笹岡水樹(ささおかみむら)さんの2名。
プロダクションに所属しながら自由なクリエイティブを追求するANEMONÉと、個人のアーティストとしてとしてインターネットの海に作品を放ち続ける笹岡水樹さん。
アプローチの手段は違えども、「時代を超えて聴かれるポップス」を生み出そうとする情熱は共通している。彼らの制作背景や現代の音楽シーンへの眼差し、そして互いの楽曲から受けたインスピレーションについて紐解いていく。
ジャンルを横断する音楽性、ポップスへの意志
──まずは自己紹介をお願いします。アーティストとしてのコンセプトや志向している音楽性/ジャンルなどについてうかがえれば幸いです。
MioN(ANEMONÉ) はじめまして、ANEMONÉのMioNです。ANEMONÉというのはバンドではなく、楽曲ごとに参加クリエイターの変わる「ポップス・コレクティブ」です。
一貫してどんな楽曲も「Bitter-sweet, pops」をテーマに、日常にあるほろ苦く甘い瞬間や感情を描いているプロジェクトです。2025年7月にスタートして、丸1年が経ちました!

ANEMONÉ
笹岡水樹 笹岡水樹と申します。シンガーソングライターとして活動しながら、作詞家としてアーティストやアイドル、ゲーム作品などへの歌詞提供も行っています。
音楽性としてはオルタナティブやエレクトロニック、ロック、ポップスなど、その時につくりたい楽曲に合わせてジャンルを横断しています。
作品ごとに違う景色をつくりながらも、「笹岡水樹の曲だ!」と感じてもらえる音楽、そして、心のどこかにある「何か足りない」という感情を埋められるような音楽を目指しています。

笹岡水樹さん
──特に影響を受けたアーティストや楽曲について教えてください。
MioN ANEMONÉはbeabadoobeeやビリー・アイリッシュの影響が強いです。どこか聞き覚えのあるサウンドながら、新しく、普遍的なメロディで世界中の人の心を掴んでいます。
邦楽でいうとヨルシカのような存在を目指しています。ANEMONÉの参加メンバーであるsuisさんの透き通った歌声と、n-bunaさんがつくるネットカルチャーとポップカルチャーに影響を受けた音楽。
これらをミックスさせながら、自然の香りがしてくる素晴らしいサウンドは唯一無二だと思っています。
私はソロとしても活動しているのですが、そちらはIndie Folkに強く影響を受けていて、そのお話はまたの機会にぜひ。
笹岡水樹 特に影響を受けたアーティストは、ポルノグラフィティです。幼い頃からずっと聴いていて、私が音楽を好きになった原点でもあります。
特に惹かれているのは、楽曲ごとにまったく違う物語や景色がありながら、一聴して「ポルノグラフィティの曲だ」とわかるところです。
歌詞も、情景の描き方が印象的で、楽曲を聴くことで自分の知らない場所や物語に連れていってもらえるような感覚がありました。
自分自身が制作する上でも、ジャンルや題材に縛られず、作品ごとに違う世界を描きながら、その中に自分にしかない言葉や音楽を残したいという意識は、大きく影響を受けていると思います!
「ふとした瞬間に見つけてもらいたい」
──あなたはどこを「主戦場」として活動していますか? またはどのような環境で制作を行っていますか?
MioN ANEMONÉとしてはとにかく「楽曲」「映像」が軸です。
様々なクリエイターと「クリエイティブ」をつくって、ストリーミングサービスで発表するということを中心に、お声がけいただいたライブイベント等に出演させていただいております。
笹岡水樹 主戦場はインターネットです。現在はライブ活動は年に一度程度でほとんど行っておらず、楽曲配信やSNSを中心に活動しています!
自分の音楽は、その場で一度だけ体験してもらうというよりも、ふとした瞬間に見つけてもらい、聴く人それぞれのタイミングで何度も触れてもらえるものにしたいと思っています。
住んでいる場所や時間に関係なく、知らない人のところまで作品が届いていくことも、インターネットを中心に活動する面白さだと感じています。
SNSで偶然曲を見つけてもらったり、配信をきっかけに過去の作品まで遡って聴いてもらえたりすると、ネット上に自分の音楽を置き続けることの意味を感じます……!
──なぜ自身の楽曲を音楽ストア(音楽ストリーミングサービス)に配信しようと思ったのでしょうか? また、TuneCoreを選んだ理由はありますか?
MioN テーマである「Bitter-sweet, pops」をつくり、世界中のリスナーに聴いていただくために立ち上がったプロジェクトなので、音楽ストリーミングサービスでの配信を選択したのは、自然な流れでした。
自由度、そして新しい音楽制作のあり方も模索している私たちにとっては収益のスプリット機能は重要なファクターであり、チューンコアを選ぶ理由になりました。
笹岡水樹 自分でつくった楽曲を、できるだけ多くの人に聴いてもらいたい、そして作品としてきちんと残していきたいと思ったことが、ストリーミングサービスで配信をはじめた理由です!
せっかく曲をつくったなら、発表した瞬間だけで終わるのではなく、何年経っても誰かがふと見つけて聴ける場所に置いておきたいという気持ちがあります。自分自身にとっても、リリースを重ねていくことが、その時々の自分を残していく記録のようになっています。
チューンコアについては、配信をはじめようと思った当時、個人で楽曲をリリースするならチューンコア、というくらい自分の中では自然な選択肢で、ほぼ一択の感覚でした!
インディーシーンからリスナーに音楽を届けるための姿勢
──音楽シーンのメインストリームである「J-POP」やメジャーシーン、そして音楽シーンを取り巻く情報環境などをどう捉えていますか?
MioN 私たちはblue's collectiveというクリエイティブ・プロダクションに所属しています。ここは元々メジャーレーベルでA&Rをしていた方が立ち上げた新しい会社です。
インディーもメジャーも境界線が曖昧になった今、それらの垣根を越えて形にはこだわらずに、「とにかくいいクリエティブをつくって、正しく発信していけば、どんな立ち位置からだろうとちゃんとリスナーに音楽が届く」という信念のもと、ANEMONÉを立ち上げました。

