史上初「エアコミケ」を準備会代表が振り返る 同人文化への決意と覚悟

コミケそのものと向き合う時間が増えた

Webカタログからサークルの同人誌の通販などを確認できる「エアコミケView」/画像はCircle.msより

──通販では今回、Webカタログから取り扱い書店を確認、販売ページにアクセスできる「エアコミケView」などの施策もありました。それらの効果や反響はいかがですか?

市川 おおむね好評です。現状、まだCircle.ms(サークルドットエムエス)さんとの振り返りができていないので、リアル書店や電子書籍販売サイトへの波及効果などは、これから検証していくところです。システム面の成果を確認しつつ、次につなげられるものは活かしていきたいです。

──「ニコニコネット超会議2020」での事前ニコ生番組「エアコミケ準備室 開幕式」では、「いつも通り4時に起きる」と発言されていましたが、市川さんは期間中どのように過ごされていたのでしょうか?

市川 4時に起きて、6時にエアコミケの中核スタッフに連絡したり、18時にはZoomを使って各セクションのスタッフと調整会議をしたりと、本当にいつも通りです。会議では1日ごとにどんなツイートがあったかなどを振り返っていました。

それ以外はTwitterを眺めたり、アニメを観たり、漫画を読んだりして、過去のコミケの映像を探したりしながら、気分を高めていました。

──リアルな慌ただしさがないからこそ、コミケそのものに向き合う時間も多そうですね?

市川 ツイートするために過去の歴史をさかのぼる過程で、たしかにコミケと向き合う場面は多かったですね。長い歴史の中で起きた出来事、出会った人たちをどうしても思い出してしまうので、ノスタルジーを感じる場面もありました。

手応えと反省を「次のリアルな即売会へ」

──先ほどおっしゃった通り、中止の発表からエアコミケの開催決定まで、さらに開催に至るまでの準備期間が少ない中で、大変な部分もあったのではないでしょうか?

市川 エアコミケの実施を決断したのは4月に入ってから。すでに緊急事態宣言を伴う外出自粛が求められていたタイミングでした。そういった背景もあり、本来であれば準備会スタッフ全員にコンタクトすべきところを、十分に連絡できなかった。これは今回の反省すべきポイントの1つです。

ネット中心ということもあり、今回は従来と比べて少ない人員で運営していました。でも、「自分もスタッフとして参加したかった」というメンバーもいたはずで、今後はそういったスタッフのモチベーションも気にかけて、何らかの声かけなども少しずつ増やしていきたいと思います。スタッフが欠けても即売会は開催できないので。

もちろんスタッフ間の連携だけでなく、エアコミケ自体の宣伝や告知の仕方など、反省点は今後に活かしていきます。

──最後に改めて、新型コロナウイルスが同人文化に与える影響と、その中でコミックマーケット準備会としての方針を教えてください。



市川 感染拡大が明らかになって以降、同人誌即売会だけでなく、さまざまなイベントが中止・延期の決断を余儀なくされています。コミックマーケットはサークル、印刷所、読者、スタッフがいてこそ成立するもので、どれか1つが欠けると開催できなくなってしまう。

それだけは避けたいという思いで、今回エアコミケを開催することができました。しかし、今の状況が今後も続くとなると、どうなるかわからない。冬の「コミックマーケット99」(C99)やその後の「コミックマーケット100」(C100)も、現状どうなるか、はっきりとしたことは明言できない状態です。 市川 いつコミケや他の同人誌即売会が復活できるのか? これはまだわかりません。そうした中で僕らとしては何ができるのか──サークルさんが新刊をつくってくれるような状況を、試行錯誤しながらつくっていかないといけない。

先が見えない状況で心苦しい部分はありますが、それでも「次のリアルな即売会に向けて備えてほしい」というのが正直な気持ちです。僕らは創作や表現が廃れていくことをもっとも危惧しています。

だからこそ、今回エアコミケに参加してくれた43万人のような方々がいる限り、常に何ができるかを考えながら、できることを歯を食いしばって続けていきたいと思います。

新型コロナ状況下のコミケを巡って

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