美しいエンドを迎えた漫画『A子さんの恋人』 こころ重ねたくなる魅力

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美しいエンドを迎えた漫画『A子さんの恋人』 こころ重ねたくなる魅力
美しいエンドを迎えた漫画『A子さんの恋人』 こころ重ねたくなる魅力

『A子さんの恋人』7巻/画像はAmazonより

POPなポイントを3行で

  • 近藤聡乃の漫画『A子さんの恋人』が完結
  • 一筋縄ではいかない心模様を描いた名作
  • 舞台となった場所を巡ったレポート&レビュー
KADOKAWA刊行の漫画誌『ハルタ』で連載されていた近藤聡乃さんの漫画『A子さんの恋人』が、10月発売の7巻で完結しました。

一筋縄ではいかない心模様を描いた物語の結末に今も感動の声が広がっており、「読み終えたこの気持ちを、誰かに伝えたい」という呟きがTwitterに数多く上がっています。

本稿ではそんな「A子さんの恋人」の魅力を、まだ読んだことがない方に向けてお伝えします。

2人の恋人の間で揺れる姿を描く『A子さんの恋人』

物語の主人公は、東京の阿佐ヶ谷に住むニューヨーク帰りの「A子さん」。

ちゃんと別れられなかった腐れ縁で元カレの「A太郎」とニューヨークに置いてきた現在の彼氏の「A君」──こじれた二人との関係をどうするべきか主人公が悩みながら過ごす日々をコメディタッチで描いています。 作者の近藤聡乃さんは多摩美術大学出身で、漫画だけでなく幻想的なアニメーションやイラストを発表しているアーティスト。

筆者はもともとアーティストとして彼女の一面しか知りませんでしたが、この漫画で群像劇のテンポのよさと面白さにはまり、漫画としてのレベルの高さに驚きました。

友人たちとの会話の毒っ気あふれたユーモアと鋭さ

この漫画の大きな魅力は、A子さんの周辺に登場するちょっと性格が悪い友人たちとの痛快な会話劇

お互いに対して遠慮なく意見を言い合う彼女たちによる、的確な恋愛のあるある話や相手の欠点を突いたマウント合戦などのやり取りは非常に愉快で楽しい。

やり取りの中で本質を突かれて図星になることもよくあり、読み手も思わず言われた人物と自分を重ねて読んでしまいます。

真面目、不真面目、優柔不断、ミーハー、登場する人物たちはそういった性格をしていますが、「性格」という言葉でひとくくりにまとめられるほど人間は単純ではないことを物語が進むたびに感じさせてくれます。

主人公の友人たちは平然と距離を詰めて言いたい放題を言ってくるちょっと性格の悪い人たちですが、傍から見ればみんな仲が良く互いの理解も深いので、一緒に輪に入れて欲しくなるような愛しさがあります。 最終巻では主人公が二人の男性との関係に、ついに答えを出します。

どのようにして決断することができたのか、本当に腹を決めることができたのか、主人公の優柔不断な性格を十分に見てきた読者はとても気になる内容です。

『A子さんの恋人』を読んで読者が登場人物と自分を重ねるように、主人公も誰かの言葉や何かに自分を重ねてこころを決めます。是非とも終わりまで見届けて下さい。

『A子さんの恋人』の舞台を歩く

また全巻通して、阿佐ヶ谷御茶ノ水、墨田区のスカイツリーなど、東京の各所が美しいドローイングで描かれており、登場人物たちも様々なスポットで物語を展開させます。

実際に筆者も、漫画の様々なシーンに登場した各所を巡ってみました。

普段なら何気なく見えるだけの建物や店が、近藤聡乃さんのスマートな線描により無国籍な世界観に感じさせられ物語をよりロマンティックにさせていると体感することができました。

阿佐ヶ谷パールセンター

物語のキーポイントである、阿佐ヶ谷パールセンターとスカイツリーは、漫画を読んだあとは特別感じ深い場所に感じます。

ちなみに、漫画の中で登場した書店の「書楽」阿佐ヶ谷店には、作者の生原稿が飾られていました。読者のファンなら注目です。 漫画のラストに心打たれて気持ちがさめやらない人は、主人公たちがどこで会話を繰り広げて、どこで思いにふけていたのか、実際に巡ってみてはいかがでしょうか。

単純な恋愛漫画ではない、胸を張った大人になるまであと一歩の大人たちの物語、男女問わずおすすめの漫画です。

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