連載 | #310 ポップな画像を紹介してみた

画像の乱れ!? 「グリッチタヌキ」不思議なタヌキ像はどのように誕生したのか

画像の乱れ!? 「グリッチタヌキ」不思議なタヌキ像はどのように誕生したのか
画像の乱れ!? 「グリッチタヌキ」不思議なタヌキ像はどのように誕生したのか

画像はすべて中谷健一さん提供

POPなポイントを3行で

  • たぬきの置物がグリッチ状態「グリッチタヌキ」
  • 手がけたのはクマ彫刻家・中谷健一
  • 木彫り熊をリメイクしたサイバーベアでも注目
蕎麦屋さんや和食の店前で見かける信楽焼たぬきの置物は、「他を抜く」という意味を持ち縁起物として飾られています。

いやぁ〜古き良き縁起物っていいですよね、ポンポコリンなフォルムもかわいい。

……ん? 私のスマホぶっ壊れている!?

そう思った方、安心してください、こちらはグリッチタヌキです。決して、機器の調子が悪くて画像が乱れているわけではありません。

人々の脳裏に残るグリッチ現象

斜め上からみると、こんな感じです。

映像が乱れたときに起こるグリッチ、コンマ数秒の刹那で感じる無意識下の残像で、最近では意図的に映像表現に用いられることもしばしば。

そんなグリッチとたぬきの置物を融合させたのは、クマ彫刻作家・中谷健一さん。普段は、肩書きの通りクマの彫刻をメインに活動しています。 以前に、木彫りのクマを大胆にリメイクしたサイバーベアでも注目を集めました。

今回のグリッチタヌキは、彫刻でつくったのか、信楽焼を解体したのか、まじまじと見れば見るほど、ジワジワと脳にエラーを感じます。

著者の脳が溶けてしまう前に、この作品はどのように誕生したのか話を聞いてみました。

グリッチタヌキのつくり方

──グリッチタヌキ誕生のきっかけは、どのようなものだったのでしょうか?

中谷健一(以下、中谷) 今回のグリッチタヌキですが、自分はクマ彫刻家なので実はクマのほうを先に制作してました。しかし、横長のものだと(グリッチが)なかなか効果的ではないと気づいんたですよ。

それで生まれたのがグリッチタヌキです。実はタヌキもいじりたくて手元にずっと置いてあり、横長が良くないなら縦に長いタヌキでグリッチ表現だと思い、すぐに型取りに取りかかりました。

制作途中のクマ

──いくら観察しても制作過程が見当もつかないのですが、どのように作成したのですか?

中谷 ご存知の通り、タヌキの置物は信楽焼なので加工は無理です。なので、住宅に使う発泡ウレタンを型に流し込み原型をつくりました。

これによりカッターでも容易に加工が可能になり、サクサク切れて細かいディティールにこだわれました。また、水平がすごく重要なのでレーザーで測ってからカットしています。

無意識下の残像ゆえの制作の難しさ

まだグリッチされる前のたぬき

──信楽焼ではなく発泡ウレタンなんですね。制作時に苦労した点を教えてください。

中谷 グリッチ表現が一番の悩みどころでした。グリッチって無意識下の残像、たぶんテレビ画面でもコンマ数秒とかの世界で、それでも人間って体で覚えてるんですよ。すごいですよね。 

なので感覚のチューニングを合わせるように作成してます、バランスなんかは当然無視です。プラ板を挟んだり試行錯誤しましたが、インテリア感が欠けるためボツにしまくりました。

輪切りされたタヌキ

試行錯誤段階のプラの板

──試行錯誤の末に、今のグリッチタヌキがあるんですね。

中谷 1週間眺めてデジタルでラフ画を描いたりもしましたが、現実だとすごく違和感があったんですよ。これだと決めても数日すると飽きちゃう、それは作品としてはもちろんダメですよね。もう一度モノの見え方について向き合う時間、これが苦行です。

けど、方法がある程度決まったら霞が晴れたように一直線で見えるんですね。これだ! という後は、自分は制作時間が早いので、いつものようにえい! っとつくっちゃうんですよ。

熱海の「ハコスコカフェ」で展示会

中谷健一さんの作品たちは、「Media Ambition Tokyo」のサテライト会場となる「ハコスコカフェ」で5月1日(土)から5日(水)と、15日(土)から23日(日)の12時から18時まで展示予定。グリッチタヌキはオークション販売の開催を予定しています(外部リンク)。

「このカフェかなり面白い人たちの集まりで、いろいろなジャンルのすごい人が集結します。テーマは「Remote Reality」で、空間、時間を超えた体験の共有、そこから生まれる空間の再生──Regeneration──です」と、展示会の魅力を語ってくれました。

生き物をアートで表現する職人技

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