今作は第17回AAF戯曲賞大賞受賞のカゲヤマ気象台による戯曲を、グループ・野原/青年団演出部の蜂巣ももとの共同演出で発表する新作公演。
出演には円盤に乗る派プロジェクトメンバーの日和下駄、PEOPLE太の畠山峻、モメラスの上蓑佳代、オフィスマウンテンの横田僚平が名を連ねる。
上演中の本作を、円盤に乗る派プロジェクトメンバーの日和下駄が紹介する。
円盤に乗る派は"必ずしも合理的ではない"現実を映し出す
円盤に乗る派は『シティIII』のカゲヤマ気象台が主宰する「複数の作家・表現者が一緒にフラットにいられるための時間、あるべきところにいられるような場所を作る」ことを目的としたプロジェクト。カゲヤマ気象台作・演出の上演を中心としながら、さまざまなプログラムや冊子の発行、シンポジウムなども並行して行われる。 荒唐無稽な物語でありながら、本筋とは関係のないさまざまな話題やサブカルチャーから引用された固有名詞が散りばめられた、リアルとフィクションの狭間にあるかのような作風が特徴だ。
円盤に乗る派のこれまでの過去作品はYouTubeで全編無料公開されている。ぜひそちらもチェックしてみてほしい。
"消極的なユートピア"としての『おはようクラブ』
新作『おはようクラブ』は4人の登場人物の旅を通して、現代の私たちに最適な"コミニティの形"を問う作品。グループ・野原/青年団演出部の蜂巣ももを招き、日本の小劇場シーンでは珍しい共同演出という手法で「かっこいいバージョン」として発表される。
実際、稽古場ではそれぞれのやり方で作品を立ち上げてきた蜂巣、カゲヤマの衝突も目立つ。しかし、衝突の積み重ねは作品の厚みを増していき“奇跡”のような風景が描かれる。その衝突の手触りが感じられるのは本作の魅力の1つだろう。この公演は「かっこいいバージョン」です。演出家の蜂巣ももをゲストに招き、カゲヤマ気象台と共同で演出を行います。これは共作というより分業の作業です。通常多岐にわたる演出という分野を、領域を分けることによってそれぞれの担当する範囲を縮小し、両者の特徴をより濃密に反映させることによって、作品全体をかっこよくしようという試みです。今回はカゲヤマが「内面・内側」からのアプローチを、蜂巣が「表れ・外側」からのアプローチをとることによって、その衝突点においてひとつの演出を練り上げていきます。
今作に登場するA、B、C、Dの4人の人物はなぜだか集まり、どこへ行くでもなく旅をする。時にシリアスに、時にコミカルに、ともに時間を過ごす4人の姿は現実の私たちと何ら変わりないようにも思える。
しかし、物語の終盤でそんな世界の中に“大きなフィクション”が訪れる。そこから加速してゆく物語の果ての"意外な結末"をぜひ劇場で体感してほしい。 また、戯曲は円盤に乗る派のnoteで公開されている。全編の購入は500円から。冒頭部分は無料公開されているので、ネタバレが気にならない方は事前の予習におすすめだ。
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日和下駄
1995年鳥取県生まれ。俳優、ライター。
円盤に乗る派プロジェクトメンバー、メンヘラ批評編集。「設定」を考えることが好き。
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