クラウドファンディングサービス「Anipipo」で、VOCALOID制作資金500万円を集めることに成功した、東北地方応援キャラクター「東北ずん子」。萌えキャラやご当地キャラは多々あれど、彼女には他のキャラにはないユニークな仕掛けがある。それは、青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島の東北6県の企業であれば、無料でイラストを商用利用できるキャラクターであるということ。クリエイターも、非商用であれば自由にイラストを使うことができる。すでに、東北企業が商品のパッケージにイラストを使ったり、ステッカーにして商品に付けるといった事例も出てきている。
また、東北ずん子はVOCALOIDのみならず、今までにスマートフォンアプリ、3Dモデル、入力文字読み上げソフト「VOICEROID」の制作もクラウドファンディングですべて成功させている。ユーザーの手によって、VOICEROIDで「しゃべる」、3Dモデルで「踊る」、そしてVOCALOIDで「歌う」を実現しているのだ。一般に、クラウドファンディングのプロジェクトは半分が失敗すると言われている中、驚異的な成功率だ。
そんな東北ずん子が、どうして生まれたのか、その魅力の秘密は一体何なのか、そして、彼女のこれからについて、仕掛け人であるSSS合同会社の小田恭央さんにお話をうかがった!(ず`・ω・´だ)
名前:東北ずん子
身長:157cm
年齢:17歳(高校2年生)
趣味:ずんだ餅づくり
特技:弓道(ずんだアローという技でどんな餅もずんだ餅へと変えてしまう!)
誕生日:10月27日
将来の夢:東京にずんだカフェ、ずんだショップを作ること
※ずんだアローとは、矢じりにずんだペーストを付着させて放つ、東北ずん子の必殺技の一つ。この矢を食らった餅は、ひとたまりも無くずんだ餅に変わってしまう。
キャラクターデザイン:江戸村ににこ
2011年11月3日:Androidウィジェットアプリ「東北ずん子」リリース
2012年9月28日:AHS社より「VOICEROID+ 東北ずん子」発売
2012年10月12日:Twitter小説スタート
2012年11月14日:iOS向けゲームアプリ「東北ずん子」リリース
2013年2月21日:「東北ずん子」MMDモデル(3Dモデル)を配布開始
2013年下旬~2014年上旬:「VOCALOID 東北ずん子」発売予定
小田 元々はアニメの周辺ビジネスをやろうということで、震災の少し前に会社を立てていたんです。メンバーは、アニメーション制作会社のGONZOの元社長で、今はアニメーションやCGを活かしたアプリ制作を行うLMD株式会社の代表の村濱章司、『ダンボール戦記』などの3Dモデルの制作やアプリ開発を行うジェトリックス株式会社の社長の榊正宗、そしてIT系のコンサルをしている私の3人です。はじめ、地方キャラクター関係がおもしろいと思っていて、様々な事例をもとに研究を進めていました。
そのタイミングで、東日本大震災が起きてしまったんです。その様を目にして、自分たちも何かしたいと思って、ちょうど研究していた成果を活用して何かできないかと考えた結果、生まれたのが「東北ずん子」でした。
──地方キャラクターといえば、今「ご当地ゆるキャラ」が人気ですよね。どれも1都道府県1キャラなのに対し、ずん子ちゃんは1県に絞らず、東北6県のキャラクターになっていますが、これはなぜですか?
小田 ご当地キャラって、その地域の予算単位でしかつくれないんです。県のキャラならその県の予算。県以外では、商工会議所や商店街組合で作ることもできますが、どんどん規模が小さくなってしまうんですね。でも、県のキャラを作ってひとつずつの県を盛り上げるというよりも、東北全体を盛り上げなきゃいけないと思いました。多分誰もやる人はいないだろう、だったら我々がやろう、ということで始めました。まず「萌えキャラ」という時点でやりたがる人は少ないでしょうからね(笑)。
──東北には萌えキャラはあまりいないのですか?
