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無駄な街・渋谷で出会った音楽と映像──Sakiko Osawa×ショウダユキヒロ対談

無駄から生まれたものとは

左からショウダユキヒロさん・守屋貴行さん・Sakiko Osawaさん・カワムラユキさん

──「Gimme Action」のプロデュースは守屋さんが手がけていますが、どういう思いで携わられたんですか?
 
守屋 僕は無駄が必要だと思うんです。無駄は楽しいことだしそこから生まれるものもあるんだけど、たぶん無駄なことを知らない若い世代にはこの感覚が共有できない。僕も一方では無駄じゃないものをつくり続けているけど、だんだん世の中から無駄がなくなっていると思うんです。
 
映像もそう。言ってしまえば、きっちりとした“良い感じ”の映像って、安いカメラに安いソフトがあれば、今なら誰でもつくれる。むしろ今の時代で無駄をとれる映像作家の方が少なくなっています。

無駄がなくなってみんながツルっとしている中で、あらゆるジャンルで角張ろうとアクションを起こしている人もいる。「Gimme Action」もその一つ。

「Gimme Action」では、後ろにカメラを置いて動いてもらうから、めちゃくちゃ無駄が撮れた。無駄な看板とか、山のように映り込んでますよね。

ショウダ 色んなところでカメラを回したから、撮影素材が多すぎて編集は大変だったけどね(笑)。

守屋 でもそれが面白い。小さく収まった映像なんてありふれていて、もう飽き飽きでしょ。
 
ショウダ 昔は金があったから、無駄なことをやれてた部分もある。利便性を追求して機材も安くなって予算も減ってとにかくすべてがコンパクトになって、そのせいで映像自体が縮小しちゃってる。

Sakiko ソフトウェアがどんどん進化して使うソフトも安く手軽に、という意味では音楽も一緒です。昔に比べたらサクサク動くし、映像と違って音楽であればラップトップで十分動くから、新幹線の中とかファミレスでも全然音楽つくれちゃいます。良いか悪いかではなく、簡単にできてしまう、というのが今の時代なんだと思う。
 
守屋 街も同じように、簡単で無駄がなくなってる。郊外だろうと何でも揃うから、わざわざ繁華街にいかなくてもいいって思う人が増えてる。でも、人やモノって、どこかにワッと集まった方が面白いに決まっている。渋谷はたぶん、まだギリギリ無駄なことが残ってる気がします。

カワムラ 前戯なき社会での愛おしき無駄よね。
 
ショウダ でも別に、便利になるのが悪ってわけじゃない。
 
守屋 俺も便利は大好き。スマホもアプリも大好き。ただ、新しいものが登場した時に、そのルールに乗っかるのが日本人なんだよね。それを使ってもう一回新しいことをやろうという発想は、欧米の人の方が強い。本来その思考は日本人が得意としているはずなんだけど、最近はどうもそうじゃなくなってる。

実は僕、元々日サロとか行ってて、いわゆるギャル男?だったんですよ。

──そうだったんですね……! ちょうど先程も、ギャルがいなくなっているという話が出ました。
 
守屋 そう、今はほとんど見かけなくなってギャル雑誌もどんどん休刊してそれがニュースになってる。でも別にギャル男になれってことじゃなくて、ハチャメチャやってもいいんだって思える若者が増えてほしい。だって、この歳でこんな映像撮ってる人とかいないでしょ(笑)。
 
ショウダ 世界観が似たようなものが溢れてて、エゴが見えない。エゴって言っときながらちょっと売れ路線狙ってたりとか。エゴで振り切ってそれで売れるくらいまで出せばいいと思う。ホドロフスキーとか、完全におかしいところまでいってるやん(笑)。エゴを突っ切ったらあそこまでいけるっていう究極を見せてくれてる。そういう元気ある人が、周りには少ない気がする。
 
Sakiko みんなが使っている流行りのシンセって、やっぱり同じ音がしますよね。だから私は流行りのシンセがあまり好きじゃなくて、20歳からほぼ変えていないんです。
 
カワムラ たぶんそういうSakikoだから、花魁に出入りするようになったんだと思う。だって、しぶや花魁なんて完全に無駄でしょ。クラブに行く前に1杯ひっかけていくお店なんて多くの人にとって不要ですよね。でもここでつながった人が作品を生み出しているわけだから、無駄からも生まれる何かがあるということなんです。

自分の好きを追求すること、自分が楽しむこと

──Sakikoさんはアムステルダムのレーベルからデビュー・リリースされていますが、オランダに対してはどういうイメージを抱いていますか?
 
