同名の展覧会は1995年に「水の波紋95」展として開催。キュレーターのヤン・フートさんとワタリウム美術館が協力し、青山や原宿の街中の40箇所に現代美術の作品を設置した。
なお、青山通りを中心に、同じく街中にアーティストの作品を展示する「パビリオン・トウキョウ2021」も同期間で開催中となる。
移り変わる都市の風景「水の波紋」
水面に落ちた一粒の水滴が波紋となりゆっくりと広がっていくように、街に設置したアート作品が多くの人たちの心に届くことを願って付けられた「水の波紋展」。「水の波紋95」は、都市の中心部で街全体を会場として使う世界でも他に類を見ない挑戦的なものであり、当時は阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件などによって東京が異様な緊張感に包まれていた時期でもあった。
都市における行動の自由や場所のあり方、安全について改めて考えさせられる展覧会となった1995年の展示から26年。東京オリンピックによる開発などが進む2021年に「水の波紋展2021 消えゆく風景から ー 新たなランドスケープ」が再び開催される。
フランス人アーティスト・JRさんのアートプロジェクト「INSIDE OUT PROJECT」からは、同展期間中フォトブース付きトラックが登場。そこに住む人々の顔写真を大きく出力して貼り、一人一人の語られない物語を街に映し出す。「水の波紋展2021 消えゆく風景から ー 新たなランドスケープ」展示内容
江戸時代から東京のランドスケープは火事、地震、戦争によりそのありようを変えてきた。それは、オリンピックにおいても例外ではない。 1995年に開催した「水の波紋95」展では、アート作品を青山の街に点在させ、普段は歩かない都市の裏側の魅力をみてもらうことを意識しキュレーションを実施した。 今回の「水の波紋2021」では、変わろうとしている新旧の街並みの狭間にあえて作品を配置するよう試みた。企画者である私が地元住民ということで、子どもの頃よく遊んだ公園、同級生が住んでいた団地などを多く登場させることになった。再開発によってこれらが消えていくことに少し感傷的になった感もあるだろう。 オリンピックと同時期に開催ということから展示場所の確保が難しかったが、表通りから見えない現在の街の風景と、若いアーティストたちの街への想いを作品として見ていただけると確信している。
「パビリオン・トウキョウ2021」とあわせて9月5日まで開催しているので、2つの街の企画を一緒にご覧いただける。「パビリオン・トウキョウ2021」は、建築的で青山通りを中心としているが、「水の波紋2021」では、さらに小道に入りアート作品を1つ1つ訪ねていただきたい。今回街に放ったさまざまな作品が観客の皆さんの新たな発見に繋がっていくことを願っている。
「水の波紋展2021」参加アーティスト
クリスチャン・ボルタンスキー、デイヴィッド・ハモンズ、檜皮一彦、ホアン・ヨン・ピン、ファブリス・イベール、JR、ジェイ・アール、柿本ケンサク、川俣正、フランツ・ウエスト、バリー・マッギー、フィリップ・ラメット、名もなき実昌、坂本龍一、アピチャッポン・ウィーラセタクン、笹岡由梨子、SIDE CORE、竹川宣彰、トモトシ、UGO、梅沢和木、山内祥太、Yotta、弓指寛治、渡辺志桜里、ビル・ウッドロウ
アートをめぐって歩こう「パビリオン・トウキョウ2021」
「水の波紋展2021」と同期間開催しているのが、「パビリオン・トウキョウ2021」。新国立競技場を中心とする複数の場所に建物やオブジェを設置し、自由で新しい都市の風景を提案する。散歩しながら、世界で活躍する建築家やアーティストたちがそれぞれの未来への願いを表した展示を巡ることができる。 草間彌生さんの「オブリタレーションルーム」は、すべてが真っ白に塗られた部屋に、鑑賞者が色とりどりの丸いシールを貼っていく参加型のインスタレーション。
「オブリタレーション(自己消滅)」は草間さんにとって1960年代からの長年のテーマとなっている。
「パビリオン・トウキョウ2021」参加アーティスト
藤森照信、妹島和世、藤本壮介、平田晃久、石上純也、藤原徹平、会田誠、草間彌生、特別参加:真鍋大度+Rhizomatiks
アートを味わう夏に
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