小田 もちろんいます。例えば、福島県の「小峰シロ」、岩手県の「久慈ありす」、秋田県では「あきたこまち」を萌え米化して流行ったりもしましたね。あとは「鉄道むすめ」という、各地の鉄道会社の制服を萌えキャラが着るシリーズがあるんですが、青森県で県を巻き込んで盛り上げていたりもしていました。
ただ、萌えキャラ自体は東北に限らず全国で散発的に存在していますが、消えていくものが多いんです。生き残るのは結構しんどいんですよ。
小田 「東方Project」(以下、東方)と「くまモン」です。周りからはよく「初音ミク」を引き合いに出されることが多いんですけれども、実はそうではないんです。ミクさんは太陽の光をさんさんと浴びて育った〝ひまわり〟みたいな存在だと思っています。でも、ずん子ちゃんが目指しているのは〝苔〟なんです。知らない間にどんどん広がっていっているような(笑)。
──苔、ですか(笑)。同人ゲームながら爆発的な2次創作を生み出し、ひとつのジャンルとなった東方と、ゆるキャラとして老若男女に愛されて多数のグッズ展開もされているくまモン。どちらも別々のシーンで広く受け入れられているコンテンツですが、それぞれどういった部分を参考にされたんですか?
小田 まず東方では、世界観のつくられ方と、そこから生まれる2次創作の盛り上がりというのを非常に参考にしました。魅力的なキャラクターやストーリーがあって、しかもそれが「誰でも使っていい」と、ユーザーに開放されている。そして、それを支えるユーザーがしっかりとクリエイターとして育っていってるじゃないですか。それは本当にすごいことだと思っています。
そうしてn次創作が広まって、今でも知らない間にどんどん増殖し続けていますよね。それには東方そのものが持っている魅力のほかに、3Dモデルなどのクリエイターがアウトプットできる素材がちゃんとあることも理由だと考えています。そういう素材があればあるほど、クリエイターのつくる幅は広がっていくので、我々もそこを準備して行きたいと思っていますね。
──では、イラストの配布や3Dモデル、VOICEROID、VOCALOIDの制作は、素材を増やすのが目的だったんですか?
小田 その通りです。素材を増やすのが運営としての仕事かなと思っています。なので、もうクリエイティブの部分はユーザーさんにおまかせしています。
もう一つ力を入れていることとして、ストーリーづくりをやっています。例えばミクさんなどのVOCALOIDキャラクターは、設定を身長や年齡程度にとどめて、あえてキャラクターの背景を詳細に設定しないようにするんですが、ずん子ちゃんはわりと細かくプロフィールを作ったり、Twitter小説で物語を作っています。そうやってできた世界観をユーザーさんに共有してもらって、2次創作の文化が生まれて欲しいんです。
──くまモンは、どのようなところを参考にされたんですか?
小田 くまモンは利用申請書がわかりやすかったので、だいぶ参考にさせてもらいました。使い方まで例示したマニュアルが用意されていて、非常に見やすいんですよ。ずん子ちゃんの利用ガイドラインは、くまモンのを意識してつくっています。
小田 正直、運が良かったという以外ありません(笑)。声優事務所さんからしてみれば、音声合成ソフトってライバルみたいなものじゃないですか。だから企画を持って行っても大丈夫なのかなと心配していたのですが、好意的に受け入れていただくことができました。
また、すでに佐藤さんがずん子ちゃんのことを知ってくれていたのも運が良かったところです。友だちにずん子ちゃんのことを聞いて、「たぶんこのキャラに声が付く時は、あなたが声優やるんじゃないか」と言われていたらしく、その矢先にこの話が来たので「おおっ」と思ったそうです(笑)。
──なぜ、佐藤さんに声をお願いすることになったのでしょうか?
