日本テレビが5月31日、TVドラマ『セクシー田中さん』の制作に関する調査報告書を公表した。
原作者の芦原妃名子さんがドラマの9話と10話の脚本を担当した経緯等をSNSで明かした後に亡くなったことで、調査チームの動向が注視されていた。
調査報告書を公表した日本テレビは、リリースで「原作者・芦原妃名子さんに、哀悼の意を表するとともに、謹んでお悔やみ申し上げます」とコメント。
代表取締役社長執行役員の石澤顕さんのコメントも公開されている。
日本テレビ、97ページの調査報告書を公表
調査報告書には、日本テレビが外部の弁護士も加えた社内特別調査チームを設置して調査した結果が、97ページにわたりまとめられている。
これによると、芦原妃名子さんと小学館(原作漫画を刊行)の原作サイド、ドラマを制作する日本テレビサイドとの間に、認識の齟齬が多分にあったことが記されている。
例えば、ドラマ化するにあたり、原作から一定の改変が必要であることは原作サイドも理解していた上で、改変の許容範囲を巡って制作サイドと折り合いがつかない点が多々あったという。
さらに、いくつかのエピソードで、芦原妃名子さんから厳しい指摘を受けたことも明記されている。結果、一部シーンの撮り直しが行われ、9話と10話の脚本を芦原妃名子さんが担当することになり、脚本家は降板した(もともと1〜10話まで脚本家が担当する予定だった)。
そのほか、そもそも制作の方向性に関する土台のすり合わせが不十分だったことが、後の認識の齟齬を生んだと報告。他にも、芦原妃名子さんからの問い合わせに、事実と異なる回答が行われ、信頼関係が損なわれた出来事などが事細かに記されている。
なお、今後の制作に向けた提言も調査報告書には含まれており、「撮影前に最終話までの構成案を用意」「SNSの利用における留意点の共有」など、具体的な方策が述べられている。
日本テレビ代表取締役社長・石澤顕のコメント
日本テレビが放送したドラマ「セクシー田中さん」の原作者である芦原妃名子さんに対し心より哀悼の意を表するとともに、ご遺族の皆様にお悔やみ申し上げます。
日本テレビは、今回の事態を重く受け止め、客観的な視点で経緯と問題点の分析・検証を行うため、外部の有識者を入れた調査を行ってまいりました。小学館はじめ、この調査にご協力いただきました皆様に感謝申し上げます。
調査チームがおよそ90ページにおよぶ報告書をまとめました。
この調査の中でも、改めて芦原さんがまさに心血を注いで原作「セクシー田中さん」を作り上げ、そして、ドラマ制作に向き合っていただいたことを実感いたしました。
また脚本家の方は素晴らしいドラマを作るため、力を尽くしていただきました。
このドラマの制作に携わっていただいた全ての方々に、心より感謝申し上げます。
一方で、ドラマの制作に携わる関係者や視聴者の皆様を不安な気持ちにさせてしまったことについて、お詫び申し上げます。
この調査報告からドラマ制作者側と原作者側のお互いの認識の違い、そこから生じているミスコミュニケーション、ドラマの制作スケジュールや制作体制、契約書の締結時期など、今後日本テレビとしてさらに厳しく取り組まなければならない点が見つかりました。
日本テレビとしては、指摘された課題についてテレビドラマに関わる全ての方が、より安心して制作できるよう、責任をもって取り組んでまいります。
今後も見守っていただきたいと思います。日本テレビ公式サイトから
6月3日追記:小学館が調査報告書を公開 日テレ側に「第一の問題があるように思われる」
日本テレビの発表から3日後の6月3日、小学館も公式サイトで調査報告書を公開した(外部リンク)。
小学館社内および弁護士を交えた特別調査委員会の報告書では、ドラマ制作時の日本テレビ側とのやり取りを含め、経緯が詳細に記されている(外部リンク)。
その中には、「日本テレビ側が原作者の意向を代弁した小学館の依頼を素直に受け入れなかったことが第一の問題であるように思われ」との記述もあった。
小学館は調査報告書と併せて、映像化に関する今後の指針も発表(外部リンク)。
映像化許諾を検討するにあたり、作家の意向を尊重した文書の作成や映像制作サイドとの協議、映像化の段階ごとに詳細な文書を作成して作家に逐一確認するなどの指針がまとめられている。
以下、小学館「当社刊行作品の映像化に関する、今後の指針について」より。
① 映像化許諾を検討するにあたり、作家の皆様のご意思やご希望を確認し、そのご意向を第一に尊重した文書を作成し、映像制作者側と協議、交渉いたします。
② 映像化の検討段階から正式な許諾段階までの、映像化における各段階に適した文書(作家の皆様のご要望、許諾の条件、展開内容などを記載した文書)を作成し、作家の皆様に逐一確認をとりながら、映像制作者側と進めてまいります。
③ 社内における映像化への理解を深め、さらに知見を広げるために、社内セミナーを適宜実施してまいります。
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