盲点だった“日本と海外のTRPG文化を繋ぐ役” 翻訳家Montroインタビュー

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盲点だった“日本と海外のTRPG文化を繋ぐ役” 翻訳家Montroインタビュー
盲点だった“日本と海外のTRPG文化を繋ぐ役” 翻訳家Montroインタビュー

Montroさんが運営するTRPGパブリッシャー・マールストロム(Malström)/画像は公式サイトから

海外のTRPGの翻訳・販売を行う新興パブリッシャーとして、2022年に英国伝奇TRPG『リミナル』をひっさげて現れたマールストロム(Malström)。

その名は、ノルウェーにある大渦潮・メイルストロムのスウェーデン語読みから取られている。

海外のインディーズTRPGデザイナーが制作したシナリオの日本語翻訳版を販売する他、運営するブログで注目の新作の情報やTRPGクリエイターへのインタビューを発信してきたマールストロムは、日本と海外をまたぐ存在となり得るか。

本稿では、マールストロムの代表であり、海外発のTRPGシナリオを紹介・翻訳してきたMontroさんにインタビュー。立ち上げの経緯から今後の展望まで話を伺った。

Montroさん

目次

歴史と映画が好きだった少年時代

──幼い頃好きだったものを教えてください。

Montro 小学校くらいの頃から歴史、特に古代ローマが好きでした。映画『グラディエーター』『ベン・ハー』などを見ていました。

あと、正確なタイトルは思い出せないんですが、小学校の学級文庫にどういうわけかしっかりとした“図解ローマ帝国大全”みたいなタイトルの分厚い図録があって、それを見て「いいな」と思ったのが理由です。

中学に進学する頃にはだいぶ歴史と映画が好きになっていました。ファンタジーも好きで、『ロード・オブ・ザ・リング』が大好きです。「今年も『ロード・オブ・ザ・リング』観るかー」と、元旦に父と一緒に3本ぶっ続けでよく視聴してました。

あと『スター・ウォーズ』のようなSFも好きです。エピソード3が集大成ですね。物語としてもきれいに旧三部作に繋がりますし、あれは見た方がいいです。

あとは高校生の時、友達とリレー小説を書いていました。私はTRPGのシナリオも書いているのですが、ここがルーツかもしれません

「動画勢」から、海外インディーズTRPGの伝道師へ

──TRPGとの出会いを教えてください。

Montro 大学時代にニコニコ動画の『クトゥルフ神話TRPG』(以下CoC)の動画を見たのが最初です。「『CoC』って面白そうだな」と思ったんですが、まず無料でできるTRPGを探して、PDFが無料公開されていた『りゅうたま』を遊びました。

それから『CoC』の「悪霊の家」など、ルールブック付属のものをいくつか遊び、その後はオリジナルシナリオを書いて遊びました。

この他『CoC』の同人シナリオ「毒入りスープ」や、公式シナリオ「もっと食べたい」を執筆した内山靖二郎さんの個人サイト「ひきだしの中身」に掲載されていたシナリオ「杉山屋敷怪異譚」「何かが潜んでいる」も遊んでいます。

他のTRPGシステムだと『ダブルクロスThe3rdEdition』や『ブレイド・オブ・アルカナ・リインカーネーション』、『ソードワールド2.0』も遊んでいます。

トラベラー(雷鳴版)』もやりましたね。あれも衝撃がありました。ルールはそれほどガチガチじゃないけど、プレイヤーの想像の余地がすごくあって、余白が多いゲームっていいなぁと。

留学中の『Mutant:Year Zero』との出会い

──大学時代にスウェーデンに留学をされているんですね。

Montro 高校時代に古い文字に興味を持って、そこから考古学や言語学に関心が出てきました。大きな転換点だったかなと思います。

ルーン文字に興味を持ったことがきっかけで、スウェーデンにも興味を持ちました。ルーン文字の研究はスウェーデンが一番進んでいるので、スウェーデン語を勉強して現地で学んだ方が早いなと。

とはいえ大学は語学留学でしたから、ルーン文字を学ぶわけではなく、地元の人が行く学校に行って普通の講義を受けました。でも、ルーン文字の石碑が各地にありましたから、いろいろ写真を撮って回りました。その辺に刺さってますからね(笑)。京都を少し歩けば史跡があるのと同じです。

──留学中はTRPGを遊んでいましたか?

Montro いいえ。ですが購入はしていました。当時は寮生活をしていましたが、寮生はクリスマス休暇の際にみんな帰郷してしまうんですよ。ウプサラという街にある友達の実家に泊めてもらったんですけど、そこにアナログゲームの専門店があって、TRPGコーナーがありました。

当時は普通の『CoC』プレイヤーだったので「『CoC』あるかな?」と思って棚を見たら、知らないゲームがいっぱいあったんです。『ワールド・オブ・ダークネス』とか。その中で一番ジャケットで惹かれたゲームが『Mutant:Year zero』です。

『Mutant:Year Zero』ルールブック、スウェーデン語版/画像はDrivethruRPGから

Montro 当時発売されたばかりだったと思います。英語のルールブックはどこでも(通販などで)買えますが、『Mutant:Year zero』はルールブックがスウェーデン語だったこともあって買いました。

TRPG以外のボードゲームだと、留学中に『DIXIT』をやりましたね。

みんなスウェーデン語ネイティブな中、私だけネイティブじゃなかったので「おいおい」って思いましたけど、普通のボードゲームよりは卓を囲んで話すことは多かったし、ある程度の言語の壁はルールがわかればシステムが補ってくれて、思ったよりは他の言語の人とゲームを通して交流ができると思いました。意外と今の活動に通じるものがあるのかもしれません。

一度は離れたTRPGに戻ってきた理由

──「戻ってきた」ということは、一回TRPGをやめられているのですね。

Montro はい。大学を卒業してから2020年までTRPGから離れていました。『エクリプス・フェイズ』を買って、一度知り合いと遊んだくらいです。

──そこからTRPGに復帰し、海外のTRPGを紹介する活動を始めたきっかけはなんだったのでしょうか?

Montro コロナ禍で在宅勤務になった時に、「TRPGって留学時代に買った『Mutant:year zero』以外にもいろいろあったよな」とTRPGを色々調べたんですよ。そしたら本当にいろいろあったし、世界最大のTRPG販売サイト「DrivethruRPG」にたどり着いて「面白いゲームがいっぱいあるな」って思いました。

いざ復帰しようと思ってざっとTRPG界隈の話題をTwitterで調べたところ、『CoC』の話ばかりで。そのころ、ちょうど「『CoC』以外にも面白いTRPGがある、と強要するのは違うのではないか?」という話題がありました。

でも、『CoC』もいろいろなシナリオがある中で、「これは別のシステムで遊べるじゃないか」というものもあります。でも、あれは単純に『CoC』以外で遊ぶものがないから『CoC』の中でシナリオで再現している、という部分がある。実際、私も『CoC』のオリジナルシナリオをやってた時は、そんな考えでした。

ただ、試しに『Shattered』というTRPGを紹介したらみんな食いついてきたんです。

みんな知らないだけで。「こんな面白いゲームがあるんだよ」って伝えたら「へーこんな面白いのがあるんだ」って反応があって。 Montro 外国語が読めない人をも惹きつけるビジュアルを持つTRPGはあります。「他にもいろいろ面白いゲームが世界にあるんだよ」と、その情報をTwitterでシェアするだけでも、思ったより興味や関心を持ってくれる人はいたんです。

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