11月末頃から、海面に現れる深海魚たちの目撃情報が後を絶たない。
フリソデウオ、ユキフリソデウオ、ユウレイイカ……各地のダイバーや漁師、採集家たちから貴重な深海生物の報告例があがり、実際、テレビなどでも度々報道されている。また海面に発生した深海魚たち。リュウグウノツカイ、テンガイハタ、キホウボウの仲間?
— こじゃらし (@kanetotommy) 2018年11月28日
海は真っ暗だし、何というか異常な海況です🐟💦
まぁ不安な反面何か面白い物が獲れそうで半分はワクワクしてますが(笑) pic.twitter.com/Xn7xnYWXZS
そして、ここにも1人、リュウグウノツカイの稚魚を生け捕りにした世にも珍しい人物が。 自然と冒険に関するデジタルメディア「Monsters Pro Shop」を設立し、現在では水生生物採集をするフリーの生物カメラマンとして活動する半澤聖也さん。
成魚になると3mを優に超えるリュウグウノツカイは、人魚伝説のモデルとされている。言うまでもなく、他の深海生物同様、生態が完全には解明されていない貴重な生物だ。
半澤聖也さんはリュウグウノツカイと出会った時の様子を克明に語ってくれた。
増える目撃情報、リュウグウノツカイとの奇跡の出会い
本来姿を見せないはずの深海魚の目撃情報や捕獲情報が増え始めたのは、11月末頃。特に多かったのは、アカマンボウ目のリュウグウノツカイといった深海魚の稚魚だった。リュウグウノツカイを生きたまま採集するということ自体、前例が少なく、採集家たちのコミュニティは騒然とした。
12月1日、半澤聖也さんは目撃情報をもとに、目をつけていた場所に足を運んだ。そこで、海を隔てる岸壁を中心にハコフグやメバルの観察・採集を行なっていた。
※人が殺到するとマナーやゴミ問題で近隣住民や漁師の方に迷惑をかけかねないため、場所は非公開
憧れだったリュウグウノツカイに出会ったのは、翌2日のこと。
「正直、驚きのあまり、前後の記憶が飛んでます」。半澤さんはこう振り返る。さきほどまで観察してた魚たちが突如姿を消して、海の雰囲気がガラッと変わったなと感じた瞬間、目の前にリュウグウノツカイが浮いてきました。半澤聖也さん
それが、テンガイハタも続けざまに現れて、にわかには信じられなかったという。
恒例の「地震の前触れ説」
半澤聖也さんがリュウグウノツカイを生け捕りにした同日、青森県で全長約4.7メートルのリュウグウノツカイの成魚が(外部リンク)、新潟県で同じく約2.5メートルの成魚が見つかり(外部リンク)、どちらも大きく報道された。全国各地で相次ぐ深海魚の目撃情報は、毎度のことのように「地震の前触れではないか?」という噂を生み、人々を不安にさせている。
特に、リュウグウノツカイは中国や台湾では「地震魚」と呼ばれ恐れられてきたのでなおさらだ。
リュウグウノツカイを生け捕りにした半澤さんの元にも、現在、「地震が来るんじゃないか?」という質問やコメントが多く寄せられている。
半澤さんは、自身がリュウグウノツカイを目撃した時のことを振り返る。
深海魚と地震との関係については、オカルトと切り捨てることもできず、長らく議論の対象となっているのは事実だ。海で湧昇流が発生し、深海生物ごと深海水が水面まで湧き上がってきたと感じました。
湧昇流が発生する原因は様々で、地震につながる断層の変位である可能性もないとも言い切れませんが、単に温度差によって起こる場合もあるため、どちらとも言えません。半澤聖也さん
しかし、2017年に東海大学などのチームが、深海魚の目撃と地震発生の関連性を調べて発表した「深海魚の捕獲や漂着は大地震の前兆ではない」という研究結果はじめ、専門家によって深海魚の出現と地震の関係性はたびたび否定されている。
リュウグウノツカイのその後
半澤聖也さんが生け捕りにしたリュウグウノツカイだが、他の多くの深海魚と同じく、海面に現れた時点で衰弱していたようで、長く生きることはできなかった。その後、生態研究のための重要な資料として、磯採集家として活動する中学3年生の饗場 空璃(あいば そらり)さんに寄贈した。
饗場さんは15歳にして、NHKの生き物系番組に出演したり専門家の前で講演をしたりと、将来を期待されている海業界のスーパー中学生。生態研究に活かしてほしい。学校終わりに家まで来てくれたので、無事に手渡し完了! pic.twitter.com/tzvOKrEVz6
— 半澤 聖也/seiya hanzawa (@SeiyaHanzawa) 2018年12月3日
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