無駄な街・渋谷で出会った音楽と映像──Sakiko Osawa×ショウダユキヒロ対談

ドブネズミにささやかれた「Gimme Action」

しぶや花魁

カワムラ 「Gimme Action」は、OIRAN MUSICを立ち上げた直接の原因のSakikoの2ndだから気合いも入るし、曲のコンセプトは私の中で固まっていたんです。
 
2014年は、色々な意味で行動の時だと思って、そんな話をアムステルダムで歌っているSaga Bloomにも話したら、地球の裏側にいる同世代の女性として彼女も共感してくれて。それで、一日で歌詞を仕上げてくれて、即日レコーディングをしてきました。
 
──2014年が行動の年というのはどういう意味なんですか?
 
カワムラ 2001年に911(アメリカ同時多発テロ)があって2011年に311(東日本大震災)があって、世界が引っくり返るようなことが起きる中、多くの要人も亡くなっていって、つまり世界の仕組みがどんどん変わっていっていますよね。それに、しぶや花魁で毎日人と会って肌で感じるところでも、音楽も映像も転換期だし、新しい時代のやり方にシフトしていかないと続かないなと感じています。

しぶや花魁

 
親友に七尾旅人というアーティストがいて、彼と青春時代を過ごしたんです。彼がやっているプロジェクトに、アーティストから豚まで、色々な生き物とセッションする百人組手というものがあるんですが、それと似ているかもしれません。
 
世界中のアーティストやメディアの人が花魁にきて、親友や仲間たちもきてくれる。そのどれもが私にとってはセッションで、組み手なんです。人だけじゃなくて、草木とか風とか、道のゴミから支持を得ていると感じれる瞬間があるっていうか…
 
──道のゴミ…ですか?
 
カワムラ いや、ごめんね(笑)。なんて言うんだろう、道玄坂のドブネズミが味方になってくれる時もあれば、道端の木とかコンビニの豆腐が行動を起こせってささやいてくれる時もあって。
 
ショウダ ドブネズミに「アクションを起こせ!」ってささやかれた(笑)。
 
カワムラ 渋谷だと特に感覚が鋭くなるんですよね。個人的にかわいいものは好きですけど、なんか原宿ではホッとしない。私は、ゴミの中で起こるいさかいや躍動感といった感情のふり幅がある渋谷が好きで、そこで生まれるストリートのカルチャーがあると思っていました。
 
でも、今の渋谷は、ファストファッションや、大手不動産会社の参入で、町の景色や色が変わって、個性がなくなって小ぎれいになっている。じゃあ「渋谷は変わったね」じゃなくてアクションを起こそうと。悪友じゃないけど、ショウダユキヒロやSakikoみたいなスリリングな音や映像を生み出すクリエイターが東京にいて、セッションしてくれる人間がアムステルダムにいて、世界中をつなげられるインターネットもあるから、「Gimme Action ft. Saga Bloom」ができたんです。
 
渋谷の色々な場所でカメラを回した映像で、ラストシーンは渋谷の有名な合法ハーブ屋のある路地だし。
 
ショウダ あの店ももう今話してる時点でなくなってるかもしれへんし。
 
カワムラ 10年後20年後に振り返った時に、全く変わっているかもしれない渋谷の、2014年の記録を残したかったんです。

衰退する渋谷?

ショウダ 最初、ヴィーナスのコンセプトだけを聞いて映像のイメージをふわっと考えて、後から音楽がきてそれと結びつけていった。
 
Sakiko 実は、Sagaさんの歌を録った時は、もうちょっと違う繊細なイメージの曲を考えていたんです。けれど、コンセプトや強くなりたい女性のイメージを出したいと思って、かなり悩みながら音を仕上げていったんですが、映像ともはまって良かったです。
 
ショウダ 映像としてはなるべくシンプルにしたくて、背中側に取り付けたカメラをずっと回して全部バックショットで構成して、どついてる最後のシーンでやっと顏が見えるようにしたいっていうのは最初に決めてた。
  Sakiko すごいゾクゾクしました。
 
ショウダ ちょっと映像っぽくしてるけど、そのへんにいる男とかそんな感じじゃない? 酔っぱらって女ナンパしたり、無理して飲んでゲロ吐いて。33歳くらいの女のヒモをやってる、渋谷にいそうな男。
 
──「Gimme Action」はモチーフが「衰退する渋谷カルチャー」ですが、Sakikoさんとショウダさんは、今の渋谷をどう捉えていますか?
 
Sakiko 私はショウダ監督やヴィーナスさんより下の世代だし、岩手から上京してきたから、最初は渋谷はあこがれの街でした。

ショウダ でも、今の渋谷は? 俺は、ヴィーナスの言ってることは何となくわかる。衰退っていうか、元気はない。昔を懐かしむつもりはないけど、単純にもっと人がいたし、もっとみんな遊んでたような気がする。クラブもパンパンやった。
 
Sakiko 確かにいきたいクラブのパーティーとかは減ったかも。自分たちが大人になってきたっていうのもあるかもしれないですけど、面白いパーティーをやってた人も、みんな大人になって幸せな家庭を築いてたりするのかもしれない。
 
ショウダ かと思えば、無許可で踊らせたってことで捕まったりな? 渋谷でもクラブの一斉検挙とかあったし、そんなことしてどうすんねやろ?

渋谷のカルチャーが衰退してるのと人が減ってるのは、同時進行な気がする。ギャルとかギャル男とかも見なくなった。別にそいつらがいないからってどうってこともないけど、意味わからんぶっ飛んだ人間を見かけにくくなった。
 
東京やのに人がおらんかったら意味ない。それならいっそ廃墟みたいになってくれれば撮影場所としていいロケーションなのに(笑)。
 
【次のページ】無駄な街・渋谷で無駄から生まれたもの
1
2
3

SHARE

この記事をシェアする

Post
Share
Bookmark
LINE

0件のコメント

※非ログインユーザーのコメントは編集部の承認を経て掲載されます。

※コメントの投稿前には利用規約の確認をお願いします。

コメントを削除します。
よろしいですか?

コメントを受け付けました

コメントは現在承認待ちです。

コメントは、編集部の承認を経て掲載されます。

※掲載可否の基準につきましては利用規約の確認をお願いします。

POP UP !

もっと見る

もっと見る

よく読まれている記事

KAI-YOU Premium

もっと見る

もっと見る

音楽・映像の週間ランキング

最新のPOPをお届け!

もっと見る

もっと見る

このページは、株式会社カイユウに所属するKAI-YOU編集部が、独自に定めたコンテンツポリシーに基づき制作・配信しています。 KAI-YOU.netでは、文芸、アニメや漫画、YouTuberやVTuber、音楽や映像、イラストやアート、ゲーム、ヒップホップ、テクノロジーなどに関する最新ニュースを毎日更新しています。様々なジャンルを横断するポップカルチャーに関するインタビューやコラム、レポートといったコンテンツをお届けします。

ページトップへ