RTA in Japanインタビュー ゲームのクリア時間を競う「学会とオフ会のような晴れ舞台」

「RTA in Japan」以前のRTAシーン

──「RTA in Japan」発足以前のRTAのシーンはどのようなものでしたか。昔はファミ通さんをはじめとしたゲームメディアで、有名タイトルを早くクリアしたビデオを送る企画が実施されるなど、草の根でRTAが活発だった印象があります。

Naka おっしゃる通り、最初は雑誌媒体におけるやりこみ企画のひとつだったと思うんですよ。昔はビデオテープで送ってましたね(笑)。

その当時はゲーム内のプレイ時間でタイムを計測する形だったので、リアルタイムではどこでクリアしているのかは最後までわかってない状態だったんですね。

いまみたいに個々で配信できる環境ではなかったですし。だからRTAとはちょっと違うかたちだったかなと。

──良くも悪くも昔は粗い面もあったということですね。

Naka 2000年代から動画も撮れる技術が発達して、リアルタイムでゲームプレイの実測ができるようになりました。

いまはタイマーも付いていますし、ゲームスタートからクリアまでのリアルタイムを計測できるので、正式なRTAができるようになっています。

──ネット動画ではTAS(Tool Assisted Speedrun、ツール利用による高速クリアの意味)によるゲームプレイも活発でしたが、それもRTAに影響がありましたか?

Naka TASは乱数調整などでアイテムドロップや敵とのエンカウントを調整して行うので、それが出なかったら巻き戻って出るまでやり直して、最速のゲームプレイを詰めていくものですよね。

RTAっていうのは技術や人力でできそうならやって、できなさそうだったら代替する手段でやるものです。TASを参考にRTAの練習を進めていくという面では、もちろん影響がありました。

──NakaさんがはじめてRTAを知ったきっかけはなんですか?

Naka 自分はもともと実車のレースをやっているのもあって、「速く走る」ということに関心があったんです。

ある時、Twitchで海外のプレイヤーがタイマー付きでアクションゲームをやっているのを見て、「こういうのがあるんだ、自分も何かやろうかな」と思ったことがきっかけですね。

──Nakaさん自身は、RTAではどのようなプレイをしていましたか?

Naka 配信できる環境が整った時に、好きだった『悪魔城ドラキュラ』でRTAをやったことあります。ただ周りで『悪魔城ドラキュラ』をやっている日本人プレイヤーは多くなく、我が道を行くというかたちになっていました。

TwitchでRTAをちょこちょこ配信していたとき、海外勢からコンタクトされたこともあります。
RTA in Japan Online 2 - 悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲 Any% by Naka

民主的な合意形成と求道的なやりこみがRTAの魅力

──RTAでは目隠しプレイなど、極端なプレイも飛び出しますよね。

Naka 実際そうやって走っているのはすごいと思います。けど海外のイベントを見ても、基本的にはそれをメインとして推しているわけではなく、あくまでもすごいプレイのひとつですね。

──実車のレース出身ということもあり、お話をうかがっていると、NakaさんにとってRTAは曲芸ではなく競技的なものであると感じました。

Naka エンタメ性じゃないんです。やっぱりゲームプレイの練度ですよね

Any%(なんでもあり)とかGlitchを使うってなってくると、かなり練習しないといけないし、1,2フレームの技を決めなきゃいけないとか、成功させるために1ドットのみといった精密な動作をやるとか、どうしても練習が必要です。

それらにモチベーションを持ってやれているかどうかだと思うんですよ。

──そこに求道的なものがあるというか。

Naka そうですね。やりこみというか……簡単に言えば自己満足みたいなもんですから(笑)。RTAは好きなゲームをやりこむプレイスタイルの一種だと思うんですよ。

対人ゲームでも、やっぱりすごいゲームプレイをする人はある程度ランクが上になるじゃないですか。

そこで上を目指すのは当たり前で、その中で情熱なしでやっている人はいない。最近は「RTA in Japan」に出ることを目標にしている方もいらっしゃいますけど、RTAでももともとそのゲームが好きだから突き詰めてやっている人が圧倒的に多いです。

世間一般からはどう見られるかわからないけど、僕らはあくまでもすごいプレイヤーがいることや、こういう遊び方もあるんだよってことを見せていきたいんです。
ゼルダの伝説 夢をみる島 - RTA in Japan ex #1
──ゲームの遊び方の延長線上として、RTAを広く紹介したいと?

Naka 実際に見せる場を用意して見てもらうことで、少しでも興味を持ってもらって、実際にチャレンジしてもらえばいいなと考えています。

──クリアまでの正規のプレイによるものと、バグを利用したプレイはずいぶん差があるように思うのですが、このあたりの正しさは競技的にはどう思われていますか?

Naka 僕は正しい・正しくないはないと思うんです。バグの利用は個人の自戒として制限するものであって、他人がとやかく言う話じゃないかなと思っています。

Glitchなどなんでもありの「Any%」、使用不可の「Glitchless」、またはゲームによっては使用するGlitchに制限のある「No Major Glitch」などのルールがあり、それぞれのゲームのDiscordサーバーがすでにつくられていてそこで議論されています。Speedrun.comでもフォーラムでそのような質問が出ることもあります。

──バグ利用についてはすごく民主的な合意形成があるんですね。

Naka そういう意味ではフェアなんですよ。実際に私もルール決めをしたことがありますが、基本的にそのゲームでRTAをしている人間が相談して決めているはずです。

いま現在行われているスポーツでもルールに則って行われていますが、同じことをRTAでも行っています。それにより公平性がある程度担保されていると私は考えています。

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