小田 ずん子ちゃんのTwitterで「声優さん誰がいいですか?」っていうのをゆるーく募集したんです。そこで一番声が多かったのが佐藤聡美さんでした。声も合いそうだし、出身が仙台ということもあって、ぜひ佐藤さんにお願いしようということになりました。
──ユーザーの声を積極的に取り入れられているんですね。では、これまでアプリ・3Dモデル・VOICEROID・VOCALOIDの制作に、ユーザー参加型であるクラウドファンディングのサービスを使ったのは、ユーザーと一緒に作るという意味が強いのでしょうか?
小田 そうですね。ずん子ちゃんは我々が育てたとは思っていなくて、ユーザーさんが育てていると思っています。「東北ずん子」という仕組みがある中で、運営はその中のほんの一部でしかないので。だから、何かを作る時にみなさんに支えていただけると、とても嬉しいですし、達成感もあります。
ユーザーの方からしても、具体的に何に使われるかが不透明でお金だけが集められる寄付よりも、使い道がハッキリしているものに寄付したいじゃないですか。そこがクラウドファンディングのいいところですよね。特に今回のずん子ちゃんボカロ化プロジェクトについて言えば、今までにクラウドファンディングを成功させて、それをちゃんと形にしてきたということも大事だったと思うんです。「ここはやるんだ」って思っていただけたのが力になりました。
──ずん子ちゃんのユーザーは、東北の人が多いですか?
小田 いえ、認知度的にも東北のユーザーはまだ少ないと思います。でも、VOCALOID化が決定した時に、岩手県知事さんはおめでとうツイートをしてくれたので、少なくともあの方は知っていますね(笑)。
──東北で広報活動はされないんですか?
小田 現地での広報活動も、ユーザーさんが主体になっています。我々運営が気を使っているのが、萌えキャラを嫌いな人がどうしてもいるということで、嫌がる人に無理やり勧めたりするのは逆効果だと思っています。やりたい人がやって、嫌がる人はむしろ見ない方が良いと思うので、手を挙げてくれたところには出来る限り行く、という形にしています。まんべんなく回るというよりは、手を挙げてくれたところから上手く行ってもらいたいですね。そこで成功していけば、「うちもやりたい」というところが出てくると思うので、そういった広がりに期待しているところです。
それに、くまモンが熊本を飛び出して活動をしているのと同じように、東北を知ってもらうため、東北に来てもらうために、違う地域で活動をすることも大事なことだと考えています。手を挙げてくれた東北の色んな場所が拠点になって、そこへずん子ちゃんが東北以外の人を呼び込む、という形に持っていけるようにしたいですね。
小田 出せるといいですね。ただ、我々も体力が限られているので、どこまでできるかですね(笑)。
一応今決まっているものだと、10月19・20日(土・日)に岩手県の一関市で、全国のおもちが集まる「もちサミット」が開催されるのですが、そこでずん子ちゃんを使ってもらうことになりました。もちと相性がいいキャラクターなので、ぜひ盛り上がっていただきたいですね。
あとは、Twitter小説のノベライズ化も決定しています。ゆくゆくはずん子ちゃんをアニメにしたいと考えているんですが、大体3万部売れる本が5冊出るとアニメ化しやすいそうなので、そこを目標にはしています。アニメになれば、フィギュアなどのグッズができたり、東北が聖地化して観光で呼び込めるようになったりしますので。
それから、東北企業さんとコラボして開発を進めているものもあります。
──ずん子ちゃんはアニメ化が一つのゴールなのでしょうか?
小田 いえ、あくまで途中経過だと思っています。
──アニメの先はどんなことを想定されていますか?
