湯浅政明「どうか犬王と友魚の名前を覚えて帰ってください」
会場では、エンドクレジットが流れ始めるなり拍手が巻き起こり、客電がつくと監督は立ち上がって拍手に応えた。その後も鳴り止まない拍手。音楽に合わせるように静かに体を揺らしながら湯浅監督は歓声に答えた。
上映後のQ&Aに応じた湯浅監督は、「今日はこの映画を観に来てくださってありがとうございます。このふたりのような若者がかつていたことを知ってもらうために作品を作りました。」と挨拶をした。
さらに続けて、「当時は生まれたときに生まれた場所で、その人の運命が決まってしまう時代でした。そのなかで上に行くには武士として身を立てるか、芸術家になるかしかありませんでした。犬王のとても明るい性格で、まったく諦めずに自分の夢を実現しようとしているところに感銘を受けました。犬王も友魚も自分のやりたいことを実現させようとした。そんな姿を見ると、自分も周りに左右されず自分の生きたいように生きたいと、勇気づけられます。」と語ると、会場に再び拍手が起こった。
また犬王のルックを松本大洋の原案をもとに構築したことや、ユニークなロックオペラについて音楽を手がけた大友良英との制作プロセスなどを明かした。
©2021 “INU-OH” Film Partners「現代的なロックをイメージしたのですが、それを琵琶の音を使ってやるというところで大友さんはとても苦労されたと思います。先に絵がほしいと言われ、ストーリーボードとムービーを用意して送りました。そして音楽が出来上がり、歌入れの時にはアヴちゃんに歌詞をまとめてもらい、森山未來さんへ歌唱提案もあり、大友さんのコーラスが追加され、現在のような形の歌になりました。昔の音楽から始まり、犬王が踊っているうちにそれが徐々に変わり、ダンスも『雨に唄えば』のようなものがあったり、いろいろなものが混ざっていきます。それに伴ってキャストの二人も70年代や80年代のロックミュージシャンのイメージを入れて歌ってくれてると思います。」と語った。
さらに犬王と友魚の友情について触れ、「誰かの理解者になってあげたい、誰か理解者がいた方がいい、そういう気持ちが込められています。」と言った後、観客に向けて「どうか犬王と友魚の名前を覚えて帰ってください」と声をかけると、再び満場の拍手が起こった。
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作品情報
『犬王』
- 公開
- 2022年初夏
【あらすじ】
室町の京の都、猿楽の一座に生まれた異形の子、犬王。周囲に疎まれ、その顔は瓢箪の面で隠された。
ある日犬王は、平家の呪いで盲目になった琵琶法師の少年・友魚と出会う。名よりも先に、歌と舞を交わす二人。 友魚は琵琶の弦を弾き、犬王は足を踏み鳴らす。一瞬にして拡がる、二人だけの呼吸、二人だけの世界。
「ここから始まるんだ俺たちは!」
壮絶な運命すら楽しみ、力強い舞で自らの人生を切り拓く犬王。呪いの真相を求め、琵琶を掻き鳴らし異界と共振する友魚。乱世を生き抜くためのバディとなった二人は、お互いの才能を開花させ、唯一無二のエンターテイナーとして人々を熱狂させていく。頂点を極めた二人を待ち受けるものとは――?
歴史に隠された実在の能楽師=ポップスター・犬王と友魚から生まれた、時を超えた友情の物語。
【キャスト・スタッフ】
声の出演:アヴちゃん(女王蜂)、森山未來、柄本佑、津田健次郎、松重豊、片山九郎右衛門、谷本健吾、坂口貴信、川口晃平(能楽師)、石田剛太、中川晴樹、本多 力、酒井善史、土佐和成(ヨーロッパ企画)
原作:「平家物語 犬王の巻」古川日出男著/河出書房新社刊
監督:湯浅政明
脚本:野木亜紀子 キャラクター原案:松本大洋 音楽:大友良英
総作画監督:亀田祥倫 中野悟史
キャラクター設計:伊東伸高
監督補佐:山代風我
作画監督:榎本柊斗 前場健次 松竹徳幸 向田 隆 福島敦子 名倉靖博 針金屋英郎 増田敏彦 伊東伸高
美術監督:中村豪希 色彩設計:小針裕子
撮影監督:関谷能弘
編集:廣瀬清志
音響監督:木村絵理子
音響効果:中野勝博
録音:今泉 武
音響制作:東北新社
歴史監修:佐多芳彦
能楽監修:宮本圭造
能楽実演監修:亀井広忠
琵琶監修:後藤幸浩
アニメーション制作:サイエンスSARU
配給:アニプレックス、アスミック・エース
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