ANEMONÉ
MioN そして少しずつですが、その実感も得られてきています。メジャーシーンは、ひとりのアーティストに対して多くの人が関わり、売り出してくださいます。それは強力で素晴らしいサポートであることは、間違い無いですし、私たちには欠けているものです。
ただ私たちには、それら欠けてる部分を補うための結束と愛、活動への貪欲さがある。自由な音楽活動を体現していけたらいいなと思っています!
笹岡水樹 J-POPやメジャーシーンに対して、遠い世界という感覚はあまりなく、むしろ自分の音楽もその中でたくさんの人に届いてほしいと思っています! メジャーシーンに近づくために自分の音楽を変えたい、という感覚もありません。
今はSNSやストリーミングを通して、インディペンデントでも思いがけないところまで音楽が届く可能性があることが、すごく面白いと思います。

笹岡水樹さん
笹岡水樹 一方で、短い時間で「わかりやすさ」や「引っかかり」を求められる場面も増えたように感じます。良くも悪くもそこを意識して制作する瞬間もあります。
もちろん入口としてのキャッチーさも大切ですが、すぐには理解できなかった言葉や、一度聴いただけでは掴みきれなかった曲が、後からじわじわ自分の中で大切なものになる。私は、そういう余白のある音楽をつくり続けたいです!
季節にまつわる、二つの物語
──今回「メディアネットワーク」に応募された楽曲について、聴きどころやこだわりのポイント、楽曲を通して届けたいメッセージなどを教えてください。
MioN 今回応募した「花火」は、私たちの結成1年を記念して発表した楽曲です。
メジャーでも活躍していた素晴らしいアーティストであるTHE CHARM PARKさんをアレンジャーに迎えて、新たな夏のポップスをつくれたらいいなと思い制作しました。
「花火にもし心があったら?」そんな想像から膨らませていった曲です。結果として、今のANEMONÉ、私が目指している姿を言葉にした感覚かもしれません。皆誰しも、花火のように輝く瞬間は訪れる。そう願っています。

ANEMONÉ「花火」
笹岡水樹 今回応募した「冬源郷(とうげんきょう)」は、夏の終わりから冬へ向かう季節の中で、まだ痛みを持った恋を「思い出」に変えたいという願望を背負った楽曲です。
制作では、サウンドプロデュース・アレンジの米倉京佑さんと、何度もつくっては壊すことを繰り返しました。物語を追うように聴いてほしくて、シーンごとにメロディもなるべく変化させています。

笹岡水樹「冬源郷」
笹岡水樹 エンジニアの山本史樹さんには、思わず「おお!」となるようなミックスで楽曲の景色をさらに広げてもらいました。ギターのqurosawaさんによるファズギターソロも必聴です。
細部までこだわりを詰め込んだ一曲なので、忘れたいのに忘れられない、そんな少し痛い恋愛を経験した人に聴いてもらえたら嬉しいです。
──お互いの楽曲を聴いてみて、どのように感じましたか?
MioN 女性のシンガーソングライターということで、綺麗な歌声だなと聴き入っていたら、打ち込みのビートが入ってきて、ノイジーなエレキギターが入ってくる展開にオルタナティブな感性を感じて驚きました。自由な発想、ダークな世界観、素敵です!
笹岡水樹 まず、歌声を聴いた瞬間にハッとしました。どこか儚く静かに光る、月のような歌声だなと思いました。心地よいリズムと言葉の置き方も気持ちよく、自然と何度も聴きたくなります!
特に<なんにも無いこの日々が>という歌詞が刺さりました。日常の感性をさらりと置きながら、胸に突き刺す表現ができるところは、自分にはない武器だと感じます。
今回この企画を通して出会えたことも嬉しいです。いつか一緒にライブができたらいいなと思いました(笑)。
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