小田 ずん子ちゃんの最終目標は、コンテンツをインフラ化することです。東北の人がコンテンツを使って十分に利益を得られて、しかもそれを継続化できるようにしたいですね。ユーザーのみなさんと、その環境を一緒につくりこんでいきたいと思っています。
文:たかはしさとみ
また、東北ずん子はVOCALOIDのみならず、今までにスマートフォンアプリ、3Dモデル、入力文字読み上げソフト「VOICEROID」の制作もクラウドファンディングですべて成功させている。ユーザーの手によって、VOICEROIDで「しゃべる」、3Dモデルで「踊る」、そしてVOCALOIDで「歌う」を実現しているのだ。一般に、クラウドファンディングのプロジェクトは半分が失敗すると言われている中、驚異的な成功率だ。
そんな東北ずん子が、どうして生まれたのか、その魅力の秘密は一体何なのか、そして、彼女のこれからについて、仕掛け人であるSSS合同会社の小田恭央さんにお話をうかがった!(ず`・ω・´だ)
はじめに:東北ずん子とは?
プロフィール
名前:東北ずん子
身長:157cm
年齢:17歳(高校2年生)
趣味:ずんだ餅づくり
特技:弓道(ずんだアローという技でどんな餅もずんだ餅へと変えてしまう!)
誕生日:10月27日
将来の夢:東京にずんだカフェ、ずんだショップを作ること
※ずんだアローとは、矢じりにずんだペーストを付着させて放つ、東北ずん子の必殺技の一つ。この矢を食らった餅は、ひとたまりも無くずんだ餅に変わってしまう。
キャラクターデザイン:江戸村ににこ
東北ずん子のあゆみ
2011年10月27日:版権フリーキャラクター「東北ずん子」提供開始2011年11月3日:Androidウィジェットアプリ「東北ずん子」リリース
2012年9月28日:AHS社より「VOICEROID+ 東北ずん子」発売
2012年10月12日:Twitter小説スタート
2012年11月14日:iOS向けゲームアプリ「東北ずん子」リリース
2013年2月21日:「東北ずん子」MMDモデル(3Dモデル)を配布開始
2013年下旬~2014年上旬:「VOCALOID 東北ずん子」発売予定
東北ずん子を作ったきっかけ
──「東北ずん子」ちゃんが誕生したきっかけを教えて下さい。小田 元々はアニメの周辺ビジネスをやろうということで、震災の少し前に会社を立てていたんです。メンバーは、アニメーション制作会社のGONZOの元社長で、今はアニメーションやCGを活かしたアプリ制作を行うLMD株式会社の代表の村濱章司、『ダンボール戦記』などの3Dモデルの制作やアプリ開発を行うジェトリックス株式会社の社長の榊正宗、そしてIT系のコンサルをしている私の3人です。はじめ、地方キャラクター関係がおもしろいと思っていて、様々な事例をもとに研究を進めていました。
そのタイミングで、東日本大震災が起きてしまったんです。その様を目にして、自分たちも何かしたいと思って、ちょうど研究していた成果を活用して何かできないかと考えた結果、生まれたのが「東北ずん子」でした。
──地方キャラクターといえば、今「ご当地ゆるキャラ」が人気ですよね。どれも1都道府県1キャラなのに対し、ずん子ちゃんは1県に絞らず、東北6県のキャラクターになっていますが、これはなぜですか?
小田 ご当地キャラって、その地域の予算単位でしかつくれないんです。県のキャラならその県の予算。県以外では、商工会議所や商店街組合で作ることもできますが、どんどん規模が小さくなってしまうんですね。でも、県のキャラを作ってひとつずつの県を盛り上げるというよりも、東北全体を盛り上げなきゃいけないと思いました。多分誰もやる人はいないだろう、だったら我々がやろう、ということで始めました。まず「萌えキャラ」という時点でやりたがる人は少ないでしょうからね(笑)。
──東北には萌えキャラはあまりいないのですか?