Sakiko アムステルダムって、フェスとかの大きいクラブイベントが多いイメージがあります。ダンスミュージックと言えばドイツやパリだと思うんですけど、去年、オランダの新国王即位記念のパーティで、オーケストラをしたがえたアーミンがDJしたことで世界中から注目された矢先だったこともあります。
Armin van Buuren & The Royal Concertgebouw Orchestra perform for new Dutch king Willem-Alexander
20歳ぐらいの時はエレクトロが流行っていてパリに注目していて、その流れでベルリンの音楽を聞いて、それから最近では自分の中のトレンドとしてアムスの音楽に惹かれていたこともあって、アムスでのリリースは色々重なった結果だと思っています。
 
──実際にアムステルダムにも行かれましたか? どんな街でしたか?

Sakiko デビュータイミングで、アムスでイベントをやらせていただいたことがあったので。街としての印象は、ロンドンやベルリンに比べるとギュッと濃縮されているイメージ。東京というよりは大阪のような、一点に集中している感じです。
 
クラブは盛り上がってましたね。私が見た範囲での話ですが、小~中箱ぐらいが多くて、日本で言うWOMBやageHaのような大箱はあまりなくて、それを飛び越えて、例えばめちゃくちゃ大きい大聖堂で開催しているフェスがあったり。DJの層も厚くて、若い人からダッチトランスのDJのおじさんたちが揃ってる。
 
カワムラ 私も一緒に行ったんですが、「これからパパがDJするので見に来ました」っていう20歳ぐらいの娘を連れた50代のおじちゃんがDJブースにいれば、オシャレして来てる老夫婦もいて。何て言うんだろう、明るい老人ホームのような印象(笑)。

Sakiko 私がプレイした平日でも、若い人もじゃんじゃん集まってきましたよ。すごく貴重な体験でした。アムスの流行というものも感じたし、世界的に流行していると言われているEDM(Electronic Dance Music)というものもありますが、私自身はそこまで興味はないんです。むしろ、実際にアムスに行って思ったのは、流行に流されずに自分の好きな音楽をつくって、それでアムスの人たちを踊らせることができたら最高だということ。
 
個人的には、アムスで聞いた、日本人の耳とヨーロッパの人の耳とでは感性が違うという話が印象的でした。
 
──具体的にはどういった部分が違うんですか?

Sakiko 例えばテクノをとっても、日本とヨーロッパでは音数や旋律が違うんです。日本はメロディ重視のセンシティブな曲が多いけど、ヨーロッパはもっとパーカッシブで、音数が少ない。密度が薄い中でいかに重厚感をつくるか、いかに間を楽しむかを追求しているのに対して、日本は、密度を高めて音で埋め尽くしたり、フレーズの変化で感情移入させる傾向が強い。今までは意識していませんでしたが、そういった日本的な良さも取り入れて、自分の色を出していきたいと思うようになりました。
 
──ショウダさんの今後の目標はありますか?
 
ショウダ 目標……俺は、守屋くんと映画とかやってみたい。映画は時間がかかるから、今すぐじゃないし具体的には決めていないけど、その時のノリで。
 
全部遊びです、遊び。自分が楽しくなかったら意味ないから、面白くないことはやりたくない。真面目なことも楽しんで。目標は「エンジョイ!」って感じ(笑)。俺はとにかく心底楽しみたい。99%はしんどいんだけど、そもそもすぐにできたら面白くない。楽しくなるために99%頑張る。そこはこれからも変わんないですね。
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Sakiko Osawa //

テクノ系DJ&クリエイター

数多くのクラブやバー、映画館、シアターなどが集結する渋谷・道玄坂でカルチャーの交差点として機能し続けているウォームアップバー&レストラン「しぶや花魁」を根城に創作活動を展開。

 

2013年2月、音楽ブランド「OIRAN MUSIC」のプロデュースで、アムステルダム ” 7 Stars Music ” より「Tokyo Disco Beat EP」でデビュー。6月には「Gimme Action ft. Saga Bloom EP」を世界配信リリース、リードトラックには「衰退する渋谷カルチャー」に対するメッセージとアクションを込めたコンセプト映像作品を制作。

Sakiko Osawa

ショウダユキヒロ // SHODA YUKIHIRO

ディレクター、KEEP IT REAL代表

大阪市出身、東京在住。京都工芸繊維大学 造形工学科卒業後、某ポストプロダクションに入社、様々な技術職を経て、2009年よりディレクターに転向、独立。サカナクションやandropなどのアーティストのMVを中心に、ショートフィルム、ドキュメンタリー等ジャンルに縛られず活動中。

 

震災以降の日本社会を描いた「blind」の発表や、池上高志や猪子寿之、きゃりーぱみゅぱみゅといった日本のカルチャーを牽引するキーパーソンが集まった「Social 0.0 LAB」プロジェクトで映像作品の監督をつとめ、映像作家年鑑『映像作家100人』では2011年から4年連続で選出されている。

ショウダユキヒロ

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