小田 もちろんいます。例えば、福島県の「小峰シロ」、岩手県の「久慈ありす」、秋田県では「あきたこまち」を萌え米化して流行ったりもしましたね。あとは「鉄道むすめ」という、各地の鉄道会社の制服を萌えキャラが着るシリーズがあるんですが、青森県で県を巻き込んで盛り上げていたりもしていました。
ただ、萌えキャラ自体は東北に限らず全国で散発的に存在していますが、消えていくものが多いんです。生き残るのは結構しんどいんですよ。
意外!? ずん子ちゃんのモデルとは
──ずん子ちゃんを作るにあたって、参考にしたキャラクターなどはありましたか?小田 「東方Project」(以下、東方)と「くまモン」です。周りからはよく「初音ミク」を引き合いに出されることが多いんですけれども、実はそうではないんです。ミクさんは太陽の光をさんさんと浴びて育った〝ひまわり〟みたいな存在だと思っています。でも、ずん子ちゃんが目指しているのは〝苔〟なんです。知らない間にどんどん広がっていっているような(笑)。
──苔、ですか(笑)。同人ゲームながら爆発的な2次創作を生み出し、ひとつのジャンルとなった東方と、ゆるキャラとして老若男女に愛されて多数のグッズ展開もされているくまモン。どちらも別々のシーンで広く受け入れられているコンテンツですが、それぞれどういった部分を参考にされたんですか?
小田 まず東方では、世界観のつくられ方と、そこから生まれる2次創作の盛り上がりというのを非常に参考にしました。魅力的なキャラクターやストーリーがあって、しかもそれが「誰でも使っていい」と、ユーザーに開放されている。そして、それを支えるユーザーがしっかりとクリエイターとして育っていってるじゃないですか。それは本当にすごいことだと思っています。
そうしてn次創作が広まって、今でも知らない間にどんどん増殖し続けていますよね。それには東方そのものが持っている魅力のほかに、3Dモデルなどのクリエイターがアウトプットできる素材がちゃんとあることも理由だと考えています。そういう素材があればあるほど、クリエイターのつくる幅は広がっていくので、我々もそこを準備して行きたいと思っていますね。
──では、イラストの配布や3Dモデル、VOICEROID、VOCALOIDの制作は、素材を増やすのが目的だったんですか?
小田 その通りです。素材を増やすのが運営としての仕事かなと思っています。なので、もうクリエイティブの部分はユーザーさんにおまかせしています。
もう一つ力を入れていることとして、ストーリーづくりをやっています。例えばミクさんなどのVOCALOIDキャラクターは、設定を身長や年齡程度にとどめて、あえてキャラクターの背景を詳細に設定しないようにするんですが、ずん子ちゃんはわりと細かくプロフィールを作ったり、Twitter小説で物語を作っています。そうやってできた世界観をユーザーさんに共有してもらって、2次創作の文化が生まれて欲しいんです。
──くまモンは、どのようなところを参考にされたんですか?
小田 くまモンは利用申請書がわかりやすかったので、だいぶ参考にさせてもらいました。使い方まで例示したマニュアルが用意されていて、非常に見やすいんですよ。ずん子ちゃんの利用ガイドラインは、くまモンのを意識してつくっています。
ユーザーが育てたずん子ちゃん
──VOICEROID、VOCALOID共に、ずん子ちゃんの声は佐藤聡美さんが担当されていますが、佐藤さんは『けいおん!』の田井中律役や『氷菓』の千反田える役を演じた、売れっ子声優さんですよね。決まるまでに苦労されたことはありませんでしたか?小田 正直、運が良かったという以外ありません(笑)。声優事務所さんからしてみれば、音声合成ソフトってライバルみたいなものじゃないですか。だから企画を持って行っても大丈夫なのかなと心配していたのですが、好意的に受け入れていただくことができました。
また、すでに佐藤さんがずん子ちゃんのことを知ってくれていたのも運が良かったところです。友だちにずん子ちゃんのことを聞いて、「たぶんこのキャラに声が付く時は、あなたが声優やるんじゃないか」と言われていたらしく、その矢先にこの話が来たので「おおっ」と思ったそうです(笑)。
──なぜ、佐藤さんに声をお願いすることになったのでしょうか?
小田 ずん子ちゃんのTwitterで「声優さん誰がいいですか?」っていうのをゆるーく募集したんです。そこで一番声が多かったのが佐藤聡美さんでした。声も合いそうだし、出身が仙台ということもあって、ぜひ佐藤さんにお願いしようということになりました。
──ユーザーの声を積極的に取り入れられているんですね。では、これまでアプリ・3Dモデル・VOICEROID・VOCALOIDの制作に、ユーザー参加型であるクラウドファンディングのサービスを使ったのは、ユーザーと一緒に作るという意味が強いのでしょうか?
小田 そうですね。ずん子ちゃんは我々が育てたとは思っていなくて、ユーザーさんが育てていると思っています。「東北ずん子」という仕組みがある中で、運営はその中のほんの一部でしかないので。だから、何かを作る時にみなさんに支えていただけると、とても嬉しいですし、達成感もあります。
ユーザーの方からしても、具体的に何に使われるかが不透明でお金だけが集められる寄付よりも、使い道がハッキリしているものに寄付したいじゃないですか。そこがクラウドファンディングのいいところですよね。特に今回のずん子ちゃんボカロ化プロジェクトについて言えば、今までにクラウドファンディングを成功させて、それをちゃんと形にしてきたということも大事だったと思うんです。「ここはやるんだ」って思っていただけたのが力になりました。
──ずん子ちゃんのユーザーは、東北の人が多いですか?
小田 いえ、認知度的にも東北のユーザーはまだ少ないと思います。でも、VOCALOID化が決定した時に、岩手県知事さんはおめでとうツイートをしてくれたので、少なくともあの方は知っていますね(笑)。
──東北で広報活動はされないんですか?
小田 現地での広報活動も、ユーザーさんが主体になっています。我々運営が気を使っているのが、萌えキャラを嫌いな人がどうしてもいるということで、嫌がる人に無理やり勧めたりするのは逆効果だと思っています。やりたい人がやって、嫌がる人はむしろ見ない方が良いと思うので、手を挙げてくれたところには出来る限り行く、という形にしています。まんべんなく回るというよりは、手を挙げてくれたところから上手く行ってもらいたいですね。そこで成功していけば、「うちもやりたい」というところが出てくると思うので、そういった広がりに期待しているところです。
それに、くまモンが熊本を飛び出して活動をしているのと同じように、東北を知ってもらうため、東北に来てもらうために、違う地域で活動をすることも大事なことだと考えています。手を挙げてくれた東北の色んな場所が拠点になって、そこへずん子ちゃんが東北以外の人を呼び込む、という形に持っていけるようにしたいですね。
ずん子ちゃんのこれから
──VOCALOIDができるまでしばらく時間がかかるかと思いますが、それまでに何か新たな施策は予定されていますか?小田 出せるといいですね。ただ、我々も体力が限られているので、どこまでできるかですね(笑)。
一応今決まっているものだと、10月19・20日(土・日)に岩手県の一関市で、全国のおもちが集まる「もちサミット」が開催されるのですが、そこでずん子ちゃんを使ってもらうことになりました。もちと相性がいいキャラクターなので、ぜひ盛り上がっていただきたいですね。
あとは、Twitter小説のノベライズ化も決定しています。ゆくゆくはずん子ちゃんをアニメにしたいと考えているんですが、大体3万部売れる本が5冊出るとアニメ化しやすいそうなので、そこを目標にはしています。アニメになれば、フィギュアなどのグッズができたり、東北が聖地化して観光で呼び込めるようになったりしますので。
それから、東北企業さんとコラボして開発を進めているものもあります。
──ずん子ちゃんはアニメ化が一つのゴールなのでしょうか?
小田 いえ、あくまで途中経過だと思っています。
──アニメの先はどんなことを想定されていますか?
小田 ずん子ちゃんの最終目標は、コンテンツをインフラ化することです。東北の人がコンテンツを使って十分に利益を得られて、しかもそれを継続化できるようにしたいですね。ユーザーのみなさんと、その環境を一緒につくりこんでいきたいと思っています。
文:たかはしさとみ
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